ノアの弱小PMC—アナログ元少年兵がハイテク都市の最凶生体兵器少女と働いたら
ー私が形成された日ー
ぐずぐずと泣きすぎて顔が気持ち悪い。
いくら走っても、背後には異様な気配が付いて回っている。
パパ、ママ、お兄ちゃん……早く、早く助けに来て。怖い、怖いよ。一人にしないで。
何度も転けながらただがむしゃらに逃げ続けた。ベースキャンプからどんどん離れていくうちに、凄まじい孤独感が迫ってきて嗚咽が漏れた。
この頃の私は、ただひたすらに弱く泣き虫で、自分ではただただ逃げる事しか出来なかった。
泣いて走って、いつしかドミネーターの破壊行動が始まって……赤い矢が降り注ぐようになった頃。
満身創痍の中、幼いながらにここで死ぬんだと諦めたその時だった。
怖くて振り返れもしなかった背後から、赤光の矢が飛んできてへたり込む自分の十数センチ近くに着弾した。
その時ぱりんと、私の中で大事な何かが壊れたような気がした。
恐ろしいことにほおが引きつり、何故か不器用な笑みを浮かべていた……ような気がする。
「————」自分でも何を言っていたのか思い出せない。
流暢な母国語でそうなにかを言いながら、振り返った。振り返ってしまった。
そこには恐ろしい姿をした、怪物がいるというのに。
いくつもの赤い目がごろごろと動いていろんなところを見ている。その中の幾つかが私をじっと見つめてる。
「————」何を言っていたのか、全く思い出せない。
私に向いた赤光の矢に視線を奪われながら、私は……。
ガオン。矢に負けず劣らずの赤い爆煙が上がって、宙に浮いた人の形をしているおぞましい怪物が大きく飛ばされた。
そう、そこからだ。
私の何かが、ぐちゃぐちゃに、でも硬く丈夫に荒々しく直されていったのは。
「ターシャ!! そこでじっとしてろ!!」
まだまだ少年の域を出ない、彼の大声を聞いて大粒の涙を流した。
「————」(お兄ちゃん!!)
おおよそその頃の雛樹の年齢の男子が携行できる武器兵器じゃなかったし、かなり不格好だったのも覚えてる。
ありったけの対ドミネーター用兵装を担いで助けに来てくれた。
雛樹に敵性を認めた怪物が、一点集中で攻撃し始めていた。
だけど雛樹は一切目を閉じることなく、回避を重ねて即席の罠を張っていく。
ワイヤーセンサー式の爆弾だとか、大型戦車用の地雷だったりとか。
普通ならこんなものひっかかるのかという位置、やり方で敷設するのは歩兵があの怪物に対抗するための経験技術。
小銃でけん制しながら、泥臭く素早く立ち回って怪物退治のプロセスを組み立てていく。
「……」
私はその時戦場で、英雄の姿を見ていた。
「こっちだこっち、こっち向け!! そーだそういい子!」
部隊の人の受け売りだという煽りを叫びながら、最後の詰めに入った私の英雄。
両手につけたワイヤーガンで怪物を捉えて、ワイヤーを高速で巻き取り、恐ろしいことに自分から怪物の懐に飛び込んでいく。
怪物の垂直な体に両足の裏をつけて、担いでいたライフルを構えて赤い目に銃口を向けて全弾撃ち込んだ。
宙に浮いていた怪物が大きく沈んで……トドメとばかりに雛樹は怪物の頭に爆弾を設置し、ワイヤーガンをトーチカに向けて撃って、巻き取り私の方に向かってきた。
「怖かったろ! ごめん!!」
日本語はよくわからないけど、だいたい言っていることはわかってた。
英雄の腕に抱かれて、何かの建物の瓦礫の裏に隠れた時に、仕掛けた罠が連鎖的に作動し、その爆発の衝撃でお腹の底が激しく揺れた。
「ちょっと大げさに仕掛けすぎたかな……。大丈夫か、ターシャ、ターシャ!?」
私は彼の腕に抱かれて安心してしまい、意識をそこで手放してしまった。
雛樹の声を何度も何度も……遠くで聞いていたような。
いくら走っても、背後には異様な気配が付いて回っている。
パパ、ママ、お兄ちゃん……早く、早く助けに来て。怖い、怖いよ。一人にしないで。
何度も転けながらただがむしゃらに逃げ続けた。ベースキャンプからどんどん離れていくうちに、凄まじい孤独感が迫ってきて嗚咽が漏れた。
この頃の私は、ただひたすらに弱く泣き虫で、自分ではただただ逃げる事しか出来なかった。
泣いて走って、いつしかドミネーターの破壊行動が始まって……赤い矢が降り注ぐようになった頃。
満身創痍の中、幼いながらにここで死ぬんだと諦めたその時だった。
怖くて振り返れもしなかった背後から、赤光の矢が飛んできてへたり込む自分の十数センチ近くに着弾した。
その時ぱりんと、私の中で大事な何かが壊れたような気がした。
恐ろしいことにほおが引きつり、何故か不器用な笑みを浮かべていた……ような気がする。
「————」自分でも何を言っていたのか思い出せない。
流暢な母国語でそうなにかを言いながら、振り返った。振り返ってしまった。
そこには恐ろしい姿をした、怪物がいるというのに。
いくつもの赤い目がごろごろと動いていろんなところを見ている。その中の幾つかが私をじっと見つめてる。
「————」何を言っていたのか、全く思い出せない。
私に向いた赤光の矢に視線を奪われながら、私は……。
ガオン。矢に負けず劣らずの赤い爆煙が上がって、宙に浮いた人の形をしているおぞましい怪物が大きく飛ばされた。
そう、そこからだ。
私の何かが、ぐちゃぐちゃに、でも硬く丈夫に荒々しく直されていったのは。
「ターシャ!! そこでじっとしてろ!!」
まだまだ少年の域を出ない、彼の大声を聞いて大粒の涙を流した。
「————」(お兄ちゃん!!)
おおよそその頃の雛樹の年齢の男子が携行できる武器兵器じゃなかったし、かなり不格好だったのも覚えてる。
ありったけの対ドミネーター用兵装を担いで助けに来てくれた。
雛樹に敵性を認めた怪物が、一点集中で攻撃し始めていた。
だけど雛樹は一切目を閉じることなく、回避を重ねて即席の罠を張っていく。
ワイヤーセンサー式の爆弾だとか、大型戦車用の地雷だったりとか。
普通ならこんなものひっかかるのかという位置、やり方で敷設するのは歩兵があの怪物に対抗するための経験技術。
小銃でけん制しながら、泥臭く素早く立ち回って怪物退治のプロセスを組み立てていく。
「……」
私はその時戦場で、英雄の姿を見ていた。
「こっちだこっち、こっち向け!! そーだそういい子!」
部隊の人の受け売りだという煽りを叫びながら、最後の詰めに入った私の英雄。
両手につけたワイヤーガンで怪物を捉えて、ワイヤーを高速で巻き取り、恐ろしいことに自分から怪物の懐に飛び込んでいく。
怪物の垂直な体に両足の裏をつけて、担いでいたライフルを構えて赤い目に銃口を向けて全弾撃ち込んだ。
宙に浮いていた怪物が大きく沈んで……トドメとばかりに雛樹は怪物の頭に爆弾を設置し、ワイヤーガンをトーチカに向けて撃って、巻き取り私の方に向かってきた。
「怖かったろ! ごめん!!」
日本語はよくわからないけど、だいたい言っていることはわかってた。
英雄の腕に抱かれて、何かの建物の瓦礫の裏に隠れた時に、仕掛けた罠が連鎖的に作動し、その爆発の衝撃でお腹の底が激しく揺れた。
「ちょっと大げさに仕掛けすぎたかな……。大丈夫か、ターシャ、ターシャ!?」
私は彼の腕に抱かれて安心してしまい、意識をそこで手放してしまった。
雛樹の声を何度も何度も……遠くで聞いていたような。
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