ノアの弱小PMC—アナログ元少年兵がハイテク都市の最凶生体兵器少女と働いたら
第3節7部ー萎縮ー
 二脚機甲部隊による偵察が終わり、問題なければ物資輸送部隊上陸。救援物資を三つの部隊に分けて一つの集落に向かって運搬する。
上陸後からは、各陸上輸送部隊に設定された部隊長、部隊副長が判断し指示を出すようになるようだ。
第一陸上輸送部隊長はGNC所属、伊庭少尉。副長、RB軍曹。
雛樹が所属する第二陸上輸送部隊隊長はヤマト民間軍事会社所属、来栖川准尉、副隊長は所属同じく、荒木一等兵。
隊長の来栖川は30代後半の女性兵士で、荒木一等は20代後半の男性兵士である。どちらもPMCという海上都市の中では立場の弱い所属の割にはしっかりとした階級を持っていた。
雛樹の目から見ても、二人とも随分とどっしり腰を据えた佇まいであり、まだまだ若いながら今までの任務経験の長さを物語っていた。これは頼りがいありそうで、楽が出来るぞと今回の任務を楽観視していたところを……。
「上陸に備え、一つみんなにアドバイスをもらえない? この場にいるほとんどの者たちは都市外での任務に就いたことのなかった新米なんだよ。元本土部隊に所属していたという君なら海上都市外の事情に詳しいだろ?」
「……!」
一転、冷水をぶっかけられた気分になった。
流石は、いい意味でも悪い意味でも海上都市内で噂になってしまっているだけはある。
本土事情に詳しい雛樹ならば有用な情報を得られるだろうと、所属部隊の隊長である来栖川准尉にそう問われ、雛樹は一瞬萎縮してしまった。
なにせ、まだ厳粛な全体ブリーフィングの真っ最中である。自分の言葉はこの輸送艦隊全体に伝わってしまうのだから下手なことは言えない。
それに、少なからず感じる疑念や嘲笑の視線や言葉。真剣にブリーフィングに望んでいるものが大半なのだが、それでもそういった負の感情をはらんだ感触は過剰に感じてしまうものだ。
“なんであんな本土人に”“スパイだっていう話もあるそうじゃないか”。そんな言葉を筆頭に、雛樹の萎縮した心を打ち付けてくる。
だが……すぐ隣から感じるじっとりとした視線の方が厄介そうだ。
ステイシスが今まさに自分を試していた。
ステイシスの怒りは、雛樹を嘲笑する者達に向けられたものではなかった。そんな目を向けられているのにただ黙っていることしかできない雛樹に向けられていたのだ。
「一応、言っておきますが……ワタシはあくまで本土での経験からでしか話せません」
「かまわないよ」
「わかりました……。詳細情報にすら載っていませんが、はっきり言って地質によって危険度が上下します。先に上陸している二脚機甲部隊なら調査しているはずです。連絡をして、地質の状態は報告してもらってください」
「なぜ地質なんだ?」
「グレアノイド侵食の度合いを測るためです。土地が大きくグレアノイドに侵食されていれば、ドミネーターの発生源は海溝ではなく、直接陸地に発生することになる。本土……特に海溝に面した海岸は3メートルも掘ればグレアノイド侵食地層が顔を出すのでもっとも危険な地帯と言われてます」
「ドミネーターが突然発生する危険性があると?」
「その島が侵食を受けていればですが」
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