ノアの弱小PMC—アナログ元少年兵がハイテク都市の最凶生体兵器少女と働いたら
第1節5部ー局長の願いー
「ステイシス……? 企業連に引き渡したはずだ、なんでここに」
「アルマだって好きでここにいるわけじゃないわぁ。ただ、お父様にあんたと一緒にいるなら外に出てもいいって言われたからぁ」
「俺と一緒なら? どういうことなんだ」
「あーもぉ、めんどーくさーい。アルマに聞かれてもわかんないわよぅ」
雛樹の質問攻めに、いかにもめんどくさいとそっぽを向いたステイシス。
入院中、結月恭弥に言われたことを思い出す。住居が与えられるのは君というわけではないと。雛樹はただここへ住めと言われただけなのだ。
どうすればいいか困惑していたその時だった。リビングの固定通信機が反応し、電子音を鳴らしたのは。
ただ、雛樹がでる間もなく勝手に通信がつながり、でかでかとしたホログラムモニターがリビング中央に現れたが。
《やあ、初めまして。祠堂雛樹》
「あ! お父様ぁ!」
一番初めに反応を示したのは、名前を呼ばれた雛樹ではなくステイシスだった。ホログラムモニターの前にすぐさま身を乗り出していく。
《ふむ、やはり安定しているようだ。だがステイシス、私は彼に用がある。少し大人しくしていなさい》
「はぁい」
そう、“お父様”に言われて乗り出していた身を引っ込め、モニターの前に雛樹が移動した。
「どなたですか。この状況を説明できる方ならありがたいんですが……」
《ああ、突然すまないね。突然こんな環境に直面して、困惑するのは無理もない。私は企業連合兵器局局長、高部総一郎と言う。君とステイシスをその家へ呼んだ張本人さ》
「あなたが……。先日の件で俺を擁護してくれてると聞きました」
《ああ、悪いね。その程度のことしか私はできないでいる。元CTF201兵士、結月恭弥、そしてアルビナ=パヴロブナ=結月から君の話はよく聞いていていてね。随分優秀な兵士だと。そんな君をみすみす潰す真似はさせられない》
結月夫妻は、今となっては自分のことをよく知る数少ない人物だ。高部総一郎はその二人とパイプを持っているらしい……とすると。自分のことはある程度、知れているというわけだ。
「でも……この環境はいったい?」
《うん、その説明をするために君と一度話をする必要があった。しかし
、こんなモニター越しですまないね。少し立て込んでいて、席を離れられないでいる》
雛樹は、その説明を高部総一郎直々に聞くことになった。この住居は高部総一郎自身が用意し、ステイシスを住まわせ、雛樹を呼んだということから始まったのだが……。
《君がドミネーター因子を保有していることは聞いていた。ただこれは結月夫妻が私のみに渡した……賄賂のようなものだ。私が頑なに君を擁護しているのは、私自身の意思と……そして利益のためだ。わかるかい》
「ここに住めと言ったのは、その利益の延長線上ですか」
《いや、それは……意思の方でね。これは私からの願いなのだ。ドミネーター因子を持ち、この都市で唯一彼女と触れ合える君への》
その願いは、その頼みは本当に単純なものだった。
《彼女に、人間としての生き方を教えてあげてほしい》
「断らせてもらいます」
企業連幹部の願いを、雛樹は間髪入れずに断った。しかし、モニターの向こうの高部総一郎は別段驚くことはせず、ただなぜかと雛樹に尋ねた。
「アルマだって好きでここにいるわけじゃないわぁ。ただ、お父様にあんたと一緒にいるなら外に出てもいいって言われたからぁ」
「俺と一緒なら? どういうことなんだ」
「あーもぉ、めんどーくさーい。アルマに聞かれてもわかんないわよぅ」
雛樹の質問攻めに、いかにもめんどくさいとそっぽを向いたステイシス。
入院中、結月恭弥に言われたことを思い出す。住居が与えられるのは君というわけではないと。雛樹はただここへ住めと言われただけなのだ。
どうすればいいか困惑していたその時だった。リビングの固定通信機が反応し、電子音を鳴らしたのは。
ただ、雛樹がでる間もなく勝手に通信がつながり、でかでかとしたホログラムモニターがリビング中央に現れたが。
《やあ、初めまして。祠堂雛樹》
「あ! お父様ぁ!」
一番初めに反応を示したのは、名前を呼ばれた雛樹ではなくステイシスだった。ホログラムモニターの前にすぐさま身を乗り出していく。
《ふむ、やはり安定しているようだ。だがステイシス、私は彼に用がある。少し大人しくしていなさい》
「はぁい」
そう、“お父様”に言われて乗り出していた身を引っ込め、モニターの前に雛樹が移動した。
「どなたですか。この状況を説明できる方ならありがたいんですが……」
《ああ、突然すまないね。突然こんな環境に直面して、困惑するのは無理もない。私は企業連合兵器局局長、高部総一郎と言う。君とステイシスをその家へ呼んだ張本人さ》
「あなたが……。先日の件で俺を擁護してくれてると聞きました」
《ああ、悪いね。その程度のことしか私はできないでいる。元CTF201兵士、結月恭弥、そしてアルビナ=パヴロブナ=結月から君の話はよく聞いていていてね。随分優秀な兵士だと。そんな君をみすみす潰す真似はさせられない》
結月夫妻は、今となっては自分のことをよく知る数少ない人物だ。高部総一郎はその二人とパイプを持っているらしい……とすると。自分のことはある程度、知れているというわけだ。
「でも……この環境はいったい?」
《うん、その説明をするために君と一度話をする必要があった。しかし
、こんなモニター越しですまないね。少し立て込んでいて、席を離れられないでいる》
雛樹は、その説明を高部総一郎直々に聞くことになった。この住居は高部総一郎自身が用意し、ステイシスを住まわせ、雛樹を呼んだということから始まったのだが……。
《君がドミネーター因子を保有していることは聞いていた。ただこれは結月夫妻が私のみに渡した……賄賂のようなものだ。私が頑なに君を擁護しているのは、私自身の意思と……そして利益のためだ。わかるかい》
「ここに住めと言ったのは、その利益の延長線上ですか」
《いや、それは……意思の方でね。これは私からの願いなのだ。ドミネーター因子を持ち、この都市で唯一彼女と触れ合える君への》
その願いは、その頼みは本当に単純なものだった。
《彼女に、人間としての生き方を教えてあげてほしい》
「断らせてもらいます」
企業連幹部の願いを、雛樹は間髪入れずに断った。しかし、モニターの向こうの高部総一郎は別段驚くことはせず、ただなぜかと雛樹に尋ねた。
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