天女×天姫×天使…天華統一

ハタケシロ

第12話 登用or処断

「俺の名が全国に轟く?」

「ああ。国土面積3位の領地を持っていた私を倒したんだ。お主の名はそれだけで全国に轟く」

戦闘の疲れなのか、それとも俺の攻撃を受けた影響なのか、あまり張った声ではない声で話す銀髪の女。
戦闘服と思われる、見た目軽そうで、実際は丈夫な繊維とかで作っているであろう服は、ところどころ破けたり、穴が開いている。

「………」

俺はそんな銀髪の女を見て、無言で近づく。

「な、なにを……!?」

俺が襲うとでも思ったのか、銀髪の女は、その疲労が極限にまで溜まっている身体をどうにか動かし、防御を取ろうとする。

「………なっ…!?」

そんな銀髪の女に俺は、姉ちゃんからもらった、黒いコートを、身体が隠せるようにかぶせる。
その時に、銀髪の女から声が漏れた。

「着ておけ。女がそう薄い格好をやすやすとするもんじゃない。自分の素肌を見せるのは心に決めたやつにしろ。そう姉ちゃんが言ってた」

「………」

銀髪の女が黙る。
そして、訪れる沈黙。


………おかしい。こういうことをすれば黄色い歓声が沸き起こるくらいカッコいいはずなんだが。
やっちまったか?これは恥ずかしいぞ。

銀髪の女の表情を見ようにも、その長い髪を利用してか、顔が隠れている。

「……ぁ……………と」

そんな中、ぼそっと銀髪の女が何を呟いた。



「で、どうします?大和さま?」

「そうだな……」

銀髪の女と距離を開けて、アマと話す。

俺がカッコつけたあと、アマからちょっとお話があるということなので、こうして話している。
内容はこうだ、相手をどうするか?

ゲームでもあることなのだが、勝った場合は、捕まえた敵兵、または、大名をどうするかの選択ができる。仲間にすることも可能だし、しないこともできる。それと処断。つまりは、殺すことも。

「パールヴァティーを家臣として仲間に加えますか?それとも……処断しますか?」

聞いてくるアマは、眼も表情も全部を含め、笑ってなどいなかった。
そりゃそうだろう。ゲームでだと色々な心情は関係ないが、これはリアルだ。色々な感情が、心情が入れ交わる。

ついさっきまで敵で、天下を争っていた仲だ。そう簡単に、ゲームとは違い、仲間にしようとなんて思わない。いや、思えない。けれど、天下を争うなら、ここは…天下を争うからこそ。

「仲間に加えよう……」

横目で銀髪の女を見ながら、前にいるアマに言う。

アマは何を言うわけでもなく、ただ黙って俺の言葉を聞く。

「……はい。……分かりました」

「いいのか?」

「……はい。いいですよ。御主人様…大名様である大和さまの決めたことです。私はそれに従います」

違うだろアマ。俺が大名だとか、俺がトップだからとかじゃなく、俺に従うとかじゃなく、自分の意見を、お前の本音を聞かせろよ。

「本音を言ってくれ。お前自身はどう思う?」

「私の本音ですか?」

「そうだ。俺が大名だからとかじゃなく、お前の意見を聞きたい」

「私は………少し、嫌です……」

ゆっくりと、静かに、アマは言葉を口にする。

「正直、複雑な気持ちというのが私の本音ですね。大和さまがこちらの世界に来るまで私は、幾度となくパールヴァティーと争い、戦って参りました。そこには好敵手という感情が生まれることはなく、ただ敵としてのパールヴァティーが私の中に居ました。そのパールヴァティーを仲間にするといのは正直嫌です。あっでも大和さまのご意見には従うので今のは忘れてください!」

忘れるなんてできるはずがない。
こんなにも本音を言ってくれるアマの言葉を忘れるなんて。

しかし、困ったもんだ。
銀髪の女、パールヴァティーを仲間に、家臣に登用するのは嫌なのか。
てっきり、アマのことだから、誰とでも仲が良くよいうか、分け隔てなく、好き嫌いないやつだと思ってたんだけどな。アマも普通の人間…天女なんだな。

まあ、こればかりは仕方ない。人の心はそう簡単には変えれない。
じゃあどうするか?
銀髪の女を仲間にするのを辞めるか、いや、それはもったいないだろう。
でも、アマは嫌だという。

なら、ここは、方法は、一つしかないじゃないか。

「や、大和さま…!?」

驚くアマの声が耳に入る。
態勢を低くしているせいか、少し、声が遠く聞こえる。

俺は態勢を作り終えると、アマに言う。

「頼むアマ!ここは我慢してくれ!」

俺は誠心誠意、言葉をぶつける。

一瞬の静寂が訪れる。
俺の声が大きかったのか、こっちに銀髪の女が視線を向けているのが分かる。

「そんな……辞めてください…大和さま…土下座なんて…」

すぐに膝をつき、俺に土下座を辞めさせようとするアマ。
俺はそれでも頑として、土下座を辞めない。

「頼む!アマが嫌なのは分かった!でもあいつは戦力になる!それに、この領地を知っているのはあいつだ!いろいろと必要になる!だから……だから…!」

「辞めてください!!!!」

俺の声より、遥に大きい声で、アマが叫ぶ。

「大名である大和さまが土下座なんてしないでください!」

ついさっき、大きい声を出したとは思えないほどの小さな声量でアマは俺に語り掛けるように言う。

「私の気持ちをくんでくださりありがとうございます。それだけで、私は十分ですよ。土下座をするようなことじゃありません」

「でも」

「でもじゃないです!……分かりました。ここは我慢します。なので、頭を上げてください」

アマの言葉を聞いて、俺はゆっくりと顔を上げる。

「すまん」

「謝らないでください。あっ、我慢するに伴って、お願いを聞いてもらってもよろしいでしょうか?」

「ああ。いいぞ」

我慢させてもらってる身なんだ。願いの一つや二つくらい聞かなきゃな。

「じゃあ一つだけ」

そういってアマは、笑顔を作りながら言う。

「もう、土下座なんてしないでください。大和さまは私の御主人様であり、大名様なんですから。これが私のお願いです。聞いてもらえますか?」

「ああ。分かった」

俺の手を、強く握ってくるアマに、アマの言葉に俺は、絶対にお願いを聞こうと思った。

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