ノアの弱小PMC—アナログ元少年兵がハイテク都市の最凶生体兵器少女と働いたら
第4節8部ー殺気ー
荒木一等はガーネットを連れて、火器管制室と思われる区画に向かっていた。時折、ガーネットがグレアノイド汚染の進んだ通りを感知し、回り道をしながらも的確に向かっている。
《祠堂君、祠堂君応答して!!》
「はろぉ、はづはづー」
《えっあれっ、祠堂君は!?》
「しどぉは違う女と生存者きゅーしゅつちゅーよぉ。こういうの、アル……私にもちょーだいよぉ」
こういうの、とは通信機のことだろう。雛樹がガーネットに渡したものだ。葉月というオペレーターをガーネットにつけることで、自分から離れてもしっかり動けるようにしたかったのだろう。
精神的な面でも、寄る辺にはなる。
《ん、今回の報奨金でなんとか……いえ、それどころじゃないのよ。ガーネット、その施設内からグレアノイド反応が多数感知されているの》
「そんなのとっくにわかってるわよぉ。だから急いでるのぉ」
《できる限りのサポートはするわ。システムダウン、お願いね》
「言われなくてもそのつもりぃ」
葉月のサポートを受け、ガーネットは荒木についていく。そしてもう一方、生存者救出組は……。
「本当に生存者などいるのだろうか……どう思う、祠堂君」
「さぁ? 箱の中身は開けてみるまでわからないな」
雛樹の片目に赤が増す。膨大なグレアノイド反応が、この施設の最深部で蠢いているのがわかる。ただ、蠢いているだけだ。特に何をするというわけでもない。
おそらく、侵食体がこの施設の最深部にいるのだろうが……。その正体もまだ不明だ。
「この先か……」
「……ひどい。これが全て元は人だったというのか? 信じられん……」
開けた通路。そこにひしめき合うように溜まっている、侵食体と思わしき者。人間だった頃の名残がそこかしこに見えている。
「よせ、近寄らないほうがいい、祠堂君!!」
その中の一体の腕、そこになにかを見つけた雛樹はすぐさま近寄ってそのなにかを確認した。
「これは……なにかのシリアルナンバーか?」
ほとんど人外のモノと化している腕にはめられた、10桁の数字が刻印されたタグ。
それを取ろうとしても外れなかったため、ナイフを取り出し……。
「祠堂君! なにをっ」
腕を切り落とし、そのバングルを無理やり外した。そして来栖川に見せた。これがなにかわかるかと。
「これはなんだ? 私にはわからないな……なにかの通し番号みたいだが」
「そうか……クソ、インカムがあれば夜刀神に直接調べてもらえたんだけどな」
このバングルを見たということは忘れないでくれと雛樹は言い、さらに先へ進む。
雛樹はこのバングルについて、様々な憶測を巡らせていた。
そもそも、これだけの数の侵食体が現れることが不自然だということ。そして、今回のこの任務に対する不信感……。
「……!!」
「どうした、祠堂君!」
雛樹は走っていた足を急に止め、あたりを見回した。それに驚いた来栖川も足を止めたが。
「誰かいるな……」
「誰か? 我々以外には荒木と君の相方しかいないはずだ。連絡も入っていないぞ」
「……いや、いる。来栖川准尉。生存反応があった場所はこの先、すぐだ。強いグレアノイド反応もない。行って確かめてきてくれ」
「君はどうするんだ」
「今の殺気を追う」
「殺気だと? こんな状況で誰が……いや、君の言うことだ。まちがいないのだろう。私は先に行き、生存者を確かめ、発見し次第連れて脱出する。いいな?」
「頼みます」
そうして来栖川は、一抹の不安を覚えながらも先に進んでいった。
一方の雛樹は背中に感じた鋭い殺気を追い、別ルートに入り込んでいった。
《祠堂君、祠堂君応答して!!》
「はろぉ、はづはづー」
《えっあれっ、祠堂君は!?》
「しどぉは違う女と生存者きゅーしゅつちゅーよぉ。こういうの、アル……私にもちょーだいよぉ」
こういうの、とは通信機のことだろう。雛樹がガーネットに渡したものだ。葉月というオペレーターをガーネットにつけることで、自分から離れてもしっかり動けるようにしたかったのだろう。
精神的な面でも、寄る辺にはなる。
《ん、今回の報奨金でなんとか……いえ、それどころじゃないのよ。ガーネット、その施設内からグレアノイド反応が多数感知されているの》
「そんなのとっくにわかってるわよぉ。だから急いでるのぉ」
《できる限りのサポートはするわ。システムダウン、お願いね》
「言われなくてもそのつもりぃ」
葉月のサポートを受け、ガーネットは荒木についていく。そしてもう一方、生存者救出組は……。
「本当に生存者などいるのだろうか……どう思う、祠堂君」
「さぁ? 箱の中身は開けてみるまでわからないな」
雛樹の片目に赤が増す。膨大なグレアノイド反応が、この施設の最深部で蠢いているのがわかる。ただ、蠢いているだけだ。特に何をするというわけでもない。
おそらく、侵食体がこの施設の最深部にいるのだろうが……。その正体もまだ不明だ。
「この先か……」
「……ひどい。これが全て元は人だったというのか? 信じられん……」
開けた通路。そこにひしめき合うように溜まっている、侵食体と思わしき者。人間だった頃の名残がそこかしこに見えている。
「よせ、近寄らないほうがいい、祠堂君!!」
その中の一体の腕、そこになにかを見つけた雛樹はすぐさま近寄ってそのなにかを確認した。
「これは……なにかのシリアルナンバーか?」
ほとんど人外のモノと化している腕にはめられた、10桁の数字が刻印されたタグ。
それを取ろうとしても外れなかったため、ナイフを取り出し……。
「祠堂君! なにをっ」
腕を切り落とし、そのバングルを無理やり外した。そして来栖川に見せた。これがなにかわかるかと。
「これはなんだ? 私にはわからないな……なにかの通し番号みたいだが」
「そうか……クソ、インカムがあれば夜刀神に直接調べてもらえたんだけどな」
このバングルを見たということは忘れないでくれと雛樹は言い、さらに先へ進む。
雛樹はこのバングルについて、様々な憶測を巡らせていた。
そもそも、これだけの数の侵食体が現れることが不自然だということ。そして、今回のこの任務に対する不信感……。
「……!!」
「どうした、祠堂君!」
雛樹は走っていた足を急に止め、あたりを見回した。それに驚いた来栖川も足を止めたが。
「誰かいるな……」
「誰か? 我々以外には荒木と君の相方しかいないはずだ。連絡も入っていないぞ」
「……いや、いる。来栖川准尉。生存反応があった場所はこの先、すぐだ。強いグレアノイド反応もない。行って確かめてきてくれ」
「君はどうするんだ」
「今の殺気を追う」
「殺気だと? こんな状況で誰が……いや、君の言うことだ。まちがいないのだろう。私は先に行き、生存者を確かめ、発見し次第連れて脱出する。いいな?」
「頼みます」
そうして来栖川は、一抹の不安を覚えながらも先に進んでいった。
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