ノアの弱小PMC—アナログ元少年兵がハイテク都市の最凶生体兵器少女と働いたら
29話ー責任追及ー
「こんな生活、すぐに終わっちゃうんだろうけどぉ……」
「……?」
ガーネットが最後につぶやいたその言葉に、静流は我に帰らされた。
もうすでに決まっていることを話すかのようなガーネットの口調と悲しげな表情に呆気にとられたのだ。
しかし、ガーネットにしてみれば当たり前のことであった。
6年後の雛樹があのような怪物になってしまっていることから、ろくな未来が待っていないことは明白なのだから。
「もぉ、しどぉまだぁ? 暇なんだけどぉ」
「まだも何も、先ほど来たばかりでしょう。話し相手ぐらいにはなりますよ」
「あんたはいらなぁい」
「……ぐっ。そ、そう言わずに」
なにも世間話がしたいわけではない。静流は静流で確認したかったのだ。ただただ厄介だったはずのステイシスがなぜこのように変わりつつあるのかを。
……——。
「薬だぁ?」
「昨夜22時頃、GNCと我々の部隊が例のネズミと交戦したことは知っているな?」
「報告にあがっとった件やねぇ。それと薬がどないしはったん?」
昨夜、GNCとセンチュリオンテクノロジーの部隊が都市内に侵入し潜伏していた本土軍の兵士の居場所を特定、制圧に向かった。
しかし……。
「両部隊合わせて9名の死傷者。敵部隊3名の死傷者……しかもその3名はグレアノイド感染による死亡だったと聞いておりますな。なんでも凄まじい力で抵抗してきたとか」
「聞いとるんか? RBはん」
「興味ねェな」
「さよか」
本当に興味なさげな態度をとっているRBは放っておくことにし、蘇芳は自分の中で立てていた仮説を述べた。
「特殊な兵器つこた訳でもないのにその凄まじい力とやらで反撃されたわけやろ? かつ、その力つこた本土はんはグレアノイド感染による死亡、ほんで薬とくればや……」
そこで蘇芳は雛樹の方に視線を移した。
その仮説の答えを求めているわけではなさそうだ。むしろ自分の中で答えは用意しているが、その答えの責任はお前にあるのではないかといった風な視線。
雛樹はその視線に少しばかり気圧され、眉をひそめた。
「例のステイシスの血液、研究されとるんとちゃうの?」
「察しがいいな。その通りだ、蘇芳。ここに本土軍からダッシュした薬のアンプルがあるのだが——……」
アルビナがジュラルミンケースから取り出したそれは、血液のように赤い液体で満たされたアンプルだった。
人差し指と親指で摘み吊るすようにしてそのアンプルを小さく振った。
「こいつの主成分には、ステイシスの培養血液が使われているそうだ」
「ほぉら思った通りや。さあどないしはるつもりなんやろ、夜刀神PMCのルーキーはんは」
「……」
ステイシスの血液。
それについては雛樹に思い当たる節があった。と、言うよりそれ以外になく、蘇芳が入っていることにも頷けた。
セントラルストリートパレード襲撃事件の際、ステイシスを救助できたところまでは良かったものの、ステイシスの血液は奪われてしまっていた。
それを本土に持ち帰られ、研究されたのだろう。
そして出来上がったのがその薬。
一時的に兵士の能力を向上させるものと言えば単純なのだが、その向上のさせ方が問題であった。
ステイシスの中で適合するため変異させたドミネーター因子。それを取り込み力として使用できるように調整されたものだという。
「……?」
ガーネットが最後につぶやいたその言葉に、静流は我に帰らされた。
もうすでに決まっていることを話すかのようなガーネットの口調と悲しげな表情に呆気にとられたのだ。
しかし、ガーネットにしてみれば当たり前のことであった。
6年後の雛樹があのような怪物になってしまっていることから、ろくな未来が待っていないことは明白なのだから。
「もぉ、しどぉまだぁ? 暇なんだけどぉ」
「まだも何も、先ほど来たばかりでしょう。話し相手ぐらいにはなりますよ」
「あんたはいらなぁい」
「……ぐっ。そ、そう言わずに」
なにも世間話がしたいわけではない。静流は静流で確認したかったのだ。ただただ厄介だったはずのステイシスがなぜこのように変わりつつあるのかを。
……——。
「薬だぁ?」
「昨夜22時頃、GNCと我々の部隊が例のネズミと交戦したことは知っているな?」
「報告にあがっとった件やねぇ。それと薬がどないしはったん?」
昨夜、GNCとセンチュリオンテクノロジーの部隊が都市内に侵入し潜伏していた本土軍の兵士の居場所を特定、制圧に向かった。
しかし……。
「両部隊合わせて9名の死傷者。敵部隊3名の死傷者……しかもその3名はグレアノイド感染による死亡だったと聞いておりますな。なんでも凄まじい力で抵抗してきたとか」
「聞いとるんか? RBはん」
「興味ねェな」
「さよか」
本当に興味なさげな態度をとっているRBは放っておくことにし、蘇芳は自分の中で立てていた仮説を述べた。
「特殊な兵器つこた訳でもないのにその凄まじい力とやらで反撃されたわけやろ? かつ、その力つこた本土はんはグレアノイド感染による死亡、ほんで薬とくればや……」
そこで蘇芳は雛樹の方に視線を移した。
その仮説の答えを求めているわけではなさそうだ。むしろ自分の中で答えは用意しているが、その答えの責任はお前にあるのではないかといった風な視線。
雛樹はその視線に少しばかり気圧され、眉をひそめた。
「例のステイシスの血液、研究されとるんとちゃうの?」
「察しがいいな。その通りだ、蘇芳。ここに本土軍からダッシュした薬のアンプルがあるのだが——……」
アルビナがジュラルミンケースから取り出したそれは、血液のように赤い液体で満たされたアンプルだった。
人差し指と親指で摘み吊るすようにしてそのアンプルを小さく振った。
「こいつの主成分には、ステイシスの培養血液が使われているそうだ」
「ほぉら思った通りや。さあどないしはるつもりなんやろ、夜刀神PMCのルーキーはんは」
「……」
ステイシスの血液。
それについては雛樹に思い当たる節があった。と、言うよりそれ以外になく、蘇芳が入っていることにも頷けた。
セントラルストリートパレード襲撃事件の際、ステイシスを救助できたところまでは良かったものの、ステイシスの血液は奪われてしまっていた。
それを本土に持ち帰られ、研究されたのだろう。
そして出来上がったのがその薬。
一時的に兵士の能力を向上させるものと言えば単純なのだが、その向上のさせ方が問題であった。
ステイシスの中で適合するため変異させたドミネーター因子。それを取り込み力として使用できるように調整されたものだという。
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