俺の嫁はデレない異世界のお姫様
第15話悪夢の始まりは夜明けと共に
死者を蘇らすこと。
そんな話を私は馬鹿だったから実現させようとしていた。今と考えればありえない話なのかもしれないけど、それでも私はどうしても……。
もう一度でいいから、お父さんとお母さんと会いたかった。
「ココネ様、あなたは今何をなされようとしているのか、お分かりでしょうか?」
「いいの。これでお父さんとお母さんに出会えればそれで構わない」
「ココネ様!」
私がこの国の姫になった頃から専属で付いている側近のセレス。彼はどんな時でも私の我が儘を聞いてくれていた。でもこの時の彼はいつになく真剣な口調で、私がやろうとしている事に反対してきた。それでも私は引き下がることができない。
それは私の一つの切なる願い。
叶えられるとは到底思えないけど、それでも叶えたかった。
「私はお母さんとお父さんに会いたいの! だから……お願いだから邪魔しないで!」
「その方法が間違っているからわたくしは止めているんです! お願いですからやめてください!」
彼は最後の最後まで反対していたし、私も一度も止めるなんて言わなかった。何故なら二度と会えないと思っていたのに、それが可能だって知ったらやらないわけにはいかない。たとえそれが間違っていたとしても……。
◼︎◻︎◼︎◻︎◼︎◻︎
そして一年の月日が流れ、ついに念願だった『死者の扉』が完成した。これで後は特定のものを用意して、それを開く際に使用するだけだ。そうすれば私は……私は……。
「それ以上は危険ですココネ様!」
「どうして邪魔するのよセレス!? ようやく願いが叶うのよ」
「それが危ないと言っているんです。お願いですからココネ様、話を聞いてください」
「もういいわ! 全部私一人でやるから」
「あ、ちょっとココ……」
セレスを外に追い出し、私一人で全ての作業をする。
(もう誰にも頼らなくても、私一人でできる)
セレスがいなくたって、私一人の力できっとできる。
成功すればきっともう一度お父さんとお母さんに会えるんだから、少しくらいの代償は構わない。
「これでよし、あとはこれを読み上げれば……」
感動の瞬間が迫っていることに緊張して、体が震えだす。
「すぅ~はぁ~」
一度深呼吸して落ち着かせ、そして……。
「よし」
扉を開くための呪文を読み上げる。正直難しい言葉ばかりなんだけど、そんなの気にしない。これで一年以上続けてきた努力が報われる。
「さあ、開かれよ」
全てを読み終え、そしてゆっくりと扉が開かれる。
「お父さん、お母さん、今からずっと伝えたかった言葉を伝えるから待っててね……」
扉が完全に開かれ、中から現れたのは私の両親ではなく……。
「え、な、何よコイツ」
大量の人の形をした何か。あれはまさしく魔物に近い存在だろう。
ギロっ
「ひっ……」
人間ではない何かに睨まれ、私は小さな悲鳴をあげる。
(こ、怖い。どうしよう……)
体がガクガクと震えだし、その場で動けなくなってしまう。そんな私なんかお構いなしに、謎の物体は一歩ずつ私に寄ってくる。は、早く逃げないと。
「……オマエカ……コノトビラヲヒライタノハ……」
動かない体を何とかして動かそうとしていると、魔物の集団の一番前に立っている奴が私に話しかけてきた。
「わ、わ、私は……ただお父さんとお母さんに会いたくて……」
「コノトビラヲヒラキシモノニハ……ツミヲセオッテモラウ……」
「罪? 何よそ……れ……」
急に意識が遠のき始める。あ、あれ……私どうしたんだろ……。
バタン
私は遠のく意識に抗えず、その場で意識を失って倒れた。
「ワレラヲヨビシモノ……ソノダイショウハオオキケリ……」
■□■□■□
再び私が目を覚ましたときは、既に奴らの存在はなかった。残されていたのは開かれたままの扉と、私だけだった。
「あれ……私どうしたんだろ……」
さっき気を失ってからどれくらいの時間が経ったのだろうか? もしかして既に何日もこの場で倒れていた……とか?
「と、とりあえず部屋を出なきゃ……」
まずは現状確認のためにフラフラな身体で部屋を出る。城内で特に変わった所はない。外は明るいからどうやら今は朝らしい。扉を開いたのは確か夜だったので、意識を失っていたのはざっと一晩くらいだろうか。
「もしかして……あれは夢だったのかな?」
特になにも変わっていないところを見ると、あれは私が見たただの夢だったのかもしれないと思ってしまう。けどそんな考えは、少し歩いた先で会ったセレスの発言によって、打ち砕かれる。
「あ、ココネ様! ご無事でしたか!」
「うん。ちょっと気を失っていただけだから……。それより随分慌てているけど、何かあったの?」
「何かあったもなにも、大変なことが起きました。私達の国が……」
「え? それはどういう……」
「とにかく来てください!」
セレスに連れられて国のほとんどを見渡すことができる場所にでる。そしてそこに広がっていたのは……。
「何よこれ……」
ほとんど更地になってしまっている領土。人の姿もなにも見えない。あんなに緑豊かだったナルカディアの姿は今はどこにもなく、ただ目の前に広がっていたのは更地だった。
「ココネ様が気を失っている間のたった一晩で、我が領土はこんな姿になられてしまいました……」
「う、そ、でしょ……?」
たった一晩の間にまさかここまでなるなんてあり得ない。
(私がナルカディアを……)
「そのまさかなんですよ。恐らく隣国の方にも影響が出ていると思われます」
「一体何があった……のよ」
原因が何となく分かっている私は、セレスに恐る恐る尋ねる。
「大量に現れた魔物の襲撃です。多分ココネ様が開かれた扉から溢れ出した者たちでしょ」
「じゃ、じゃあこうなった原因は……」
「はい。ココネ様、あなたです」
そんな、私はただ会いたかっただけなのに。
たった一言ありがとうって言いたかっただけなのに,
それなのにどうして……どうして……。
どうして……。
「うわぁぁぁぁぁぁぁぁ」
泣き叫ぶ私を朝日が照らす。
それは新たな夜明け。
全てを闇に包む、悪夢の夜明け。
私はただ、泣き叫ぶ事しかできなかった。
そんな話を私は馬鹿だったから実現させようとしていた。今と考えればありえない話なのかもしれないけど、それでも私はどうしても……。
もう一度でいいから、お父さんとお母さんと会いたかった。
「ココネ様、あなたは今何をなされようとしているのか、お分かりでしょうか?」
「いいの。これでお父さんとお母さんに出会えればそれで構わない」
「ココネ様!」
私がこの国の姫になった頃から専属で付いている側近のセレス。彼はどんな時でも私の我が儘を聞いてくれていた。でもこの時の彼はいつになく真剣な口調で、私がやろうとしている事に反対してきた。それでも私は引き下がることができない。
それは私の一つの切なる願い。
叶えられるとは到底思えないけど、それでも叶えたかった。
「私はお母さんとお父さんに会いたいの! だから……お願いだから邪魔しないで!」
「その方法が間違っているからわたくしは止めているんです! お願いですからやめてください!」
彼は最後の最後まで反対していたし、私も一度も止めるなんて言わなかった。何故なら二度と会えないと思っていたのに、それが可能だって知ったらやらないわけにはいかない。たとえそれが間違っていたとしても……。
◼︎◻︎◼︎◻︎◼︎◻︎
そして一年の月日が流れ、ついに念願だった『死者の扉』が完成した。これで後は特定のものを用意して、それを開く際に使用するだけだ。そうすれば私は……私は……。
「それ以上は危険ですココネ様!」
「どうして邪魔するのよセレス!? ようやく願いが叶うのよ」
「それが危ないと言っているんです。お願いですからココネ様、話を聞いてください」
「もういいわ! 全部私一人でやるから」
「あ、ちょっとココ……」
セレスを外に追い出し、私一人で全ての作業をする。
(もう誰にも頼らなくても、私一人でできる)
セレスがいなくたって、私一人の力できっとできる。
成功すればきっともう一度お父さんとお母さんに会えるんだから、少しくらいの代償は構わない。
「これでよし、あとはこれを読み上げれば……」
感動の瞬間が迫っていることに緊張して、体が震えだす。
「すぅ~はぁ~」
一度深呼吸して落ち着かせ、そして……。
「よし」
扉を開くための呪文を読み上げる。正直難しい言葉ばかりなんだけど、そんなの気にしない。これで一年以上続けてきた努力が報われる。
「さあ、開かれよ」
全てを読み終え、そしてゆっくりと扉が開かれる。
「お父さん、お母さん、今からずっと伝えたかった言葉を伝えるから待っててね……」
扉が完全に開かれ、中から現れたのは私の両親ではなく……。
「え、な、何よコイツ」
大量の人の形をした何か。あれはまさしく魔物に近い存在だろう。
ギロっ
「ひっ……」
人間ではない何かに睨まれ、私は小さな悲鳴をあげる。
(こ、怖い。どうしよう……)
体がガクガクと震えだし、その場で動けなくなってしまう。そんな私なんかお構いなしに、謎の物体は一歩ずつ私に寄ってくる。は、早く逃げないと。
「……オマエカ……コノトビラヲヒライタノハ……」
動かない体を何とかして動かそうとしていると、魔物の集団の一番前に立っている奴が私に話しかけてきた。
「わ、わ、私は……ただお父さんとお母さんに会いたくて……」
「コノトビラヲヒラキシモノニハ……ツミヲセオッテモラウ……」
「罪? 何よそ……れ……」
急に意識が遠のき始める。あ、あれ……私どうしたんだろ……。
バタン
私は遠のく意識に抗えず、その場で意識を失って倒れた。
「ワレラヲヨビシモノ……ソノダイショウハオオキケリ……」
■□■□■□
再び私が目を覚ましたときは、既に奴らの存在はなかった。残されていたのは開かれたままの扉と、私だけだった。
「あれ……私どうしたんだろ……」
さっき気を失ってからどれくらいの時間が経ったのだろうか? もしかして既に何日もこの場で倒れていた……とか?
「と、とりあえず部屋を出なきゃ……」
まずは現状確認のためにフラフラな身体で部屋を出る。城内で特に変わった所はない。外は明るいからどうやら今は朝らしい。扉を開いたのは確か夜だったので、意識を失っていたのはざっと一晩くらいだろうか。
「もしかして……あれは夢だったのかな?」
特になにも変わっていないところを見ると、あれは私が見たただの夢だったのかもしれないと思ってしまう。けどそんな考えは、少し歩いた先で会ったセレスの発言によって、打ち砕かれる。
「あ、ココネ様! ご無事でしたか!」
「うん。ちょっと気を失っていただけだから……。それより随分慌てているけど、何かあったの?」
「何かあったもなにも、大変なことが起きました。私達の国が……」
「え? それはどういう……」
「とにかく来てください!」
セレスに連れられて国のほとんどを見渡すことができる場所にでる。そしてそこに広がっていたのは……。
「何よこれ……」
ほとんど更地になってしまっている領土。人の姿もなにも見えない。あんなに緑豊かだったナルカディアの姿は今はどこにもなく、ただ目の前に広がっていたのは更地だった。
「ココネ様が気を失っている間のたった一晩で、我が領土はこんな姿になられてしまいました……」
「う、そ、でしょ……?」
たった一晩の間にまさかここまでなるなんてあり得ない。
(私がナルカディアを……)
「そのまさかなんですよ。恐らく隣国の方にも影響が出ていると思われます」
「一体何があった……のよ」
原因が何となく分かっている私は、セレスに恐る恐る尋ねる。
「大量に現れた魔物の襲撃です。多分ココネ様が開かれた扉から溢れ出した者たちでしょ」
「じゃ、じゃあこうなった原因は……」
「はい。ココネ様、あなたです」
そんな、私はただ会いたかっただけなのに。
たった一言ありがとうって言いたかっただけなのに,
それなのにどうして……どうして……。
どうして……。
「うわぁぁぁぁぁぁぁぁ」
泣き叫ぶ私を朝日が照らす。
それは新たな夜明け。
全てを闇に包む、悪夢の夜明け。
私はただ、泣き叫ぶ事しかできなかった。
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