月ふる夜と光とぶ朝のあいだで
5.光るちょうちょ
レオンはずっと歩いています。だからラビーは少ししんぱいになりました。
「ねぇ、足いたくない?」
ラビーはたてがみのすきまからレオンの顔をのぞくように見下ろしました。
レオンはおどろいていました。レオンにとってはまだそれほど歩いていません。
走ることもできますが、そうするとラビーをふり落としてしまうのでずっとゆっくり歩いています。
それにレオンは、だれかにしんぱいされたことがありませんでした。この森で一番強いライオンだからです。
なのでラビーに足がいたくないかと聞かれて、びっくりしてしまいました。
「だいじょうぶだ。おまえは、さむくないか?」
ずっと雪がふっています。小さなこのうさぎならびしょぬれになっているだろうと思います。
でもラビーはさむくありませんでした。
「だいじょうぶ!レオンのせなか、あたたかいもん!」
元気にそう答えます。
レオンのせなかは本当にあたたかでした。
ラビーはお父さんとお母さんにはさまれてねむる時や、やわらかい落ち葉のじゅうたんにとびこんだ時にもあたたかいと思います。
それでもあたたかい大きなせなかに乗ったのははじめてだったので、とても気持ちいいと思いました。
レオンはふしぎな気持ちです。
大きくなってから、だれかといっしょにいることはありません。レオンは強く、そしてたった1頭だからです。
せなかに乗せたラビーはとても小さいですが、たしかにあたたかいと思います。だれかをあたたかいと思うのは、とてもひさしぶりな気がしました。
そしてそれは、レオンをうれしい気持ちにさせました。
「もう少し歩くから、ねていろ。」
レオンの声が少しやさしくなります。ラビーは今のレオンの声がとても心地よいと思いました。
そうすると、何だかねむくなってきます。
「おやすみなさい……。」
とても小さな声でそう言うラビーに、レオンは、
「おやすみ。」
ということばを大きくなってはじめて言うのでした。
山の朝が早いように、森の朝も早いものです。
もう少しで森を出るというころ、道のずっと向こう、山のはしから太陽が出てきたのが見えました。
太陽がのぼりはじめると、暗かった森も明るくなっていきます。
まだ雪はふっていますが、明るくなる前は小さなつぶだった雪が今ではやわらかで大きな、まるで真っ白な花びらがふっているようです。
レオンはそれをはじめてきれいだと思いました。
ラビーは太陽のまぶしさに目をさましました。
そしてこすった目で雪を見ると、光るちょうちょだと思いました。
ラビーはちょうちょが大好きで、フワフワと右へ左へ落ちていく雪のようすが気まぐれなちょうちょによく似ていたからです。
「ちょうちょ!」
ねむっていたはずのラビーが急に大きな声を出したので、レオンはびっくりしました。
「何だ?」
「これ、光るちょうちょでしょ?」
それが雪のことだとレオンは気付きました。
そしてラビーが「月のカケラ」のことをわすれているようなので、
「そうだ。あれは光るちょうちょだ。」
と答えることにしました。
自分のうそを信じさせるより、ラビーが信じるものに応えてあげたくなったからです。
でも本当の一番の理由は、いつかこれが「月のカケラ」でも「光るちょうちょ」でもないと知った時、ラビーにがっかりされたくなかったからです。
きらわれたくなかったのです。こんな気持ちもはじめてでした。
ラビーが「光るちょうちょ」に何度も手をのばしてとび上がりはじめた時、レオンの目に森と山のつながる一本道が見えてきます。
レオンは、お別れが近付いていることを知りました。雪はもうすぐ止みそうです。
  
「ねぇ、足いたくない?」
ラビーはたてがみのすきまからレオンの顔をのぞくように見下ろしました。
レオンはおどろいていました。レオンにとってはまだそれほど歩いていません。
走ることもできますが、そうするとラビーをふり落としてしまうのでずっとゆっくり歩いています。
それにレオンは、だれかにしんぱいされたことがありませんでした。この森で一番強いライオンだからです。
なのでラビーに足がいたくないかと聞かれて、びっくりしてしまいました。
「だいじょうぶだ。おまえは、さむくないか?」
ずっと雪がふっています。小さなこのうさぎならびしょぬれになっているだろうと思います。
でもラビーはさむくありませんでした。
「だいじょうぶ!レオンのせなか、あたたかいもん!」
元気にそう答えます。
レオンのせなかは本当にあたたかでした。
ラビーはお父さんとお母さんにはさまれてねむる時や、やわらかい落ち葉のじゅうたんにとびこんだ時にもあたたかいと思います。
それでもあたたかい大きなせなかに乗ったのははじめてだったので、とても気持ちいいと思いました。
レオンはふしぎな気持ちです。
大きくなってから、だれかといっしょにいることはありません。レオンは強く、そしてたった1頭だからです。
せなかに乗せたラビーはとても小さいですが、たしかにあたたかいと思います。だれかをあたたかいと思うのは、とてもひさしぶりな気がしました。
そしてそれは、レオンをうれしい気持ちにさせました。
「もう少し歩くから、ねていろ。」
レオンの声が少しやさしくなります。ラビーは今のレオンの声がとても心地よいと思いました。
そうすると、何だかねむくなってきます。
「おやすみなさい……。」
とても小さな声でそう言うラビーに、レオンは、
「おやすみ。」
ということばを大きくなってはじめて言うのでした。
山の朝が早いように、森の朝も早いものです。
もう少しで森を出るというころ、道のずっと向こう、山のはしから太陽が出てきたのが見えました。
太陽がのぼりはじめると、暗かった森も明るくなっていきます。
まだ雪はふっていますが、明るくなる前は小さなつぶだった雪が今ではやわらかで大きな、まるで真っ白な花びらがふっているようです。
レオンはそれをはじめてきれいだと思いました。
ラビーは太陽のまぶしさに目をさましました。
そしてこすった目で雪を見ると、光るちょうちょだと思いました。
ラビーはちょうちょが大好きで、フワフワと右へ左へ落ちていく雪のようすが気まぐれなちょうちょによく似ていたからです。
「ちょうちょ!」
ねむっていたはずのラビーが急に大きな声を出したので、レオンはびっくりしました。
「何だ?」
「これ、光るちょうちょでしょ?」
それが雪のことだとレオンは気付きました。
そしてラビーが「月のカケラ」のことをわすれているようなので、
「そうだ。あれは光るちょうちょだ。」
と答えることにしました。
自分のうそを信じさせるより、ラビーが信じるものに応えてあげたくなったからです。
でも本当の一番の理由は、いつかこれが「月のカケラ」でも「光るちょうちょ」でもないと知った時、ラビーにがっかりされたくなかったからです。
きらわれたくなかったのです。こんな気持ちもはじめてでした。
ラビーが「光るちょうちょ」に何度も手をのばしてとび上がりはじめた時、レオンの目に森と山のつながる一本道が見えてきます。
レオンは、お別れが近付いていることを知りました。雪はもうすぐ止みそうです。
  
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