つのつきのかみさま

きー子

異界の時代/2

 地平線の彼方に、つのつきたちはそれを見た。つのつきたちばかりではない。戦乱に明け暮れるつのなしたちでさえも、なんの前触れもなくあらわれたそれには目を奪われてしまったかもしれない。わたしもまた例外ではなかった。わたしは、それを見た。
 それは輪郭がはっきりとしない大きな穴で、けれどもきっぱり穴というのはちょっと丸みにかけるところがあった。遠くから見るつのつきたちには穴の上半分も見えていなくて、天辺近くのぼやけた円弧が見えるばかりだっただろう。その実態たるや空の高みから地面にまでゆうに至らしめる異様な高さの顎を開けていて、それはまさに"大穴"というほかなかった。それはあまりにも、大きすぎた。ともすればつのつきたちの都市で一番高い尖塔よりも、ずっとずっと高いところまで虚空を覗かせていたやもしれぬ。とにもかくにも、異様の一言。絶対にありえてはならないことが起こってしまったような、天と地がひっくり返ってしまったような衝撃が全大陸をびっくりするくらいの速度で駆け抜けていった。つのつきたちの北方に跋扈する蛮族のつのなしたちなど、天変地異の前触れと我先に故郷へと帰りだしてしまう始末だった。目先の災いが自分から去って行ってくれたのは全くの幸いだけれど、つのつきたちにすればぜんぜんそれどころではない。各地の領主がこぞって連邦に早馬を飛ばしては領地の中から斥候に長ずる猟兵のつのつきをひっかき集め、"角張網"を駆使しての情報捜索に大奔走といった大慌てでの対応を始める。
 つのつきたちが混乱をきたさなかったのはひとえに"角張網"の役割が大きいはずだった。わけあって離れ離れになっている身内の安否だってすぐに確認ができるし、それぞれの領地の情勢にしてもいわずもがなだ。ほとんどのつのつきが"危険が直近に差し迫っているわけではない"と確信できれば、それなりに冷静な対応も可能となる。つのなしからすればその前提に立つのがまた難しい。ゆえに、全大陸をそれぞれ見渡していっても"大穴"への対応には驚くほどの違いが出てくる。つのつきほどではないにせよ迅速に私情を殺して異変の調査に乗り出すつのなしもいて、かと思えば"大穴"の出現など知ったことではないとばかりに戦を再開するつのなしもいた。それはさすがに一部のひどいところだけれど、多かれ少なかれ混乱の渦に飲みこまれて動けずにいる領地が一番多いというのが実際のところだろう。つのつきとの同盟関係にある連邦は現状認識と事実確認後、国内情勢をできるだけ落ち着かせるためにも見に回った。それも賢明な判断のひとつというのは間違いがない。もし、今の混乱に乗じて隣国から攻めこまれたりでもしたら大変な惨事になる。無理に背伸びするより、足元をおろそかにしないよう気をつけたほうがいい時もあるということ。
 そういうわけで真っ先に現地での調査を行うことになったのはつのつきで、実際に行動を開始したのもやっぱりつのつきたちが一番早かったということになる。それはつのつきの国がある種の威信をあらわしているようでもあるけれど、だからといって喜んでばかりもいられない。先駆者であることは、前例がないという危険な状況に放りこまれるということだ。どう誤魔化しても変わりようがないその事実に、ならばわたしが先人となってあらかじめ確認するほかに術はないと思った。わたしがつのつきたちに情報を伝えられるかははなはだ怪しいところがあるけれど、けれどもやらないよりはずっといい。わたしが永い歳月を延々と見守り続けていたのは、あるいは今この時のためなのかもしれないという思いもある。思い過ごしの可能性は高そうだけれど、ともかく見てみなければ始まらない。 
 大穴があるのは、つのつきの国からだいぶ南にいったところ。緑どころか、ともすれば水にすらも事欠くようなカラカラに渇ききった土地だった。一面に茫漠と広がる赤い土は一切の実りを期待できず、吹き荒ぶ風に至っては頑然と切り立った崖山を容赦なく削り落としていくほど。端的にいって過酷この上なく、もちろんつのつきやつのなしの姿などひとつたりとも見当たらない。当たり前だった。こんな過酷な土地に住むなんて狂気の沙汰だ。明るいほうが好きとはいったものだけれど、ここまで来たら拷問以外のなにものでもない。かんかん照りの太陽は容赦なく赤い土を焼きつけていて、下手をしたら焦げ付きすらするかもしれない。もし異変がなければ、こんな土地に来ようなんてつのつき・つのなしは誰一人としていなかったに違いあるまい。ここに至るまでの道が砂だらけの不毛の大地なのだからなおさらだった。だれがこんな土地がつくったのか、頭がおかしいとしか言いようがない。
 ともかく、大穴はよりにもよってそんな土地に生じた。もう放っておいていいとわたしは思った。けれどもつのつきは果敢に、めちゃくちゃな土地をそれでも懸命に開墾してみせた根気強さで進み続ける。いまさらそれを止められるわけはないかもしれないけれど、かといってわたしが止まる理由もない。
 それは一見すれば大穴としか言いようがないのだけれど、よくよく見れば、どっちかというと"裂け目"のようにわたしには思えた。形は円というよりも縦長の瞳によく似ていて、何かひどく巨大な怪物の瞳が見開かれているようでもある。けれども瞳の内側はありったけの色をめちゃくちゃにぶちこんでかき混ぜたような極彩色で、とてもではないけれど生き物の眼には見えない。それではなんなのかというと、わかるわけもなかった。そんなめちゃくちゃな色をした裂け目の向こう側は、こちら側からはなにも見通すことができない。どれだけ凝視しても、どこかに繋がっているのかということすらわからない。"裂け目"はその威容に全く似つかわしくなく無音で山のように泰然としてたたずんでいて、まるで初めから当たり前にそこにあったように見えなくもない。
 もちろん、実際にはそんなわけがなかった。こんなものがあってなるものか。
 わたしは懲りずに"裂け目"の周りをぐるぐると見渡してみるけれど、極彩色になっているのは北側の一方だけのようだった。なおさら瞳めいていると思った。前面は全てを呑みこんでしまいそうな気味の悪さがあるけれど、背面は完全な黒一色。これはこれで気持ちが悪いというほかない。そして、これだけくまなく見渡してみてもなんにもわからないわたしに愕然とした。ばかまるだしだった。こんなことを伝えただけではすこぶる困るだろうし、わたしだけではあまりに情報の確度が低すぎるというのもいただけないことだろう。下手をしたらつのつきたちにわたしを忘れられていてもおかしくはない──神殿には絶えることなく"神代"の少女の祈りがあったけれども、巷間のつのつきがみんなそうとは限らなかった。
 結局、わたしはつのつきたちを止めることはかなわなかった。試しに呼びかけてはみたものの届かなかったというだけのことなのだけれど、仮に届いたとしても止められなかったのではないかという気がした。たぶん、今のつのつきたちは、わたしが見る以上のことを知ることができる。そんな考えがわたしにはどうしても少なからずあって、無理に引きとめようという気持ちはすでになかったのだ。
 つのつきの調査団は道程の困難さを知るや一端きた道を引き返し、本土から手配された物資を辺境で補給したのちに再度出発。一度目はあまりにも厳しい環境にかなり手ひどくやられていたけれど、今度の旅路に抜かりはない。幸いにして当地の空模様を指し示す"神代"の少女の報せは雨天。雨もまた身体の温度を奪っていく難敵には違いないけれど、燦々と照りつける強烈な陽の光よりはまだしもいくらかマシ。異常に冷えこんでしまう砂漠の夜を避けるために砂漠を抜けて、つのつきたちは一路"裂け目"へと着実に進み続ける。彼らの後に続く調査団の姿は、いまだ無い。砂漠を踏みしだき、険しい丘陵を乗りこえ、大穴という何よりもの目印がなければ迷ってしまいそうなほどの果てしない道の行く先、ようやっとの思いで至らしめる南の果て。"裂け目"のよこたわる赤土の辺土はそこにある。十にも満たないつのつきの調査団は、それでもひとりとして欠けることなく大穴ならぬ"裂け目"を見やる。それは本土の彼方でかいま見たときとは比べものにならないほどの存在感を、つのつきたちの眼前にあらわしていた。
 それでもあまりの"裂け目"の大きさゆえに、そのふもとといえる部分からはちょっとばかり遠い。ようやっとここまで来たつのつきたちは、しかし不意に冴え冴えとした面持ちを浮かべると、ゆっくりと頷きあった。みんなで八人いる調査団のつのつきたちは部隊の最小単位である四人編成ふたつにあたり、さらにいえば彼らの半数はあらゆる状況下において独自に判断、行動することができる特殊部隊訓練を受けたつのつきたちでもある。でなければ、いくらなんでもこのような辺土まで持ちこたえることはできなかっただろう。そんなつのつきたちは、"裂け目"に近づきつつあるからこそ万全を期そうとしているのだろうか。その歩みは、先ほどよりも格段に遅々としたものになっている。疲れが理由ではもちろんない。滑らかでありながらも確かな緊張がうかがえるその足取りは、まぎれもないつのつきたちの警戒を意味している。
 ──それは、つのつきだけが気づくことのできるなにかを感じているのかもしれない。そう思った。わたしにはなにも見えてはいないけれど、今のつのつきたちならばありえることだ。
 幸い、赤土にまみれたその土地では隠れ場所や遮蔽物に全く事欠くことがない。つのつきたちはそれらを伝い歩くようにしてゆっくりと進み、同時に"裂け目"の向こう側へと慎重に意識を注いでいる。"角張網"による感覚強化はひとりひとりのものだけでは限りがあるけれど、何人ものつのつきの"角張網"を直結すればその効果は飛躍的に跳ね上がるのだ。極彩色の向こう側にはなにも見えたものではないけれど、つのつきたちの反復倍増された共感覚は目に見えないなにかを探知し得る。あるいは、その警戒こそはつのつきたちがなにかを探り当てた証であるのかもしれない。わたしは彼らをゆっくりと見下ろし、ものもいえずにただ見守る。
 ふいに劇的に状況が変化したのは、つのつきのためではなかった。つのつきたちもまた、固唾を呑んでその光景を見守っている。裂け目の色彩がまるで水面のように激しく波立ち、そこから何かがゆっくりと這い出たのである。つのつきたちは、そしてわたしもその姿をじっと見る。何とも知れぬ異様な裂け目からあらわれたのは、いったいなにものなのか。それはこの地に害を撒き散らすものなのか。万全の警戒態勢を取っていたつのつきの調査団は、その正体を眼にして、思わず呆気にとられたかのようだった。
 それは、つのなしだった。つのなしに、よく似ていた。どこを見回しても角が生えてはいないし、しっかりと地面を二本の脚で踏みつけて立っている。顔の造形なんかも、西方のつのなしたちとほとんど変わりはない。肌の色が真っ白であったりその反対の真っ黒だったり、さらにいえば顔立ちはどことなくつのなしと違っているようにも見えたけれど──おおむね、それはつのなしといってよかった。間違いはない。
 けれども彼らには、西方諸国家のつのなしたちと決定的に異なる点があった。彼らは戦乱の只中に置かれているつのなしのように煤けても灰に汚れてもいないし、身につけている衣服は決して粗末なものではない。彼らはみんな同じ服を着ていたけれど、糸のほつれみたいなものはほとんど見当たらない。つまり、縫製の技術は西方のつのなしよりもずっとずっと高い──あるいは、ひょっとしたらつのつきの職人よりも。
 彼らの振る舞いにはどこか油断がなくて、恰好が同じなのもおそらくは軍服なのだろう。傍らには"笛"にどことなく似た鉄塊を下げていたけれど、つのつきたちが知るものよりそれはずっと物々しい。そして同時に洗練されているようにも見える。持ち手がなんとも手に馴染むようなかたちに出来ていて、たくさんの弾を蓄えておけるような部位もある。つのつきたちが独自に改良した"笛"は六つの弾丸を入れ込んでおける"筒"と呼ばれるものに移行していたけれど、彼らのものはそれよりなおも精巧にできているように見える────もっとも、つのつきの"筒"は呪術の発展に淘汰された影響で今ではほとんど無用の長物になりはててしまったのだけれど。
 つのつきたちは彼らの姿を確認するやいなや、当然としてひとつの判断を問われることになる。先制攻撃を仕掛けるか否か、というそれはそれはとても深刻な問題だ。つのなしのようでいて一目見たばかりでは何者かも定かではない彼らは、つのつきたちと並んでもほとんど見劣りしないように見える。端的にいって、きっと手強い。彼らがどこから来たのだろうか、というのもまた問題だった。目に見えたぶんでは"裂け目"から出てきたというのが全てなのだろうけれど、なぜそうなったのかを知るためには彼らを問い質すほかにないように思える。"裂け目"の向こう側があるのかどうか、というのは、つのつきたちにしたって重大な問題だった。調査団が自ら危険を侵して踏み込まずに済むならば、きっとそうしないで済むに越したことはない。
 結局、つのつきたちは堂々として彼らの前に姿をあらわすことを選んだ。それはたぶん、正しい選択だっただろうと思う──つのつきたちが遮蔽物の岩陰から出ることを決めたときすでに、くだんのつのなしたちもまた彼らの姿を認めていたように思えたからだった。ひょっとしたら、彼らはつのつきではないけれど、角によく似た力を持っているのかもしれない。あるいは単なる勘なのかもしれないけれど、可能性はある。連邦でも突然変異的につのつきと似た力を持ったつのなしが産まれることは極稀にあって、けれども角があるわけではないから根本的には別物にすぎない。そういった不思議な力はつのなしたちが広く"魔術"と呼んでいて、つのつき全体に一般化された呪術とは異なり徹底的に秘匿される傾向が強かった。大抵は子どもに伝わることなく一代限りで消えてしまうのもあって、"魔術"というのはつのつきたちの"呪術"以上に謎が大きい。もしそういう力を扱うつのなしが彼らの中にいるとすれば、これは厄介なことこのうえなかった。
 まずつのつきたちは彼らの前に出ると、その半数──つまり特殊部隊のつのつきたち四人が前に出る。そしてゆっくりと、武器は手にしていないことを示すように空っぽの掌を持ち上げてみせた。実際問題つのつきの本当の脅威である呪術はなんら制限されていないのだけれど、それでも無抵抗を示す姿勢とはそれなりに意味があろう。
 対するつのなしは脇に抱えた鉄塊を咄嗟に掲げ、黒光りする口をつのつきに向けて何かを叫んだ。おそらくは警告のたぐいだろう。ただの一度も聞いたことのない言葉だった。それはたぶん反射的な動作だったのか、ほとんど無抵抗なつのつきの姿を眼にすればゆっくりと鉄の筒を下ろしていく。そして一番前に出た禿頭の黒い男のつのなしが、はきはきとした声でなにかをいった。やっぱりそれは西方のつのなしたちが扱う言葉とはあまりにもかけ離れていて、とてもこの世のものとは思えない。たぶん、つのつきたちもわかってはいないだろう。けれども代わりにつのつきたちは、呪術による独自の言語解析手段を有している。
 西方諸国家のみならず多くの蛮族や隣国と関係を持っている以上、つのつきたちは必然的に多くの言葉を目にする。耳にもする。過ぎ去った歴史の中で使うものがすでにいなくなってしまった言葉なんてものも少なからずあって、そういった言語もみんな"角張網"の共有化記憶に蓄積され続けている。新たに出会った未知なる言語もまたつのつきたちにとっては物珍しく新しいサンプルであって、過去に蓄積されてきた言語から類似の例を探り当てるのもお手の物。サンプルが少ないうちはそうもいかないけれど、"角張網"に彼らの言葉を取り込めば取り込むだけ、加速度的につのつきは彼らの言語を理解することができるようになる。聞くことにも、話すことにも不自由はない。
 新規な言語と旧い言語の類似性を探索。それを"角張網"に取り込むことによる融和──その果てに至らしめる言語の同一化。つのつきたちの言葉でありながら彼らの言葉であるかのように発して、彼らの言葉でありながらつのつきたちの言葉であるように聞く。つまるところはそういう呪術が、つのつきたちにはあった。民族を別にしながら言葉を通わせることが、つのつきにはできた。
 もっとも、多くの言葉を取り入れるまでそう簡単にはいかないので、翻訳を済ませるためにも代表のつのつきは彼らと身振り手振りを交えた会話をあれこれと試みる。もちろんうまくいくわけはないのだけれど、交流をはかろうという意図くらいは汲みとってくれたのだろう。黒いつのなしはしきりに頷きながらあれこれと断片的に意味の取れる言葉を口にした。
 わたしにすれば相変わらず細かくはわからないのだけれど、だいたいの予想はつく。彼らは"裂け目"の向こう側から訪れたもので、そして、つのつきの調査団と同じ目的でここまで来たのだろう。彼らは異郷の地での突然の邂逅ながら相当の冷静さを保っていて、たった五人という少人数からも相当な精鋭であることがうかがえる。"裂け目"の向こう側に渡るというのにその人数はあまりに無用心な気がしたけれど、それは彼らに預けられた信頼のあらわれともいえよう。第一、"裂け目"の向こう側に踏み出した瞬間空から真っ逆さまに墜落するようなひどい予想もできなくはないのだ。とても大人数を送りこむような踏ん切りはつけられないだろうとわたしは思う。
 それにしても彼らは、何らかの特殊な部隊だとしても軍人としてはちょっと異様に見えた。禿頭の肌の黒い彼はまだしも、他の四人のばらばら具合たるや。ひとりは色白で線の細い青年で、金髪に蒼い瞳が目にも鮮やか。代表のつのなしとは好対照といった感じで、ちょっとどころではなく同じ民族には見えなかった。かつての帝国のような勢力なのだろうか、とわたしは思う。
 ひとりは女性で、さっぱりとした黒い髪に浅黒い肌。しなやかな猫科の動物を思わせる感じ。ひとりはどことなく影のある男性のつのなしで、赤茶色の前髪がほとんど目元にかかってしまっている。肉体の逞しさは別にして、軍服でなければとてもではないけれど軍人には見えなかっただろうと思う。最後のひとりにいたっては男性か女性かもよくわからない平然とした表情のつのなしで、けれども女性のつのなしより小柄だったからよく目立った。銀色の髪はどことなく"神代"の少女を思わせたけれど、その眼は猛禽類みたいに冴え冴えとしてやけに鋭い。やっぱりどう考えても似てない、とわたしはあらためて確信する。
 しばらく言葉を交わしているうちにつのつきたちからの言葉も彼らに通るようになってきて、はじめて会話の意味が通り始める。それはきっとつのなしたちには不可思議極まりない現象だけれども、つのつきたちにしたら全く自明のものに過ぎない。
 黒肌のつのなしは一抹の困惑をあらわにしながら、しかし外見通りに豪快だった。つまらない逡巡は止すように首を振り、いまだ堂々とたたずんでいる"裂け目"を振り返る。そして何気なしに口にした。
「俺たちは、こことは別の世界から来たものだ────恐らくは、そこの穴から繋がっちまってな」
 親指で指し示される、奇っ怪な虚穴。瞳めいた裂け目。それは間違いなく、お互いにとっての核心的な一言だった。

「つのつきのかみさま」を読んでいる人はこの作品も読んでいます

「ファンタジー」の人気作品

コメント

コメントを書く