三題小説三十弾『拘束』『猫』『宗教施設』タイトル『ある日の猫の集会』

山本航

三題小説三十弾『拘束』『猫』『宗教施設』タイトル『ある日の猫の集会』

 私は猫。名前はベルンシュタイン。

 野良猫界に燦然と輝くオニキスの如き黒猫。瞳は琥珀色。雄猫ばかりか人間にまで愛でられて、気が付けばそう呼ばれていた。大抵の猫は私をベルと呼ぶ。猫も杓子もアホだから長い名前を覚えきれないらしい。

 梅の香りに誘われて6丁目3番地のコンクリート塀の上にやって来た。薫風に髭をひくつかせる。
 ふと空を見上げると化け猫が空を漂っていた。尻尾が二つに割れている。いわゆる猫又。透けた太った体でふわふわと、タンポポの綿毛のように流れていく。見ていると、あちらもこちらに気付きウィンクをしてきた。私は無視して毛づくろいすることにした。

ベル姐さん。にゃあどこかにお出かけにゃあにゃんにゃあぁですか?」

 サンキジが声をかけて来た。塀の下、家の壁との狭い隙間から私を見上げている。
 3丁目に住むキジトラ柄の雑種猫なのでそう呼ばれている。人懐っこい年若い猫で、いつだったか腹を空かせて死にかけていたので、食べ物を分けてあげたら懐いた。アホ。綺麗好き。あと噂好き。
 空に視線を戻すが、新春の高い蒼穹が広がるばかり。化け猫を見失ってしまった。
 私は腰を落とし、軽く伸びをして、尻尾を縦に振る。別に構わない。

ただの散歩よ。にゃあにゃあんたは何してにゃあにゃにゃあんの?」
僕は日向ぼっこをふにゃあにゃしていたのです」

 塀と壁の影の中、サンキジは言った。

老婆心ながらにゃあにゃあふ教えてあげるけど、日向ぼっこは日向でにゃああにゃあにやるものなのよ」
うとうとしていたら日にゃにゃにゃあごが過ぎ去ってしまったのです」

 そう言ってサンキジは照れ笑いした。

アホねえ。にゃあそんな狭い所に日がふにゃあにゃあご差すのは正午の一瞬にゃあごだけでしょうが。にゃにゃにゃあごもっと広い所でにゃにゃにゃあご日向ぼっこなさいよにゃあふにゃあ
すみません。みゃあ何ぶん慣れないにゃあご6丁目なもんで」
そういう問題にゃじゃないわよ」

 どうにも抜けている野良だ。こんな事で生きていけるのだろうか。

ところで姐さんにゃあご5丁目の飼い猫に惚れふにゃふにゃあてるって噂は本当でふにゃふにゃあすか?」

 私は猫背で顔を洗いつつ否定する。

知らないわよ。にゃだいたい5丁目のふにゃふにゃあ飼い猫なんて山ほどいるんだから。みゃうにゃあみゃ両前足だけじゃにゃあみゃ数えきれないわみゃあみゃ

ペルシャ猫のにゃあみゃチンチラですよ。みゃあご名前は知らないけどにゃあ
ああ、にゃクリスタルね。にゃ好奇心旺盛な家猫よ。にゃあご一度も家から出た事がにゃあごにゃあないって言うから外のにゃみゃみゃみゃをしてあげただけ。にゃあふにゃあごっていうかにゃああいつは雌だからみゃああみゃ
そうだったんですかふにゃ飼い猫なんかと話してにゃあると野良界からつまにゃあはじかれますよふにゃああみゃあご
できるもんならにゃあやってみろってにゃあなものよみゃあ

 私に惚れている雄猫など五万といる。そうそう私を追い出すことなど出来やしない。

飼い猫なんて何がにゃあ楽しいんですかね?ふうにゃ
さあねにゃあ。飼い猫には飼い猫のにゃあ喜びがあるにゃあごんでしょうよ。みゃあごにゃだいたいあんたはみゃあみゃ飼い猫向きだにゃあと思うわよ?ふうみゃああ
よしてください。にゃあ僕は野良人生にゃあまっしぐらなのです。みゃあにゃそれにしたってにゃあ姐さんの色恋の噂はにゃあよく聞きますねみゃあごふにゃあご
命短し恋せよ乙女、よにゃあ。唇はないけどにゃあ、血潮は燃えにゃあたぎってるわにゃあみゃ
次々乗り換えてるってふにゃあ噂になってますみゃあ

 もうちょっと言葉を選べないものか。私はただ恋多き雌猫なだけだ。

女の心は猫の眼みゃあごって言うでしょふにゃあ
1丁目のハチワレににゃあご、くつしたにゃあ。あと団地のにゃあ三毛でしたっけみゃにゃみゃあご
ダンミケはにゃああっちからにゃあ惚れてきてんの。ふみゃあ私は興味ないわにゃあ。あとイチクツもにゃあご興味なくなったみゃあごにゃあ
何でです?みゃ
あいつ去勢にゃあごされちゃったのよ。にゃあ中々のふにゃあ美猫だったのにみゃみゃみゃあみゃ

 私は尻尾を激しくふるった。コンクリート塀を何度も叩く。

無情ですねにゃ

 サンキジは尻尾を足の間に挟んだ。

あんたもほどほどにねにゃあ。じゃ、にゃあそろそろいくわみゃにゃにゃあ

 私は腰を上げ、尻尾を大きくゆっくり振る。

そういえばにゃあベル姐さんにゃにゃあ

 サンキジが私のお尻に声をかけた。私は、もう一度サンキジを見下ろす。影の中のサンキジの瞳は大きくまん丸だ。

集会で姐さんのにゃあ事が議題に上がってるにゃあらしいですよみゃあにゃみゃあ
へえ、にゃあ私の何の話?みゃ
さあ、別に興味にゃあなかったんでにゃ
あんたはもうちょっとにゃあ命の恩人ににゃあ敬意を持ちなさいふみゃあご

 私はその場を後にする。優雅かつしなやかな足取りで塀の上を駆け抜けた。



 猫の集会として使っているお寺は人間が使わなくなって久しい。手入れのされていない境内は荒れ果て、下草が無造作に乱雑に生え散らかり、人間の墓と思われる石碑は打ち倒されている。
 裏手から境内に入ると、見慣れた顔の雌猫が風に揺れる猫じゃらしにじゃれていた。河川敷のムギワラ猫。カセムと呼ばれている。年上らしいけどどれくらい上なのかは知らない。気どり屋だと思っていたけど可愛らしいところもあるものだ。
 私は尻尾を振り振り、そこに座って暫くカセムの遊びを眺めていた。

この! この!にゃあ エノコログサめ!ふみゃあ ここであったがにゃあ百年目だ! あいつのにゃあ仇は取らにゃあせてもらう!にゃあごみゃ

 子猫もかくあるべし、というような思い切りのいいごっこ遊びっぷりだ。
 ふと、カセムは私に気付き暫く動きを止めて、尻尾を山がたにする。私は顔を洗いながら何も言わずに見つめ続けた。カセムは何も気付かなかったように、また猫じゃらしに猫パンチをお見舞いする。

こ、この!にゃあ ベルめ!にゃあ 私の猫パンチをにゃあ食らいなさい!ふみゃにゃにゃあ」と言いながら尻尾を細かく振っている。「ふう、にゃあこれくらいでいいよねふにゃあ。イメージ訓練終了。ふうみゃああみゃああら?にゃあ ベルじゃない。にゃあこんな所で奇遇だねにゃみゃあふ
随分楽しそうにゃあだったわねみゃ

 そう言って私は本堂に向かう。なかなか良いものを見せてもらった。
 カセムがついてきて喧しく喚く。

遊んでいたにゃあ訳じゃないよ!ふみゃああ あんたをコテンパンにゃあにする為に鍛えていたにゃあところだったんだ!にゃあごみゃ
結構毛だらけにゃあ猫灰だらけ。にゃあカセムのにゃあ柄は斑の毛ふうみゃ
馬鹿にして!みゃ

 カセムは私をライバル視しているのか、妙に絡んでくる。しつこいくらい絡んでくる。

恥ずかしがるにゃあ事ないわ。にゃあ猫っていうのはじゃらにゃあされてなんぼよにゃあにゃ
べ、別ににゃあ恥ずかしにゃあがってないけど……にゃあ
そう。にゃあそれならにゃあ言わせてもらうけどみゃあみゃ
な、何だよみゃ
復讐なんてふにゃああいつがにゃあ望むと思うの?ふみゃ
うるさあああいふしゃああああああ!」

 私はカセムの猫パンチを華麗にかわし襖の隙間から本堂に入る。

 猫の額ほどの狭さの本堂には多くの猫がたむろして、思い思いに過ごしていた。集会とは名ばかりで大抵は集まるだけの集まりだ。ある意味純粋な集会だ。
 私が本堂に入るとにわかに色めき立ち、雄猫達が声をかけてくる。

やあ、ベルにゃ
こんにちは、ベルふにゃ
良いゴミ捨て場をにゃあ見つけたんだにゃあ。一緒に行かないか?ふうみゃみゃ
ネズミを分けてにゃああげるよ、ベルみゃあにゃ
聞いてくれよにゃあ。おいらカラスとにゃあ戦ったんだぜにゃあふにゃ

 猫も杓子もここぞとばかりに喉を鳴らし、猫なで声を披露する。

珍しいのにゃあ。ベルンシュタインよみゃあ。お前が集会ににゃあ参加するとはみゃあにゃあみゃ

 見ると年老いたヒマラヤンが本尊を安置するべき須弥壇で香箱を作っていた。目を細めて尻尾をゆっくり振っている。
 チョウロウと呼ばれる猫だ。仙人のような猫でいつもあちこちを徘徊、もとい散策している。

お久しぶりねにゃあ。チョウロウにゃあ。まだ生きていたのねみゃあふみゃあ
猫に九生ありじゃよにゃあ。そう簡単ににゃあくたばらんわい。ふうみゃあみゃしばらくじゃなにゃあ。それにカセポもにゃにゃみゃ
カセムだよ!にゃあ」とカセムが言った。
ちょうどにゃあベルンシュタインにゃあの話をしてにゃあいたところじゃ。ふうみゃあ今から探しににゃあ行かせようとしていたにゃあ所だったのじゃよにゃにゃにゃ
そうそうにゃあ、それをにゃあご聞いてわざわざにゃあやって来たのよみゃあみゃあみゃ

 ボケジジイと言うカセムの悪態を聞き流して本堂の真ん中に近づく。

本題に入る前ににゃあお主にある疑義がにゃあ生じておる。にゃあにゃまずはそれを晴らしてにゃあもらわねばならんふみゃあごみゃあ
何よ疑義ってみゃ
疑義の意味はじゃなにゃ
それは知ってるにゃあ。何をにゃあ疑われているの?ふにゃあ
それはじゃな。にゃあお主が人に飼われてにゃあおるのではないかにゃあ、という疑いじゃにゃあごみゃ
それはないわ。にゃあそれで本題は?みゃあみゃ
ちょっと待って。にゃあ話進めるの早いわいにゃにゃん」と、チョウロウが制止する。
そもそもそんなにゃあ疑いを持ったのは誰?みゃんにゃ

 私は本堂に集まっている猫達を見回す。猫達は知らんぷりする。そしてカセムが輪の中から出て来た。

ベルってにゃあいつも人間ににゃあ食べ物貰ってるよね?にゃあ 疑われてもにゃあ仕方ないにゃあんじゃないのー?みゃにゃみゃあ
おいらは信じてるぜにゃん」と、ダンミケが言うと他の雄猫達もそれに追随し、雌猫達は不機嫌そうに鼻を鳴らした。
この泥棒猫!ふみゃあ」と、誰かが言ったが誰が言ったのかは分からなかった。
あの人間達はにゃあ勝手に私にふにゃあ食事をにゃあ献上しに来るだけよ。ふみゃあにゃ私が飼う事はあってもにゃあ私が飼われる事なんてにゃあごありはしないわみゃあにゃあ

ふむ、まあよかろう。ふみゃにゃみゃんではにゃあ本題じゃ。にゃあ神社に巣食うにゃあカラスどもふにゃあは知っておるの?にゃんにゃみゃ
そりゃあね。にゃあ野良猫にとってみゃあ不倶戴天の敵だものみゃにゃにゃん
そいつらの主がにゃあ人間の少女じゃにゃあという話しじゃ。みゃんみゃん奴らが急速ににゃあ勢力範囲を伸ばしてにゃあいる理由がそれじゃにゃみゃにゃみゃ
まさかあにゃ
少女に統率されているにゃあカラス達を見た者がふにゃあご何人もおるみにゃあみゃ
おいらだよ!にゃあ おいらが見たんだにゃんみゃ

 ダンミケが出しゃばる。

そうじゃ。にゃあダンミケよ。にゃあその時の事をにゃあ話してくれみゃにゃんみゃ

 ダンミケはもったいぶって咳ばらいをし、猫達の視線を集めた。

おいら、にゃあ神社で綺麗なにゃあ石を見つけたんだ。にゃあベルの瞳みたいなにゃあ綺麗な石さ。ふみゃんごにゃああベルにプレゼントにゃあしようと思ってねにゃんごにゃ」と言ってダンミケは私に目配せをした。

 私は欠伸で返す。

そうしたらカラス達ににゃあ襲われて林の中ににゃあご追い詰められた。ふみゃにゃみゃあおいら死に物狂いでにゃあ戦った。にゃあ窮鼠猫をにゃあ噛むってやつさ。みゃにゃんごするとにゃあ笛の音がふにゃあ聞こえてきたにゃあ。そしたらにゃあカラス達は石を持っにゃあて音の聞こえる方へにゃあ飛んで行っちまったみゃにゃんみゃにゃおいらも忍び足でにゃあご音の方へ行くと、ふにゃあみゃ一人の人間の元にふにゃあカラスの大群がにゃあ集結していたにゃあってわけさみゃんにゃみゃあ
それで?みゃ」と私は言った。
それで?みゃ」とダンミケも言った。
それで?みゃ」とチョウロウも言った。

 私達の勢力範囲が急速に縮んでいる原因はこのボケ老人ではないだろうか。

それで何で私がにゃあご飼い猫だとにゃあ疑われたのよにゃあみゃ
これを見てくれにゃ

 チョウロウの視線の先にいた猫達が左右に分かれる。そこには目隠しをされ、猿轡をかまされ、手足を縛られた人間がいた。

○×△□☆ひっはひほうはっへんは
ちょっと!にゃあ どこでにゃあ捕まえて来たのよ!みゃあにゃあ
さっき境内ににゃあ迷い込んで来たにゃあのを捕まえたのじゃ。みゃにゃあにゃベルが飼い猫じゃにゃあないかと疑われにゃあたというよりもにゃあ、野良としてにゃあ最も人と親しいのがにゃあベルじゃないかとにゃあいう話になったのじゃみゃあにゃああ。どうじゃ?にゃあ 通訳してくれにゃあんかの。そしてにゃあ人を我々のにゃあアドバイザーに!みゃんみゃ

 猫の手も借りたいという訳だ。

出来ないわよにゃ
それなら仕方ないのおにゃあ
物わかりがにゃあ良すぎるわねみゃあ
ならばやはりにゃあ化け猫殿ににゃあ頼むしかないみゃあにゃあ

 猫達が一斉に天井を見上げ、私も釣られて天井を仰ぐ。さっき見かけた透けた太った化け猫が天井で香箱座りしていた。そして青い電流を放ちながら漂い下りてくる。周囲の猫達はびびって離れる。

よかろう。にゃあよでは吾輩の出番だなにゃにゃはいにゃ
さっき風ににゃあ流されてたにゃあ猫又かしら?にゃあご
吾輩は化け猫である。にゃにゃにゃこにゃ個にして全、にゃにして全にして個。にゃん故に個を特定するにゃをにゃくてい名前など持ち合せてにゃをみょにゃぬおらぬ。にゃあ吾輩は観測されたにゃあ時に初めて……しゅれでぃんにゃあ

誰もそんなにゃあ事聞いてないわよ。みゃあごそれでチョウロウ。にゃあこの化け猫に人とのにゃあ通訳をしてにゃあ貰うって事?ふみゃあにゃん
そうじゃよみゃ」と、かなり離れたところでチョウロウは言った。

 化け猫は床に降り立ち、たるんだ肉を踏みつつ後ろ脚で立ち、私を見下ろす。

では約束通りにゃくそく吾輩の妻にどおりなってもらうぞにゃにゃつみゃ
そんな約束してにゃあないけど?みゃあご

 私が周囲を見渡すと皆は知らんぷりをした。意気地無しの雄猫どもめ。どうやら一番の目的はこれだったようだ。

まあまあ。みゃあみゃあ吾輩の妻になるにょろこべ事ほど名誉な事はにょろこべないぞ」

 そう言って私の頭を気安く触ったので、私は毛を逆立てて牙をむき出し、化け猫を引っ掻いた。化け猫は素直に謝った。
 チョウロウは代わりにマタタビを振舞った。

それじゃあにゃあよろしく頼むわねふみゃあにゃ
はい。にゃあいえすにゃあ人語は得意なのです。にゃにゃはいに頑張らさせてにゃかせていただきますにゃあ

 人間が本堂の中央に引っ立てられ、目隠しと手足の拘束は解かず、猿轡だけ外した。

○×△□☆イッタイナンナンダ?」
私は何をすべきかにゃあと人間は言っておるにゃにをすべきにゃ」と化け猫。
は、話が早いのお。にゃあとりあえずにゃあマタタビをみゃあごふにゃあ

 若い猫の一匹がおそるおそる人間の口元にマタタビをやったが何の反応も示さない。人にマタタビ、猫に小判だ。

カラス退治のにゃあごアドバイザーをふにゃあお願いしたいのじゃがにゃあごふみゃん」と皆を代表してチョウロウが言った。
○×△□☆ワタシハカラスノ○×△□☆クジョヲジョゲンスル」と、化け猫。
○×△□☆エ、ソノ? ○×△□☆アリガトウゴザイマス
ありがとうにゃうも、と言っておるにゃりがとう
そっちがにゃあ感謝するのか? にゃあどういう事じゃ?にゃふみゃあにゃあ

 私達は頭を捻った。

人間達もカラスににゃあ悩んでるにゃあんじゃないかしら?ふうみゃあん」と私は言った。
なるほどの。ふにゃあではどうすればにゃあいいですかの?にゃあんみゃ
○×△□☆カラスヲ○×△□☆ドウスルノデスカ?」
○×△□☆ド、ドウシマショウ○×△□☆ホケンジョ?」
ホケンジョにゃけんじょだそうな」
ホケンジョとはにゃんごふうにゃ一体なんじゃ?」

 これは猫の誰も知らなかった。

○×△□☆ホケンジョトハナンダ?」
○×△□☆エ、ホラ○×△□☆ネコノシタイトカ○×△□☆モッテイッテクレル○×△□☆トコロデスヨ

 化け猫は言い淀み、後ずさりで人間から離れる。

ど、どうしたのじゃ?ふにゃあ 化け猫殿ふみゃあごにゃ
こやつは猫の死体をにゃこのにゃたい持って行くと言っにゃそろしいにゃておる」
な、なんじゃと!?ふみゃ 何故そのにゃあような忌まわふにゃふにゃにゃあしい事を? 我々をどうすにゃあるつもりだ?ふにゃあみゃん

 猫達は人間からさらに離れようとする。私はチョウロウと化け猫を後ろから抑える。

○×△□☆ネコヲ○×△□☆ドウスルツモリダ?」
○×△□☆イ、イヤ、タンニ○×△□☆ニゲタカイネコヲ○×△□☆サガシニキタンデスヨ? ○×△□☆ココマデシナクテモ
猫の死体をにゃんてこった求めてやって来たにゃんてこったそうだ」

 狂乱状態になった。猫も杓子も我先にと逃げて行く。幾つかの襖が押し倒され、いくつかの床板が抜け落ちた。埃がもうもうと立つ中、チョウロウは腰を抜かして座り込む。化け猫は飛んで逃げようとしたので捕まえた。

あんたあのにゃあ人間を何とかしなふみゃにゃあさいよ」
む、無理言うな!にゃあ 吾輩は猫である!にゃすけてにゃあ

 化け猫は姿を薄めて姿をくらました。鳴く猫、鼠捕らずとはこの事だ。埃の中をよく見ると人間が立ちあがっている。どうやら騒動の中で拘束が外れたようだ。丁度目隠しを外したところだった。

○×△□☆バステト○×△□☆コンナトコニイタノカ!」

 人間は私達の元へ駆けより、チョウロウを抱き上げて本堂を出て行った。
 さようなら、チョウロウ。

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