ノアの弱小PMC—アナログ元少年兵がハイテク都市の最凶生体兵器少女と働いたら
ー子供好きの守護者ー
若夫婦にしつこく絡んでいたガーネットにようやく気づき、雛樹が頭を下げに行った。
謝りはしたものの若夫婦はガーネットのことを迷惑だとはチリほども思っておらず、むしろ和やかに受け入れてもらえていたようだ。
「この子も機嫌が良くてむしろ助かっていたくらいですよ」
「そう言ってもらえると……ったく、こいつは」
「あによぅ」
一応軽率なことをしないようにガーネットを目で威嚇しておくが、おそらく全く効果はないだろう。
相変わらず、手を伸ばしてくる赤ん坊からある程度の距離をとりつつも興味深げに見つめていた。
「軍部の方ですか?」
「えっ……ああ、PMC所属です。申し訳ありません、息子さんの前でこんな……」
上着からチラリと見えていたホルスターを隠しながら、雛樹は頭を下げた。
誰しも、子供の前で人殺しの道具をちらつかせられるのは嫌だろう。
しかし夫婦は嫌な顔一つせず、笑顔で……。
「いえいえ、物騒だなんてとんでもありませんよ。私たちがこうして過ごせているのもあなた方に海上都市を守っていただいているからですし」
「……」
金を稼ぐためにやっている仕事が、結果としてそういうことになっているので気にしないでください……何てことを淡々と言ってしまうところだった。
むやみなことを言って、軍属の評判を落とすこともないだろう。
「息子さん、可愛いですね」
「あはは、ありがとう。抱いてみます?」
「いや、俺は……」
「だっこしてあげなさいよぅ。あたしはしてあげたくてもできないんだからぁ」
ガーネットにそう言われ、雛樹は態度には出さなかったが渋々赤ん坊を抱き上げようとした。
雛樹とて、赤ん坊を抱っこした経験くらいある。そのほとんどが孤児院でのことであったが。
経験上、自分が赤ん坊を抱っこすると……。
「ぅやあああああっ」
「……っ」
めちゃくちゃ泣かれるのだ。抱き方が荒いなどということではなく、何故か理屈抜きで泣かれてしまう。
「珍しいな。あまり人見知りする子じゃないんだけど……。なあ?」
「そうね。お腹すいてるのかしら?」
「すいません。昔からあまり好かれなくて」
と、泣いてしまった赤ん坊に戸惑っていた雛樹に、呆れ気味のガーネットが赤ん坊に声をかけた。
「声大きいわねぇ、元気ぃ」
すると赤ん坊の泣き声はみるみるうちに小さくなっていき……。
「いまいちパッとしないけどぉ。悪い奴じゃないから泣かないであげてくれるぅ?」
「あぶあ」
「ん、いい子ぉ」
あくまでも、この都市を守る守護者というところだろうか。こういった場面で見せる慈しみの心には雛樹自身、驚かされる。
もしも、彼女が方舟の守護者ステイシスとしてではなく、普通の少女として生きていたなら真っ当な人生を歩んでいたのだろう。
ただ方舟を守るためだけに生み出された対ドミネーター生物兵器。
都市の住人のほとんどはその兵器のこのような姿を知らないだろう。
はじめですら……そう、波長が少しばかり合うからといって押し付けられた感が強く、その破天荒な性格から嫌気がさしていたのだが、こうして付き合っていくうちにどうやら慣れてしまったらしい。
今や方舟の最高戦力と遊んでやれる余裕すらあるのだから、不思議なものだ。
「あの小さいの欲しかったぁ」
「人の子供さん欲しがるな……というか、お前じゃまともに触ることもできないんだろ」
「ほっぺたとか小さい手とかつついたり握ったりしたぁい」
夫婦と別れて園内を散歩している最中、ずっとガーネットは拗ねたようにそのことばかり口にしていた。
はじめこそ、まともに人と触れ合えないガーネットの体質のことを憂いて特に何も言わなかったのだが……。
謝りはしたものの若夫婦はガーネットのことを迷惑だとはチリほども思っておらず、むしろ和やかに受け入れてもらえていたようだ。
「この子も機嫌が良くてむしろ助かっていたくらいですよ」
「そう言ってもらえると……ったく、こいつは」
「あによぅ」
一応軽率なことをしないようにガーネットを目で威嚇しておくが、おそらく全く効果はないだろう。
相変わらず、手を伸ばしてくる赤ん坊からある程度の距離をとりつつも興味深げに見つめていた。
「軍部の方ですか?」
「えっ……ああ、PMC所属です。申し訳ありません、息子さんの前でこんな……」
上着からチラリと見えていたホルスターを隠しながら、雛樹は頭を下げた。
誰しも、子供の前で人殺しの道具をちらつかせられるのは嫌だろう。
しかし夫婦は嫌な顔一つせず、笑顔で……。
「いえいえ、物騒だなんてとんでもありませんよ。私たちがこうして過ごせているのもあなた方に海上都市を守っていただいているからですし」
「……」
金を稼ぐためにやっている仕事が、結果としてそういうことになっているので気にしないでください……何てことを淡々と言ってしまうところだった。
むやみなことを言って、軍属の評判を落とすこともないだろう。
「息子さん、可愛いですね」
「あはは、ありがとう。抱いてみます?」
「いや、俺は……」
「だっこしてあげなさいよぅ。あたしはしてあげたくてもできないんだからぁ」
ガーネットにそう言われ、雛樹は態度には出さなかったが渋々赤ん坊を抱き上げようとした。
雛樹とて、赤ん坊を抱っこした経験くらいある。そのほとんどが孤児院でのことであったが。
経験上、自分が赤ん坊を抱っこすると……。
「ぅやあああああっ」
「……っ」
めちゃくちゃ泣かれるのだ。抱き方が荒いなどということではなく、何故か理屈抜きで泣かれてしまう。
「珍しいな。あまり人見知りする子じゃないんだけど……。なあ?」
「そうね。お腹すいてるのかしら?」
「すいません。昔からあまり好かれなくて」
と、泣いてしまった赤ん坊に戸惑っていた雛樹に、呆れ気味のガーネットが赤ん坊に声をかけた。
「声大きいわねぇ、元気ぃ」
すると赤ん坊の泣き声はみるみるうちに小さくなっていき……。
「いまいちパッとしないけどぉ。悪い奴じゃないから泣かないであげてくれるぅ?」
「あぶあ」
「ん、いい子ぉ」
あくまでも、この都市を守る守護者というところだろうか。こういった場面で見せる慈しみの心には雛樹自身、驚かされる。
もしも、彼女が方舟の守護者ステイシスとしてではなく、普通の少女として生きていたなら真っ当な人生を歩んでいたのだろう。
ただ方舟を守るためだけに生み出された対ドミネーター生物兵器。
都市の住人のほとんどはその兵器のこのような姿を知らないだろう。
はじめですら……そう、波長が少しばかり合うからといって押し付けられた感が強く、その破天荒な性格から嫌気がさしていたのだが、こうして付き合っていくうちにどうやら慣れてしまったらしい。
今や方舟の最高戦力と遊んでやれる余裕すらあるのだから、不思議なものだ。
「あの小さいの欲しかったぁ」
「人の子供さん欲しがるな……というか、お前じゃまともに触ることもできないんだろ」
「ほっぺたとか小さい手とかつついたり握ったりしたぁい」
夫婦と別れて園内を散歩している最中、ずっとガーネットは拗ねたようにそのことばかり口にしていた。
はじめこそ、まともに人と触れ合えないガーネットの体質のことを憂いて特に何も言わなかったのだが……。
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