天女×天姫×天使…天華統一

ハタケシロ

第21話 決着

「貴様!!よくもアウロラをっ!!」

血を流し、ぐったりしているアウロラを見ながら、ローランはパールヴァティーに吼える。

「次にお主がこうなりたくないのであらば、降参しろ。我にお主は敵わない。今、引くというのなら、見逃すとしよう。アウロラの手当ても必要だろう?」

吼えてくるローランに対してもなお勧告を続けるパールヴァティー。これが、最後の警告だと言わんばかりに。

「ふざけるなっ!私が敵わないだとっ!?ここまでされて、引けるはずが無いだろうっ!!貴様を倒し、貰うこの領地でアウロラの手当てを済ますっ!!」

しかし、やはりと言うか、ローランは受け入れない。

「ここまでされて……か。攻めてきたのはお主たちと言うのに。それと何かお主たちは勘違いしているようなのだが……」

ここまで降参しろや、やっても無駄だという事をいい続けたパールヴァティーだが、さすがにこれ以上は何を言っても無駄だと悟り、攻撃に入る。

あとは実力行使。武力を持って敵を屈服させる。
これが異世界の、この時代の、戦国時代のやり方だとパールヴァティーはその身を持って知らしめる。

パールヴァティーは、距離があったローランとの距離を一気に詰める。殺す勢いで。

ギンっ!

と、何度目か分からない金属音が響きわたる。

パールヴァティーは鍔迫り合いの中、途中まで口にしていた言葉の続きを言う。

「我はこの地の領主ではない」

「な、なにっ!?」

パールヴァティーの言ったことが驚きだったのか、ローランは顔に声に、驚きを隠せれない。

「圧倒的な強さの前に破れたのでな。今はその人に命を捧げている」

「3位である貴様が負ける!?その冗談はつまらんっ!!」

鍔迫り合いを、ローランは気合いで押し返す。
そして、呼吸を整える。

「領地面積とは、その者の強さの証明と言っていい!弱い者が面積が広いはずがないからな!その上で3位である貴様が負けるだと?そんなくだらない冗談信じるはずがなかろう!」

ローランの言い分をパールヴァティーは、ただ黙って聞いていた。

確かに、ローランの言い分は正しかった。
領地面積とは、言い換えれば強さ。
強いものほど、面積を擁している。
そんな中でもパールヴァティーは第3位。
そんじゃそこらの雑兵ごときには、例え体調が芳しくなくとも、負けはしない。

だが、領地面積=強さだとしても。
負けることはある。それは……

「負けることがあるのだ。それも領地面積6畳のやつにな」

それは、たんにその者より強い者が居るというだけ。至極簡単なこと。

「だから我はその人の手足となり、戦力となり、力の限りあの人に尽くす。それにはまずはここを死守する。それと、証拠と言ってはなんだが、紋章も我にはなかろう?それと、ジークスがここから見えるような騒ぎを起こしてないのは何故だと思う?」

「フェライトが?貴様……私とフェライトが結託しているのを分かっていたのか?」

「当然だ。ジークスがいきなり現れたと思いきや、お主たちの進撃。繋がりがないわけないだろうと普通は思うものだ。それに、ジークスはバカではない。一人で私に余裕で勝てるとは思わないだろう。お主たちは保険なのだとすぐに思ったぞ」

「そこまで察知するとは……さすがは第3位……」

「だから違うと言っているであろう?元、3位だ。そして、今。ジークスを抑え、いや、倒し……天下を取るのは」

そこまで言ってパールヴァティーは再び突撃する。この一撃で終わらせるために。そして、早く大和の元え向かうために。

「……大和だ!」

パールヴァティーの振るった剣が、ローランを襲った。ローランは必死で防御を取るが、パールヴァティーの振るった剣の威力によって吹き飛ばされる。

土煙と、吹き飛び、地面に倒れるローランがパールヴァティーの視界に入る。

「……ほう。まだ立つというのか」

パールヴァティー自身も渾身とまではいかないが、威力のある攻撃をしたはずだった。しかし、ローランはその攻撃を受けてもなお立ち上がった。

衝撃で内蔵がやられたのか、口からは血を流している。

「まだ負けるわけにはいかぬ。国の長として、聖剣デュランダルの使い手として、最後まで諦めはせぬ」

パールヴァティーは、心の中で詫びていた。
長としての戦略の才能はない。
だがこの者には、長としての立派な覚悟があると。

「長としての覚悟……確かに立派だ」

パールヴァティーはゆっくりと歩を進め、ローランとの距離を近づける。

「だがな……この「天日」の長は一人でいい……」

パールヴァティーはローランに近づくと、満身創痍で立っているのがやっとと言うローランに大剣を振りあげる。

「その長は大和だ……!!」

そして、大剣を振り下ろした。



「大和!無事か!?」

決着を付けたあと、パールヴァティーは急ぎ、城へと向かった。

城に着き、目にしたのは、傷一つ負ってない主君の姿だった。

「まぁな」

大和の無事な姿を見て、パールヴァティーは安堵する。不安でいっぱいだった気持ちが軽くなる。

「ジークスは?」

そして、聞く。
事の顛末を。大和が無事でいる以上負けたと言うことはないだろう。しかし、ジークスの姿が見えなかった。死体すらも。

「悪い。逃げられた」

「そうなのか」

本心を言えば、ジークスのことは気掛かりではあったが、どちらかと言えばどうでも良かった。大和が無事ならそれで。

「凄かったんですよ!?大和さま!!もうっ圧倒なさってて!」

興奮が収まらないのか、息を荒くしたアマがパールヴァティーにいい迫る。目を輝かせ、大和の戦闘の状況を事細かに伝えていた。

「で、パールそっちは?」

「あぁ」



「ってて」

ポタポタと血を垂らしながら、ジークスはローランとアウロラの居城になんとか辿りついていた。

「大和とか言う奴、なんて強さだよ。パールヴァティーの比じゃねぇぞあれは」

なんとか、逃げ切ったジークスは、戦っていた大和のことを思い浮かべる。

最初は勝てる相手だと思っていた。しかし、結果は負け。逃げていなければ今頃はやられていただろう。

「もっと……もっと……強くならねぇと……」

自分で怪我をおったところを治療しながら、ジークスは呟く。

その時、扉が開く音がして、ジークスは振り向く。
そこには血まみれのローランとアウロラの姿があった。

アウロラは主君に腕をまわし、連れ添うようにして城に帰ってきたのだった。

「フェライト……お前もやられたのか?」

アウロラの質問に、ジークスは黙って頷き、立ち上がる。そして、アウロラたちの元へと向かう。

アウロラはローランの手当を一緒にしてくれるものだと思い、少し顔を和らげた。だが

「がはっ……!?」

その表情は苦悶の表情へと変わる。

ジークスの包丁型の剣が体を貫いたからだ。

「な……なぜだ……?」

その言葉を最後に、アウロラは地面に倒れ、絶命した。もともとパールヴァティーから受けた傷が酷かった上に、止めの一刺しを受けたのだ。生き長らえるはずがない。

ローランは意識がはっきりとしないまま、突如として支えがなくなったことに気づき、半開きだった目を開ける。目に映ったのは絶命したであろう家臣の身体。そして、ローランはアウロラをやったであろう人物に向く。

「貴様……!……っ!!」

「弱い奴は要らねぇんだよ」

ジークスはアウロラに続き、ローランにまで剣を刺した。アウロラ同様ダメージを負っていたローランもまた、力尽き、絶命した。

「これで……この国は俺の物だ……待ってろ大和、パールヴァティー……必ず俺がお前らを殺す」

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