天女×天姫×天使…天華統一

ハタケシロ

第10話 実力

「パール……パンティ?」

「パールヴァティーです!」

「言いづれぇな。パンティでいいだろ」

ヴァとか、日本人の俺には言いづらさMAXにもほどがある。
その分、パンティなら日本人の俺も言いなれている。

「なにをごちゃごちゃと言っておる?……ここはもう戦場なのだぞ?」

瞬間、背中に納めていた大剣を素早く抜き、俺とアマのちょうど間にその大剣を振り落す!

ゴバンっ!!!
という、石や土。いろいろなものを砕き割る音が響きわたる。
大剣を振り落した地面はクレーターが出来上がっていた。

「今のは見せしめだぞ?お主?こうなりたくないのなら降参しろ。さすれば、先ほどの無礼は許そう」

威圧的な言動で俺を脅す。銀髪の女。
細い腕で大剣を使うのも驚きなのに、それを使ってクレーターを作られるとなると俺のチキン精神が揺さぶられる。だが。

「冗談言うなよ。こんなんでこの俺が降参するはずないだろ」

「大和さま足が…」

静まれ俺の足……。
まだ、封印を解くときじゃない。

……ああ。怖いさ。むちゃくちゃ怖い。
大名になるとは言ったものの、俺はついさっきまで普通の高3だったんだぞ?
こんなリアルな戦国になれてねーんだよ!

くそくそくそくそくそくそくそくそくそくそくそくそくそくそくそくそくそくそくそくそくそくそくそくそくそくそくそくそくそ怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い。

ガチャン…。
俺のなかのギアが変わる音が聞こえた。

人間はある程度の恐怖の度数を超えると、ハイになるときがある。
それは……一種の覚醒だ。

「ハハハっ!小僧、震えておるではないか!さっきの威勢はどうしたんだ?ハハハまあよい。弄んでやろう」

持ち直していた大剣を俺に向かって、振りかざす。
角度から見て、俺の右腕を斬り落とす気だろう。

「アマっ!武器っ!!」

「は、はいっ!」

銀髪の女が大剣を振りかざす瞬間に俺は叫び、アマに武器を要求する。
いくら、この世界ではまだ力を確認していないが、ゲームでの俺の力を保有している今の俺でも、丸腰じゃ相手にもされない。

アマは、俺の要求に応えるように、何かをした。
瞬間、俺の目の前にはソフトボール大くらいの光が出現し、俺はその中に右手を突っ込む。
俺はその中で、何かを掴み、引っ張り出す。
俺の要求にすぐに対応できる。見てみろ、アマは無能なんかじゃない。


ガギンっ!!!!
俺の引っ張り出した武器と、銀髪の女の大剣がぶつかり合う。

俺の引っ張り出した武器。
それは、刀だった。
刀身は漆黒に輝き、刃もそれに準ずるように輝く。
漆黒の刀が、俺の右手に握られていた。

「さあ、やろうぜ、こっからが本番だ」

「ふんっ。急に眼の色を変えおって…。よかろう。我も本気でお主を葬ってやる」

ぶつかりあいからお互いに距離を取り、相手を睨み据える。

「アマ!どうすれば戦は勝ちになる!」

「敵総大将または大名の撃破です!もしくは本陣の制圧です!」

銀髪の女を倒さずに戦自体を終わらせようと思ったが、無理みたいだな。
どう見てもあいつが大名だろと思うし。
勝利条件じたいはゲームとほぼ同じか、敵本陣の制圧も含まれるとなると……。

「こいつらを一旦、薙ぎ払っておく必要があるな」

六畳一間の俺たちの国は、その全領地自体が本陣みたいなものだ。
敵国の兵士多数に囲まれているようじゃ、いつ落とされるか分からない。
そうなる前に、この雑魚どもを薙ぎ払っておく必要がある。

「アマ。頭を伏せておけ!犬みたいに地面を這いずってろ!得意だろ?」

「もちろんです!了解しました!ご主人様!」

アマに姿勢を低くさせた俺は、刀に力を込める。
さっきのぶつかり合いで感じることができた俺のこの世界での力なら、雑魚どもを薙ぎ払うのは容易なことだろう。
そして、どうすれば雑魚どもを簡単に薙ぎ払えるのかも俺には分かっている。いや、分かってしまう。
これが、アマからもらったこの世界での力なのだろう。

「いくぞ!伏せておけよ!アマっ!!」

力を溜めていた刀を一気に振りぬくと同時に俺自身も弧を描くように回転する。
そうすることで、360度、四方八方にいる雑魚兵士全員を薙ぎ払うことができる。
まあ、薙ぎ払うというよりは、吹き飛ばすといった方があってるかもしれないな。

「さすがに、お前を吹き飛ばすのはできねえか」

大剣でガードしたであろう銀髪の女は、周りにいた兵士のことなどは気にも留めない様子で悠然と俺を見据える。さっきと違うのは、もうその顔に、表情に、余裕がないところか。

「今のは波動の類…いや、ただの風圧…まあよい。なんにせよ」

銀髪の女はぶつぶつと独り言を言うと、俯いていた顔を上げ、凶器に満ちたお顔で言う。

「久方ぶりの好敵手よ……!」

銀髪の女はそういい終えると、片手で大剣を持ち上げ、それを俺に向け言う。

「さっきまで無礼を行っていたのは私のほうだったようだな。例を詫びる。ここからは我も本気になるゆえ、覚悟してもらおう」

大剣を両手に持ち替えて、銀髪の女は攻撃をする姿勢に入った。

それにしても今から、本気になるのはちょっと遅すぎはしないか?
俺はそう心で呟き、刀を振り上げる。

「この戦はこの一撃で終わりだ」

「なにを…」

銀髪の女が何かを言い終える前に、俺は刀を振り落した。
すざましい轟音とともに、俺の放った「斬撃」が女を襲う!

鞘に刀を納めるのと同時くらいに、俺の足元にあった、境界線と思われる線は消えていた。

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