異世界レストランガイド
閑話 魔力回復用携帯食料
魔力回復用携帯食料。
通称、マジカルキューブ。
魔力がその中に含まれているパワーアイテムのことを言う。しかしながらこれはなかなかにお高いものでそう簡単に常備していない。
「これは簡単に魔力が回復出来るんだけど……ただし問題があってね」
ハルが持っているのは小さなキューブだった。その色は緑色で、どちらかといえば美味しそうには見えない。
「魔力のない君が食べても何の意味がないから正直なところあげたくないんだけど……この味を共感してもらいたいし、ひとかけらだけあげよう」
そう言って、かけらを差し出してきた。緑色のパウダー。
いやいや、美味しそうに見えないものを俺が食べるなんて……。
とか思っていたらハルが俺の口にパウダーを押し込んできた……だと……!
「この味を共感して欲しいんだよ。わかるかい? 味を気にしないで効能だけを気にしている、これがマジカルキューブだよ。決して怪しくはない」
そう言って。
俺は気づけばそれを舐めていた。
…………………………。
なんというか……。
美味しいとも言えないしまずいとも言えない。強いて言うなら、苔を食べているような感じ。味がしないわけではないんだが、かといって美味しいエキスが入っているわけでもない。
ぶっちゃけ食べるのが苦痛に感じるレベルだ。今ハルが持っているあのキューブを食べるとどれほどの嫌悪感を抱くことになるのだろうか。
「な、解ったろ?」
俺はそれに頷く。きっと表情は優れないのだろう。すぐにハルが俺に牛乳を差し出してきた。
それを一杯。ああ、美味い。やっぱり牛乳って最高だよね。
……とそこでふと思った。
「なあ、そういえばそのマジカルキューブとやらって牛乳とか、そういうので味を和らがせることってできないのか?」
「出来たら苦労しないよ。なにせこれを開発した魔法研究所が『なにも一緒に食べないでこのキューブを噛み潰して食べること』って言うんだ。まったく、テストをしたのかどうかも解らないぞ」
ハルの目がどんどんつり上がっていく。よっぽどこのマジカルキューブに対しての不満が大きいらしい。
「魔力の回復なんてじっくり食事を取って休憩を長く取ればいいんだが、そんな待っていることもできない場面だってあるわけだ。そういうわけで開発されたそれだが……まるで軍事用。味なんて気にしないスタイルだ。せめて味覚のスペシャリストみたいな何かがその研究所にでもいれば話は別だったんだろうが……そうもいかなかったんだろうな」
「ふうん……」
なんだか世知辛い事情があるんだな、と俺は思った。
さて。
出発の時は、近づいている。
俺は、ほんとうに頑張れるのだろうか。役に立つことは出来るのだろうか。
そう思いながら、ただそのときを待っていたのだった。
通称、マジカルキューブ。
魔力がその中に含まれているパワーアイテムのことを言う。しかしながらこれはなかなかにお高いものでそう簡単に常備していない。
「これは簡単に魔力が回復出来るんだけど……ただし問題があってね」
ハルが持っているのは小さなキューブだった。その色は緑色で、どちらかといえば美味しそうには見えない。
「魔力のない君が食べても何の意味がないから正直なところあげたくないんだけど……この味を共感してもらいたいし、ひとかけらだけあげよう」
そう言って、かけらを差し出してきた。緑色のパウダー。
いやいや、美味しそうに見えないものを俺が食べるなんて……。
とか思っていたらハルが俺の口にパウダーを押し込んできた……だと……!
「この味を共感して欲しいんだよ。わかるかい? 味を気にしないで効能だけを気にしている、これがマジカルキューブだよ。決して怪しくはない」
そう言って。
俺は気づけばそれを舐めていた。
…………………………。
なんというか……。
美味しいとも言えないしまずいとも言えない。強いて言うなら、苔を食べているような感じ。味がしないわけではないんだが、かといって美味しいエキスが入っているわけでもない。
ぶっちゃけ食べるのが苦痛に感じるレベルだ。今ハルが持っているあのキューブを食べるとどれほどの嫌悪感を抱くことになるのだろうか。
「な、解ったろ?」
俺はそれに頷く。きっと表情は優れないのだろう。すぐにハルが俺に牛乳を差し出してきた。
それを一杯。ああ、美味い。やっぱり牛乳って最高だよね。
……とそこでふと思った。
「なあ、そういえばそのマジカルキューブとやらって牛乳とか、そういうので味を和らがせることってできないのか?」
「出来たら苦労しないよ。なにせこれを開発した魔法研究所が『なにも一緒に食べないでこのキューブを噛み潰して食べること』って言うんだ。まったく、テストをしたのかどうかも解らないぞ」
ハルの目がどんどんつり上がっていく。よっぽどこのマジカルキューブに対しての不満が大きいらしい。
「魔力の回復なんてじっくり食事を取って休憩を長く取ればいいんだが、そんな待っていることもできない場面だってあるわけだ。そういうわけで開発されたそれだが……まるで軍事用。味なんて気にしないスタイルだ。せめて味覚のスペシャリストみたいな何かがその研究所にでもいれば話は別だったんだろうが……そうもいかなかったんだろうな」
「ふうん……」
なんだか世知辛い事情があるんだな、と俺は思った。
さて。
出発の時は、近づいている。
俺は、ほんとうに頑張れるのだろうか。役に立つことは出来るのだろうか。
そう思いながら、ただそのときを待っていたのだった。
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