天女×天姫×天使…天華統一

ハタケシロ

第11話 全國に轟く名

「やりました!やりましたよ!大和さま!」

忠実に、俺の命令通りに、犬みたいに伏せていたアマはようやく立ち上がり、喜びを爆発させる。
立つ瞬間に、立っていいんでしょうか?という顔をしながら、立ち上がったアマはどこか可愛いかった。

ていうかアマよ、そんなにピョンピョン飛び跳ねるなって、尻尾と犬耳を付けてからにしろ。

「大和さま…?」

心配そうに俺を見つめるアマ。
おいおい。さっきの喜びっぷりはどうしたんだよ。

そう思っていると、俺の視界は、アマをとらえ続けることはなく、すごい速さで移り変わりながら最後には今さっきまで、足を置いていた地面が視界に入り、そこで停止した。

「大和さま!?」

アマの叫び声が、いや、普通の声すらさっきとは違いクリアに聞こえない。
アマの声は美声だから、いつ何時でもクリアに聞こえるはずなんだけどな。

色々と頭で瞑想したのち、俺はやっと感づいた。
そうか……俺は地面に倒れているのか。

身体を起こそうともがいてみるが、おかしい。
力を入れようにも入らない。こんな経験は初めてだ。

「大丈夫ですか!?大和さま!」

さっきから、俺の心配をしてくれているアマが近くに駆け寄り、ひざまずいて俺の身体を触る。

「すまねえアマ。ちょっと力貸してくれ。どうにも力がはいらねえ」

「は、はい!」

アマはうつ伏せになっていた俺の身体を起こし、自らの膝に俺の頭を乗っけた。
いわゆる、膝枕というやつだ。姉ちゃん以外の女の子に膝枕をされたのは初めてで違和感はあるが、今はそんなことより、ただただ、情けない。

「悪いな」

「いえ、お気になさらないでください」

「いや、気にするさ。犬の膝に頭を乗っけるなんて、屈辱だ」

しかも、アマに頭を撫でられる始末だ。

「そうですよね。普通なら逆……って!大和さま!?」

「しかし、どうしちまったんだ。俺の身体は。まったく力が入らねえ」

それどころか…

「きっと疲れが出てるんですよ。初めての戦いでしたし、圧倒的な強さを発揮されましたし。その反動が今来てるんですよ」

「そうなのかもな…」

さっきの戦いを振り返る。
さっきは無我夢中というよりは、逆に冷静すぎる俺がいた。
そのおかげて、戦には、銀髪の女には勝った。
あの時の俺は、確実にギアが入ったといってもいい状態だった。恐怖を超えた覚醒。
あの時の俺は自画自賛するほどに、凄かった。しかし、今の俺は。

「はは。見てみろよアマ」

「はい?」

「さっきからさ、若干ではあったんだが、足震えてたんだわ。でも今は、目に見えて分かるくらいに震えてる。疲れとかじゃないんだよ今の俺の状態は」

戦う前の俺になってる。

「まじなんなんだよあれ…。まじなんなんだよこれ…。普通に…今はただ…怖い」

弱音が出た。
女の子がいる前で、それも膝枕をされた状態で。

そんな俺をアマは抱き寄せて、俺の頭を自分の胸に寄せる。
姉ちゃんほどのサイズではないとはいえ、そこそこのサイズのあるアマの胸の中は、なぜだか、安心した。震えていた俺の足も震えが治まる。

震えが治まったのを確認したのか、アマが言い聞かせるように言う。

「最初はみんな、怖いものです。なにも感じない人なんていないです」

「………」

「怖いと思いながらも、戦う大和さまのお姿はかっこよかったですよ。それとこれは一番にいいたいことなのですが」

アマは距離が少し離れていた、自身の顔を近づけ、俺の耳元で囁く。

「私のために怒り、戦ってくださり、ありがとうございます」

そして、俺の頬に軽い口づけをした。



「ありがとな。その…色々と」

「い、いえ」

「やめろ。顔を赤くするな。こっちが恥ずかしくなる」

「でも、その」

「いい加減、照れを辞めないと殴るぞ?」

「ありがとうございます!」

「……………」

「やめてください大和さま…。そんな目で見られたらゾクゾクしちゃいます」

より一層赤くし、テレを増すアマ。

……もうやだこいつ。

あれから、やっと自分の力で立てるようになった俺は、世話になったアマに礼をいいつつ、今後について考えていた。んあ?キス?姉ちゃんで慣れてるからどうとも思ってねーよ。
まずは戦についてだが、こればかりは慣れていくしかないだろう。
そうすればおのずと精神も鍛えられるはずだ。今回みたいな弱さを見せるようなこともないだろう。

次に、今回の戦についてだ。
正直、俺はまだ、今回の戦を俺が勝ったのかという確信を持ってない。
ゲームでなら、完勝や勝利または敗北といった文字が、ゲーム画面に映し出されて勝敗を見分けることができるのだが、いかんせんリアルでそんなことはない。しかも異世界の戦は今回が初めてで勝手を知らない。ここはアマに聞いておくべきだな。

「なあ、アマ?」

「なんですか?大和さま?」

「ナチュラルに頬を突き出すな。真面目な話だ」

俺の真面目という言葉を聞いてか、アマもまた、真剣になる。

「今回の戦…俺たちの勝ちでいいのか?」

「はい!それはもちろんですよ!今回は大和さまが敵の大名であるパールヴァティーを倒されましたので敵大名撃破により、こちらの勝利になります!それにほら、証拠と言ってはなんですが、さっきまであった境界線がなくなっていますよ?」

あーあれはやっぱり、境界線だったのか。
足元を確認のため見てみるが、境界線らしきものはなくなっている。

「勝利した場合は敵領地を自領地に吸収できるので領地が広くなります。そのため、境界線もそれに見合った広さに拡大されるんです!」

「そうなのか。ちなみにどれくらいの広さになった?ぱっと見渡す限り、境界線がないが…」

「はい。どれくらいかと言いますと」

アマが答えるよりさきに、一つの声がそれを防ぐ。

「お前たちの国は、国土面積、第3位にまでの領地になったぞ」

振り向くとそこには、大剣で己の体重を支えている銀髪の女がいた。

「それに伴い、お前の名は全国に轟くことだろうな」

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