最強は絶対、弓矢だろ!
黄金と弓使い
☆☆☆
アイリス・ブレーメン……全てが金で、金で始まり、金で終わり、金で彩る金色の剣士。まさに最高峰と呼ぶべきほどに恐ろしく、最高峰と呼ぶべきほどに美しい。そんな女だが、そんなものは外面の話……外の話をいくらしようが物の本質には至れない。
そして、そんなアイリスの外しか触れない俺は……彼女の本質を理解することができなかった。ただ、その眼光だけで相手を魅了し、硬直させ、殺すことができるほどに……アイリス・ブレーメンという人間は生物的にも、武人としても強すぎる。本当に強い相手は戦わずとも分かるものだ。
アイリスは自分の上司であろうハンニバルさえも置いていき、目の前にいる俺だけを視界に収めて語り掛けてくる。
「ロアのお歳を尋ねても?」
「20だな。なんでそんなこと訊きやがるんだ?男に歳を訊くってのは、失礼なんだぜ?」
「あら……そうだったの?わたくし、女性に年齢を尋ねることが失礼かと思っていたのだけれど……。あぁ、でもロアは20歳なのね?わたくしと同い年ね?」
「あんた……20歳なのか」
もっと歳上だと思ったとかは口にしない。別に、BBAとか思ったわけではなく……何となく落ち着いた雰囲気が年齢を重ねて見せたと言った感じだ。だから、俺は悪くない。
「あら?何か?」
と、アイリスはそんな俺の思考を読んだかのようにそう言ってくる。俺はスッと視線を逸らして誤魔化した。
「いやいや、別に何も。何も考えちゃいないぜ?」
「頭空っぽのお馬鹿さんということかしら?」
「ちっげぇよ……喧嘩売ってんのか」
「買うなら売るわ」
と、目をキラキラとさせてアイリスは言った。しかし、さすがにそれは不味いと思ったのだろう……ハンニバルがすかさず割って入った。
「よせ……ここで暴れられてはオレが困る。とにかく、ここではあらゆる行動を慎め」
「はぁい」
アイリスは、上司の命令には逆らわないようで大人しく従った。俺は別に喧嘩を買うつもりでいたのだが……少し拍子抜けした。
「今回は……少し巡り合わせが悪かったということにしましょ?またの機会に……」
「だな。次の機会に、アンタにこの俺様の矢を喰らわせてやるよ」
「あら……当たるとでも?」
「お?やってみるか?」
「やめんか……何度言わせれば分かるのだ。この戯けっ」
アイリスは肩を竦め、俺は目を逸らした。ハンニバル……常人よりかは幾分かやり手だろうが、恐らく専門は政……俺とは相容れないような存在だろう。武力と権力は似ているようで全く異なり、もはや真逆とも言える。まあ、俺にはおよそ関係のある話でもないが……。
「んじゃ、俺はこの辺で帰るわ。あんまし大将待たせんのも悪りぃしな」
「ほお?大将というとエルフィアのことだな……愚妹は愚妹なりに、自分の出来る事をやっているようだな。貴様のような人材を確保してきたことも賞賛するべきか」
「愚妹ってなぁ……アンタの血を分けた妹だろ?随分と辛辣じゃねぇか」
俺は眉根を寄せ、ハンニバルへ訴えかけた。エルフィアは心優しく強かなお姫様だ。愚妹と呼ぶほど愚かでなし……だが、ハンニバルとってはそうでないらしい。
「愚かな我が妹を愚妹と罵って何がおかしい?アレは心優しく、穏やかで、清廉潔白で……人を信じ易い。これを愚鈍と言わずして何とする?」
兄貴の側面からというより、これはハンニバルの信念に基づいた……そう謂わば、国王という視点から述べている。たしかに、政に疎い俺でさえもエルフィアが国王なんて柄じゃないのは目に見えて分かる。それでも、王であろうとする姿勢に俺は感化され、こうしてエルフィアの下についてきたわけだ。
だからこそ、俺はここでエルフィアの兄貴たるハンニバルに言ってやらなくてはならない。
「馬鹿言え。あいつはたしかに、愚かで鈍い奴かもしれねぇ。基本的に他力本願で、自力じゃあ何もできねぇだろうよ。でもな……そいつを棚に上げてもなお、自分の信念を貫ける奴が人を引っ張れる力があるんじゃねぇか?」
俺はハンニバルに向けてそう言い放った。俺の言葉を受けたハンニバルは、暫し面食らったようにしていたが直ぐに鼻で笑うような嘲笑を浮かべた。
「所詮は騙し騙しの言葉……真に王に相応しいのが誰かは、どの道判明するであろう。その時を、今は待とうではないか。ここで言い争っても仕方なし……」
「んま、そうだな……。じゃ、今度こそ俺はこれで」
俺は踵を返し、ハンニバルの執務室を去る。ハンニバルの派閥の面々からの視線を背中に受けながら、俺は部屋を出た。その視線の中でもやはり、一際アイリスの視線が最も強く感じられた。
アイリス・ブレーメン……なるほど、世界は広いようで狭い。これほど近くに、これほどの強敵がいたとは思わなかった。アルファスに続いて、つくづく俺を飽きさせない。村を出て、心底正解だった。
あ、そういえば……ブレーメンってレシアの野郎と同じだな。しかし、髪色が全く違う……が、顔は多少似ていたか?
ふむ……。
そんなことを俺は、ブツブツと考えながらこの広い城の中を歩き、レシア達と合流すべくエルフィアがいる場所へ向かった。
アイリス・ブレーメン……全てが金で、金で始まり、金で終わり、金で彩る金色の剣士。まさに最高峰と呼ぶべきほどに恐ろしく、最高峰と呼ぶべきほどに美しい。そんな女だが、そんなものは外面の話……外の話をいくらしようが物の本質には至れない。
そして、そんなアイリスの外しか触れない俺は……彼女の本質を理解することができなかった。ただ、その眼光だけで相手を魅了し、硬直させ、殺すことができるほどに……アイリス・ブレーメンという人間は生物的にも、武人としても強すぎる。本当に強い相手は戦わずとも分かるものだ。
アイリスは自分の上司であろうハンニバルさえも置いていき、目の前にいる俺だけを視界に収めて語り掛けてくる。
「ロアのお歳を尋ねても?」
「20だな。なんでそんなこと訊きやがるんだ?男に歳を訊くってのは、失礼なんだぜ?」
「あら……そうだったの?わたくし、女性に年齢を尋ねることが失礼かと思っていたのだけれど……。あぁ、でもロアは20歳なのね?わたくしと同い年ね?」
「あんた……20歳なのか」
もっと歳上だと思ったとかは口にしない。別に、BBAとか思ったわけではなく……何となく落ち着いた雰囲気が年齢を重ねて見せたと言った感じだ。だから、俺は悪くない。
「あら?何か?」
と、アイリスはそんな俺の思考を読んだかのようにそう言ってくる。俺はスッと視線を逸らして誤魔化した。
「いやいや、別に何も。何も考えちゃいないぜ?」
「頭空っぽのお馬鹿さんということかしら?」
「ちっげぇよ……喧嘩売ってんのか」
「買うなら売るわ」
と、目をキラキラとさせてアイリスは言った。しかし、さすがにそれは不味いと思ったのだろう……ハンニバルがすかさず割って入った。
「よせ……ここで暴れられてはオレが困る。とにかく、ここではあらゆる行動を慎め」
「はぁい」
アイリスは、上司の命令には逆らわないようで大人しく従った。俺は別に喧嘩を買うつもりでいたのだが……少し拍子抜けした。
「今回は……少し巡り合わせが悪かったということにしましょ?またの機会に……」
「だな。次の機会に、アンタにこの俺様の矢を喰らわせてやるよ」
「あら……当たるとでも?」
「お?やってみるか?」
「やめんか……何度言わせれば分かるのだ。この戯けっ」
アイリスは肩を竦め、俺は目を逸らした。ハンニバル……常人よりかは幾分かやり手だろうが、恐らく専門は政……俺とは相容れないような存在だろう。武力と権力は似ているようで全く異なり、もはや真逆とも言える。まあ、俺にはおよそ関係のある話でもないが……。
「んじゃ、俺はこの辺で帰るわ。あんまし大将待たせんのも悪りぃしな」
「ほお?大将というとエルフィアのことだな……愚妹は愚妹なりに、自分の出来る事をやっているようだな。貴様のような人材を確保してきたことも賞賛するべきか」
「愚妹ってなぁ……アンタの血を分けた妹だろ?随分と辛辣じゃねぇか」
俺は眉根を寄せ、ハンニバルへ訴えかけた。エルフィアは心優しく強かなお姫様だ。愚妹と呼ぶほど愚かでなし……だが、ハンニバルとってはそうでないらしい。
「愚かな我が妹を愚妹と罵って何がおかしい?アレは心優しく、穏やかで、清廉潔白で……人を信じ易い。これを愚鈍と言わずして何とする?」
兄貴の側面からというより、これはハンニバルの信念に基づいた……そう謂わば、国王という視点から述べている。たしかに、政に疎い俺でさえもエルフィアが国王なんて柄じゃないのは目に見えて分かる。それでも、王であろうとする姿勢に俺は感化され、こうしてエルフィアの下についてきたわけだ。
だからこそ、俺はここでエルフィアの兄貴たるハンニバルに言ってやらなくてはならない。
「馬鹿言え。あいつはたしかに、愚かで鈍い奴かもしれねぇ。基本的に他力本願で、自力じゃあ何もできねぇだろうよ。でもな……そいつを棚に上げてもなお、自分の信念を貫ける奴が人を引っ張れる力があるんじゃねぇか?」
俺はハンニバルに向けてそう言い放った。俺の言葉を受けたハンニバルは、暫し面食らったようにしていたが直ぐに鼻で笑うような嘲笑を浮かべた。
「所詮は騙し騙しの言葉……真に王に相応しいのが誰かは、どの道判明するであろう。その時を、今は待とうではないか。ここで言い争っても仕方なし……」
「んま、そうだな……。じゃ、今度こそ俺はこれで」
俺は踵を返し、ハンニバルの執務室を去る。ハンニバルの派閥の面々からの視線を背中に受けながら、俺は部屋を出た。その視線の中でもやはり、一際アイリスの視線が最も強く感じられた。
アイリス・ブレーメン……なるほど、世界は広いようで狭い。これほど近くに、これほどの強敵がいたとは思わなかった。アルファスに続いて、つくづく俺を飽きさせない。村を出て、心底正解だった。
あ、そういえば……ブレーメンってレシアの野郎と同じだな。しかし、髪色が全く違う……が、顔は多少似ていたか?
ふむ……。
そんなことを俺は、ブツブツと考えながらこの広い城の中を歩き、レシア達と合流すべくエルフィアがいる場所へ向かった。
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