ノアの弱小PMC—アナログ元少年兵がハイテク都市の最凶生体兵器少女と働いたら
ー謎の褒美ー
しかし、今やその憧れの兵士はスパイ容疑すらかけられてしまっている始末。
センチュリオンテクノロジーにさえ属していれば、いくらでも擁護できたものを……とは考えてしまうが今更どうしようもない。
しばらくゆっくり体を休め、冷静に思い返してみると……最近の自分はおかしいと思わざるを得ない。
少しばかり思考の余裕ができてしまうと、雛樹の身を案じたり彼に対する世間の評価に腹を立てたり後悔したりと彼のことばかり考えてしまっていた。
以前ならば、ひたすら任務のことや己の鍛錬プログラムのことなどを考えていた筈だ。
しかし、以前より今の方がより任務に身が入り、成果も上げることができている。
憧れの兵士を近くに感じているためか、下手なところは見せられない、またはより良い自分をアピールしたいとでも思っているのか。
そんなヒーローに憧れる子供のようなことを考えてしまっている自分が恥ずかしくなり、赤面してしまった。
早めに出撃の準備をしよう。たるみかけた頭を振って気を入れ直し、ブリーフィングルームに向かった。
……——。
「今回は我が社のエースパイロットを総動員した任務となる」
「つまりわいと結月ちゃんだけやっちゅうわけですな」
「ノックノック。ちゃん付けはやめてください。捥ぎますよ」
「すまんて……。で、アルビナさん、うちのウィンバック2機も入り用っちゅうことやが、相当込み入っとるんか?」
「ああ。面倒なことだが、方舟前方200キロ圏内に12のグレアノイド隆起が確認された。迅速な破壊が必要となる」
グレアノイド隆起。海上都市が進む大海溝に現れる、グレアノイド鉱の山である。
そのグレアノイド隆起の周辺にはほぼ例外なくドミネーターが大量に発生し、空間歪曲が起こる。
このまま放置して海上都市が付近を通ることになれば、ドミネーターの襲撃はもちろんの事ながら、空間歪曲に巻き込まれて都市の一部がねじ切れる可能性だって出てくるのだ。
その隆起の大きなもの全てを破壊するのが今回の任務となっていた。
その規模の大きさから、企業連傘下の企業との合同任務となるが……。
「リストにGNCがいませんね」
「っは。企業連傘下の中でも一等でかいとこは温存するのが常や。ある程度、捨て石となっても構わんどこから出してきよる」
「我々が傘下に加わらずやっていく以上、捨て石扱いされることもある程度受け入れねばならん。必ず成果を上げてこい、捨て石ども」
「了解です、アルビナ大佐」
「ほな、行ってきますわ」
そういった扱いには慣れている。むしろ、過酷な任務を背負うのがウィンバックアブソリューターパイロットとしての誇りとも言える。
二人は何の疑問も抱かずブリーフィングルームを出て行こうとした。
しかし、アルビナ大佐は静流だけを呼び止め……。
「無事帰ったら褒美を与えてやる。励めよ」
「……? はい、わかりました」
新しい鍛錬具だろうかと思いつつ、特に大きな期待をせずに格納庫へ向かった。
静流が出て行ったのを確認したアルビナ大佐は、携帯端末を使ってとある場所に電話をかけた。
「ああ、夜刀神嬢、私だ。三日後、祠堂雛樹を借りることができるか? できるだろう? 依頼? ああ、内容を言ってみろ。……ひどい依頼だな。いや、うちで買い取ろう。祠堂雛樹の予定を開けさせておけ、頼んだぞ」
ほとんど一方的な話し方ではあったが、要望は通ったようだ。
あとは静流が無事帰ってくることを祈るのみだろう。
センチュリオンテクノロジーにさえ属していれば、いくらでも擁護できたものを……とは考えてしまうが今更どうしようもない。
しばらくゆっくり体を休め、冷静に思い返してみると……最近の自分はおかしいと思わざるを得ない。
少しばかり思考の余裕ができてしまうと、雛樹の身を案じたり彼に対する世間の評価に腹を立てたり後悔したりと彼のことばかり考えてしまっていた。
以前ならば、ひたすら任務のことや己の鍛錬プログラムのことなどを考えていた筈だ。
しかし、以前より今の方がより任務に身が入り、成果も上げることができている。
憧れの兵士を近くに感じているためか、下手なところは見せられない、またはより良い自分をアピールしたいとでも思っているのか。
そんなヒーローに憧れる子供のようなことを考えてしまっている自分が恥ずかしくなり、赤面してしまった。
早めに出撃の準備をしよう。たるみかけた頭を振って気を入れ直し、ブリーフィングルームに向かった。
……——。
「今回は我が社のエースパイロットを総動員した任務となる」
「つまりわいと結月ちゃんだけやっちゅうわけですな」
「ノックノック。ちゃん付けはやめてください。捥ぎますよ」
「すまんて……。で、アルビナさん、うちのウィンバック2機も入り用っちゅうことやが、相当込み入っとるんか?」
「ああ。面倒なことだが、方舟前方200キロ圏内に12のグレアノイド隆起が確認された。迅速な破壊が必要となる」
グレアノイド隆起。海上都市が進む大海溝に現れる、グレアノイド鉱の山である。
そのグレアノイド隆起の周辺にはほぼ例外なくドミネーターが大量に発生し、空間歪曲が起こる。
このまま放置して海上都市が付近を通ることになれば、ドミネーターの襲撃はもちろんの事ながら、空間歪曲に巻き込まれて都市の一部がねじ切れる可能性だって出てくるのだ。
その隆起の大きなもの全てを破壊するのが今回の任務となっていた。
その規模の大きさから、企業連傘下の企業との合同任務となるが……。
「リストにGNCがいませんね」
「っは。企業連傘下の中でも一等でかいとこは温存するのが常や。ある程度、捨て石となっても構わんどこから出してきよる」
「我々が傘下に加わらずやっていく以上、捨て石扱いされることもある程度受け入れねばならん。必ず成果を上げてこい、捨て石ども」
「了解です、アルビナ大佐」
「ほな、行ってきますわ」
そういった扱いには慣れている。むしろ、過酷な任務を背負うのがウィンバックアブソリューターパイロットとしての誇りとも言える。
二人は何の疑問も抱かずブリーフィングルームを出て行こうとした。
しかし、アルビナ大佐は静流だけを呼び止め……。
「無事帰ったら褒美を与えてやる。励めよ」
「……? はい、わかりました」
新しい鍛錬具だろうかと思いつつ、特に大きな期待をせずに格納庫へ向かった。
静流が出て行ったのを確認したアルビナ大佐は、携帯端末を使ってとある場所に電話をかけた。
「ああ、夜刀神嬢、私だ。三日後、祠堂雛樹を借りることができるか? できるだろう? 依頼? ああ、内容を言ってみろ。……ひどい依頼だな。いや、うちで買い取ろう。祠堂雛樹の予定を開けさせておけ、頼んだぞ」
ほとんど一方的な話し方ではあったが、要望は通ったようだ。
あとは静流が無事帰ってくることを祈るのみだろう。
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