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巫夏希

第三十一話 人類補完計画

「え…?」

 フル、メアリー、ルーシーの三人は、その、自らをアンドロイドと呼んだ、アリスの言うことが、全く理解できなかった。

「待てよ…さっきバルト・イルファが…」

 フルは先ほど、バルト・イルファが言った事を思い出す。

『ロボットの中にも人間に味方する物がいた。その名はアリス。アリスは死者の魂から無作為に五人選んだ。』
『五人の"勇者"は「反逆者」ロボットのルーニーを倒した。いや、勇者から聞いたアリスの記録では、「自ら機能停止を選択」したと聞いたが…』
『その後、人間は平穏に暮らしていったと聞く。そして、役目を終えたコンピュータ「アリス」は機能を停止した──。』
『しかし、15年前、リュージュ様が発見したのだよ!コンピュータ「アリス」を!!』
「一体、どういう事なんだ?」
「…つまり、ここは…」

 メアリーが驚いたかのように言った。

「フルが元いた世界の…未来?」
『…ここは、仮に西暦で呼べるとするならば、12062年。私が活動していた時期はおよそ10000年前。』
「…ちょっ、ちょっと待ってくれよ。今、頭が混乱して…『人類補完計画』とか『コールドスリーパー』とか…なんなんだ?」

 フルはアリスに突き詰めた。

『…私も全ては知りません。かなり長いブランクがあったものですから…、でも、私の知る限りの情報でしたら、お伝えしましょう。』
『…ちょうど、でもないですね。10000年程前はとても科学が発展した世界でした。魔術、錬金術…今やこの世界では普通に使えるものは使えませんでした。』
『その世界では人間に主従関係をおいて、ロボットが家事など、手伝っていました。』
『しかしあるロボットが人間に反旗を翻したのです。』
『名前はルーニー。世界最高峰の技術を持った会社「アシモフ・コーポレーション」で造られたロボットです。』
『そしてルーニーは仲間を集めて「発電所を潰す」と言ってきました。その当時、ロボットというのは核をも耐えきれるもので、人間にはどうすることもできなかったのです…』
「あ、あの、アリス…さん。話をぶったぎって悪いけど、『核』ってなに?」

 ルーシーが聞いた。

『…いうならば、巨大な爆弾です。しかし爆弾の範囲に居ずとも、爆弾から発せられる特殊な光を浴びると、死と同じような被害を受けるものです。』
『……何処まで話したでしょうか。………そうです。ロボットは核を使っても壊れない、という所まで言ったのですね。』
『そして、人類は、ある計画を発表します。』
『当時、人類は大小250の種族で構成されていました。そこから無作為に番をだし、冷凍保存にかける…これが、「人類補完計画」です。』
『まぁ、私が活動したのは更に後なのですが…それは、いいでしょう』
「…」

 三人は呆気にとられていた。
 まず、自分達の世界がそれほど昔から存在していたこと。
 次に、この世界はフルが元いた世界の未来、ということ。

「…え?ちょっと待って?」

 メアリーが言った。

「つまり…フルの世界にはフルが二人存在している、ということになるの?」

 流石はメアリー。頭がいいから大体は理解したようだ。そしてアリスに疑問を投げ掛けた。

『…冷凍保存が行われたのは2047年です。そこから、大分眠っていたのでしょうね…』
「いや、ちょっと待ってくれ。」

 フルが言った。

「アリスのいうとおり、僕がコールドスリーパーだったならば、ちょっと時間がおかしい、と思うんだけど」
「?」
「だってさぁ…大分前に僕は言ったよね?僕は『もうひとつの2015年』からやってきた、ってさ。」
『え?』

 アリスは目を丸く、いや正確には、目を丸くしたかのように、言った。

『それは…ありえない…あなたは…確かに2047年にコールドスリープを受けたはずです』
「だから、僕は2015年からいきなりこの世界に来たんだって!」
『…しかし…身体的特徴並びにDNAも一致しています。やはりあなたはコールドスリープを…』
「だから~受けてないってば」
『DNA情報が間違っている?いや、そんなことはありません。別の可能性があるのでしょう。』
「…別の、可能性?」
『ええ、例えば…』

 ブツン
 突然、大きな音が響き、アリスは活動を停止した。

「…危なかったわ。言って良いことと悪いことがあるというのに、それに気付かないのだから。」

 ドタァァァン
 アリスは正面に倒れた。
 そしてその後ろにいたのは、メタモルフォーズと巫女服を着た女…。
 リュージュだった。

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