ノアの弱小PMC—アナログ元少年兵がハイテク都市の最凶生体兵器少女と働いたら
第3話ー莫大な費用ー
「あ」
方舟の最高戦力と呼ばれる所以を見せつけ、すべてのドミネーターを駆逐したガーネットは、機体を静止させ薬莢を排出させながら間抜けな声を出す。
見ているのは機体各部の状態を示すモニターだ。
《付近にドミネーター反応は無し。輸送車列も無事船に乗り込んだわ。あとは帰るだけ……概ね任務も完了ね。うちの社員は優秀だわ》
夜刀神葉月の労いの言葉を聞きながら、雛樹の顔は青ざめていく。
「えっと……夜刀神?」
《どうしたの?》
「怒らないで聞いて欲しいんだけども」
《……なに?》
「スラスターがイカれた」
夜刀神PMCがいつまでも儲からない理由の一つ。
というよりも、これが一番大きなところなのだがこの雛樹の機体、ベリオノイズの修理費用と改修費用があまりに膨大であるのだ。
そこら中が非正規部品などで切って貼ってしたような機体構成のため、少しでも無理すれば調子が悪くなったり壊れたりする。
だが今回は……。
《大赤字だわ……。わかる? ガーネットさん……》
「ちょっと張り切っちゃったからぁ」
ガーネットによる、機体スペックをフルに使ったスラスターワークが原因であることは間違いない。
そもそも、方舟でも有名な特殊二脚機甲、ブルーグラディウスの機体出力をはるかに超える出力を出すことができるグレアノイドエンジン。
それを使いこなせる機体構成でもないのに出せるだけ出せばそこかが壊れるのは目に見えていた。
血液を、凄まじい勢いでかつ大量に供給できる心臓に、体がついていかないのだ。
《ブリーフィングでもあれだけ無茶はしないでって言ってたのに……それも毎回毎回……》
「あ、しどぉ、あたしお耳塞ぐからあとよろしくぅ」
「……」
そこからグダグダと説教をされながら、雛樹は機体を操って護衛艦に乗り込んだ。
兎にも角にも、今回の任務も赤字に終わりそうだ。
……——。
スラスターをオシャカにした上、雇い主からのありがたいお説教を無視したガーネットは、ご褒美であるところの頭撫でが雛樹からもらえず随分とぶすくれていた。
事務所に戻った頃にはもう日は沈んでいて、近場に借りた二脚機甲格納倉庫から雛樹が帰った時にはソファーで寝っ転がったガーネットと、書斎机につっ伏せる雇い主がお出迎え。
雛樹はその惨状に頭を抱えそうになりながらも、夜刀神葉月の前に立つ。
「おかえりなさい……」
「き……金銭面では赤字でも、そこそこ名は売れたんじゃないか? 一応手際よく片付けてやったわけだし」
「そうね、評価は良かったわ。もらえた企業点も悪くなかったし……」
企業点。その依頼の難度や評価によって割り振られるポイントであり、金銭とはまた別の報酬である。
そのポイントは企業の格を決めたり、ある程度大きな企業となってくると、個人にポイントが与えられ、昇進に関わってくるものだ。
「でもね……企業点で飯は食えないのよ」
「……ごめんなさい」
「ねえ、祠堂君。パンの耳で食いつなぐ人の気持ちって……考えたことある?」
「もうしわけな」「パンの耳ってぇ揚げて砂糖かけるとおいしいわよねぇ」
「こら」
「いたぁい! しどぉがぶったぁ!!」
二脚機甲を運用するようになって、規模の大きな依頼を受け、名を売りやすくなったはいいものの、その運用費用には毎度頭を悩ませることに。
質のいい大きな仕事でも持って来られればいいのだが……。
方舟の最高戦力と呼ばれる所以を見せつけ、すべてのドミネーターを駆逐したガーネットは、機体を静止させ薬莢を排出させながら間抜けな声を出す。
見ているのは機体各部の状態を示すモニターだ。
《付近にドミネーター反応は無し。輸送車列も無事船に乗り込んだわ。あとは帰るだけ……概ね任務も完了ね。うちの社員は優秀だわ》
夜刀神葉月の労いの言葉を聞きながら、雛樹の顔は青ざめていく。
「えっと……夜刀神?」
《どうしたの?》
「怒らないで聞いて欲しいんだけども」
《……なに?》
「スラスターがイカれた」
夜刀神PMCがいつまでも儲からない理由の一つ。
というよりも、これが一番大きなところなのだがこの雛樹の機体、ベリオノイズの修理費用と改修費用があまりに膨大であるのだ。
そこら中が非正規部品などで切って貼ってしたような機体構成のため、少しでも無理すれば調子が悪くなったり壊れたりする。
だが今回は……。
《大赤字だわ……。わかる? ガーネットさん……》
「ちょっと張り切っちゃったからぁ」
ガーネットによる、機体スペックをフルに使ったスラスターワークが原因であることは間違いない。
そもそも、方舟でも有名な特殊二脚機甲、ブルーグラディウスの機体出力をはるかに超える出力を出すことができるグレアノイドエンジン。
それを使いこなせる機体構成でもないのに出せるだけ出せばそこかが壊れるのは目に見えていた。
血液を、凄まじい勢いでかつ大量に供給できる心臓に、体がついていかないのだ。
《ブリーフィングでもあれだけ無茶はしないでって言ってたのに……それも毎回毎回……》
「あ、しどぉ、あたしお耳塞ぐからあとよろしくぅ」
「……」
そこからグダグダと説教をされながら、雛樹は機体を操って護衛艦に乗り込んだ。
兎にも角にも、今回の任務も赤字に終わりそうだ。
……——。
スラスターをオシャカにした上、雇い主からのありがたいお説教を無視したガーネットは、ご褒美であるところの頭撫でが雛樹からもらえず随分とぶすくれていた。
事務所に戻った頃にはもう日は沈んでいて、近場に借りた二脚機甲格納倉庫から雛樹が帰った時にはソファーで寝っ転がったガーネットと、書斎机につっ伏せる雇い主がお出迎え。
雛樹はその惨状に頭を抱えそうになりながらも、夜刀神葉月の前に立つ。
「おかえりなさい……」
「き……金銭面では赤字でも、そこそこ名は売れたんじゃないか? 一応手際よく片付けてやったわけだし」
「そうね、評価は良かったわ。もらえた企業点も悪くなかったし……」
企業点。その依頼の難度や評価によって割り振られるポイントであり、金銭とはまた別の報酬である。
そのポイントは企業の格を決めたり、ある程度大きな企業となってくると、個人にポイントが与えられ、昇進に関わってくるものだ。
「でもね……企業点で飯は食えないのよ」
「……ごめんなさい」
「ねえ、祠堂君。パンの耳で食いつなぐ人の気持ちって……考えたことある?」
「もうしわけな」「パンの耳ってぇ揚げて砂糖かけるとおいしいわよねぇ」
「こら」
「いたぁい! しどぉがぶったぁ!!」
二脚機甲を運用するようになって、規模の大きな依頼を受け、名を売りやすくなったはいいものの、その運用費用には毎度頭を悩ませることに。
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