俺の嫁はデレない異世界のお姫様
第32話カグヤの正体ー序章ー
結婚式から一夜明け、ココネの夫になった俺は、朝から何故か由奈と一緒に隣国に買い出しに出かけていた。
「で、何が必要なの? 私何にも教えてもらっていないんだけど」
「えっと、主に農地開拓に必要なものだよ。野菜の種とか」
「え? もうあれだけ作れば充分じゃないの?」
「ああ。大体はできているんだけど、あの我が儘姫がもっとほしいって言うからさ」
しかも今さっき突然に。相変わらず俺をこき使うよなあいつは。
『昨日は一緒に寝たんだから、それくらいの仕事はしなさい!』
そんな事言っていたけど、言いだしっぺはココネだ。もう少し人の扱いというのをあいつには学んでほしい所だ。
「ふ~ん、昨日一緒に寝たからその代償は払いなさってことね。私が知らないところで、そんな事やっているなんて知らなかったわ」
「んなつ! そ、そんな訳ないだろ!」
「その動揺の仕方は、やっぱりそうなんだ」
「ち、違うっての」
あれがもしバレてしまったら確実に俺は由奈に殺されてしまう。ていうか、確実にバレているよなこれ。でも何としても誤魔化さなければ。
「まあ、圭ちゃんが何をしようが、私の知ったことないんだけど」
「じゃあわざわざ言うなよ」
「でもやっぱい無視できないのよね。これでも幼馴染だし、まさか初日からそんな不潔なことしないかなって思ったから聞いたんだけど。やっぱり圭ちゃんってそういう人間だったんだね」
「勘違いしないでくれ! 俺は決してそういう人間じゃないんだ」
「さあ買い物買い物っと」
「あ、勝手に行くなよ! まだ話が……てか、買い物するのは俺なんだけど!」
由奈の調子がおかしいけど、どうしたんだろうか。昨日の結婚式の時もそうだったけど、どこか浮かない顔をしていたし、もしかして何かあったんだろうか? それだったら連れてきた俺にも責任があるだろうし、この先彼女の身に何かあったら、俺はどうすればいいのだろうか?
今の俺にはその疑問の答えなんて見つけられるはずもなかった。
■□■□■□
買い物を終えたあと、由奈がお腹が減ったというので、帰りにちょっとお洒落な喫茶店のような場所にに寄っていくことにした。全体が木で出来ていて、ここでの飲食はなんだかとても居心地がいい。
「むぅ」
だというのに買い物を終えたあともやはりご機嫌斜めの由奈。買い出しの為とはいえ、久しぶりに二人で出かけたというのに、この調子だとこっちの空気が重くなってしまう。ここは思い切って聞くべきなのだろうか? それとも……。
『あの(さ)圭ちゃん(由奈)」
二人共同じような事を考えていたのか、同タイミングで声を発する。
「け、圭ちゃんから先に言っていいよ」
「ゆ、由奈でいいよ」
まるでぎこちない関係の二人の姿を現しているかのような会話をする二人。ここはあえて由奈から話してもらえると、こっちとしては結構楽になれるんだけどな。
「じゃ、じゃあ私から言うね。私圭ちゃんに話しておきたいことがあるの」
「話しておきたいこと?」
「実は昨日の結婚式で、私ある人に話しかけられたの」
「ある人?」
確か昨日はココネが言っていた通り、異国の貴族に人とかが来ていたらしいが、由奈の存在を知っている人がいるはずがない。そんな彼女に話しかけるのなんて、ちょっとおかしくないか?
「私はこの世界に来たばかりなのに、どうして話しかけてくるのかなって不思議だったんだけど、どうやら私の事を知っていたらしいの」
「由奈の事を? この城の人とか?」
「ううん。一度も見たことがないから、本当に知らない人」
「だったらもっと謎だな。俺ならともかくお前に話しかけるなんて、とことん変な奴だな。で、どんな会話をしたんだ?」
「それが会話をしたとかじゃなくて、ただ一言こんな事言われたの?」
「一言?」
「『カグヤは危険な人物だ。お前らが匿っている間に必ず災厄が訪れる』だって。カグヤって、確か寝てばかりの子だよね」
(カグヤが危険?)
そもそもの話、カグヤの存在を知っているのは、ナルカディア城にいる俺達しか知らない。それを知っているという事は、何かしらカグヤと関わりがある人物という事だけど、そもそも彼女が何者なのかさえ把握できていない。つまりそれを知る人物も何か秘密があるという事だ。
(それに昨日のココネの仮説を入れたら……)
「圭ちゃん? どうかしたの?」
「あ、いや、悪い。考え事してた」
「カグヤって女の子の事?」
「ああ。そいつが言っていることが仮に本当なら、一つだけ彼女の事で言えることがある」
「言えること?」
昨日のココネの言葉をそのまま借りるなら、彼女は間違いなく、
「カグヤは……恐らく五年前のナルカディアの悲劇が生み出した、魔物だ」
つまりココネが生み出してしまった魔物である。
けどこれは、あくまで昨日ココネが立てたある仮説を踏まえた上での話だ。実際どうなのかは分からない。それは直接本人に聞くか、それとも由奈が会ったという謎の人物に聞くしかない。
「魔物……前に圭ちゃんが話していたやつ?」
「ああ。あれは恐らく世界を脅かすものだ。実際に俺も遭遇したことがある。あれも人間に近い存在だった」
「じゃあどう見ても人間のカグヤって子も?」
「可能性がないとは言えない」
そしてそれを保護している俺達は、何よりも危険だという事だ。
■□■□■□
その日の晩、俺はまたココネと同じベッドで寝ていた(相変わらず背を向けて寝ているけど)。
「なあココネ、起きてるか?」
「起きてるわよ」
「昨日お前が話した事覚えているか?」
「カグヤの事かしら」
「ああ。その件について俺からもお前に話しておきたいことがある」
「あんたから?」
「ああ」
そこで昼の由奈の話を話す。それを踏まえた上で、俺自身が立てた仮説を彼女に話す。それに対して彼女は、
「やっぱりあんたもそう考えるわよね。あの子と出会った時からおかしいとは思っていたの。いきなり海岸で倒れいるなんて、不自然すぎるもの」
「不自然?」
「だってあの海の先に、何も島がないのよ」
「え?」
それは知らなかった。あの海岸の先に他の島がないと言うなら、確かに不自然だ。どこからか流れ着いたなら自然だけど、島がないというならどこから流れてきたのか謎である。これで益々仮説が核心に近づいてきた。
「なあココネ、これからどうするべきだと思う?」
「もうここまできたら。本人にしか聞くしかないんじゃない? もしくはその男に合うしかないでしょ」
「やっぱりそうなるよな。でも、あいつ口を開いてくれるか?」
「多分無理よ。今まで喋った試しないでしょ?」
「だよな」
ずっと寝たきりの彼女が、いきなり喋るなんて思えない。今は待つ以外の選択肢はないって事になる。
「なあココネ、もしこの先何か起きたとしたら、その時はどうする?」
「何か起きたら……ね。多分私は私なりの責任を取らなきゃいけないと思う。だって今回の件、全て私のせいでもあるんだから」
責任か……。取りたいって気持ちは痛いほど分かるけど、それで死んでもらわれては困る。だったら俺がする事は一つしかない。
「なるほどな……。だったら俺がやる事は一つしかないな」
「何よ」
「俺は何があってもお前を守るって事だよ」
これ以外に選択肢なんてない。
「んなっ! い、い、いきなり何言い出すのよ」
「だってそうだろ? 前にも言ったとおり、お前の重みは俺も抱える。だからお前がどんなに危険な目にあっても、必ず守り通してみせる」
「そ、そんな事言っても何もでないわよ」
「お前は本当相変わらずだな」
素直なのか、そうじゃないのか。
「まあ、細かいことはまたゆっくり考えるとして、もう寝るか。おやすみ」
「おやすみ」
それ以降会話はしなかったものの、俺とココネはまともに寝れていなかったと思う。何せ保護した人物が魔物だなんて信じられない。証拠が何もないとは言え、ほぼ核心に近い。だから少しずつ俺達は恐怖を覚え始めた。何せ相手は大量の魔物だ。そいつらから果たしてこの国を守ることができるのか、すごく不安だ。でもだからといって恐れていたら何にも始まらない。国を変えるためには、踏み出さなけらばいけない恐怖から抜け出す一歩を。
「で、何が必要なの? 私何にも教えてもらっていないんだけど」
「えっと、主に農地開拓に必要なものだよ。野菜の種とか」
「え? もうあれだけ作れば充分じゃないの?」
「ああ。大体はできているんだけど、あの我が儘姫がもっとほしいって言うからさ」
しかも今さっき突然に。相変わらず俺をこき使うよなあいつは。
『昨日は一緒に寝たんだから、それくらいの仕事はしなさい!』
そんな事言っていたけど、言いだしっぺはココネだ。もう少し人の扱いというのをあいつには学んでほしい所だ。
「ふ~ん、昨日一緒に寝たからその代償は払いなさってことね。私が知らないところで、そんな事やっているなんて知らなかったわ」
「んなつ! そ、そんな訳ないだろ!」
「その動揺の仕方は、やっぱりそうなんだ」
「ち、違うっての」
あれがもしバレてしまったら確実に俺は由奈に殺されてしまう。ていうか、確実にバレているよなこれ。でも何としても誤魔化さなければ。
「まあ、圭ちゃんが何をしようが、私の知ったことないんだけど」
「じゃあわざわざ言うなよ」
「でもやっぱい無視できないのよね。これでも幼馴染だし、まさか初日からそんな不潔なことしないかなって思ったから聞いたんだけど。やっぱり圭ちゃんってそういう人間だったんだね」
「勘違いしないでくれ! 俺は決してそういう人間じゃないんだ」
「さあ買い物買い物っと」
「あ、勝手に行くなよ! まだ話が……てか、買い物するのは俺なんだけど!」
由奈の調子がおかしいけど、どうしたんだろうか。昨日の結婚式の時もそうだったけど、どこか浮かない顔をしていたし、もしかして何かあったんだろうか? それだったら連れてきた俺にも責任があるだろうし、この先彼女の身に何かあったら、俺はどうすればいいのだろうか?
今の俺にはその疑問の答えなんて見つけられるはずもなかった。
■□■□■□
買い物を終えたあと、由奈がお腹が減ったというので、帰りにちょっとお洒落な喫茶店のような場所にに寄っていくことにした。全体が木で出来ていて、ここでの飲食はなんだかとても居心地がいい。
「むぅ」
だというのに買い物を終えたあともやはりご機嫌斜めの由奈。買い出しの為とはいえ、久しぶりに二人で出かけたというのに、この調子だとこっちの空気が重くなってしまう。ここは思い切って聞くべきなのだろうか? それとも……。
『あの(さ)圭ちゃん(由奈)」
二人共同じような事を考えていたのか、同タイミングで声を発する。
「け、圭ちゃんから先に言っていいよ」
「ゆ、由奈でいいよ」
まるでぎこちない関係の二人の姿を現しているかのような会話をする二人。ここはあえて由奈から話してもらえると、こっちとしては結構楽になれるんだけどな。
「じゃ、じゃあ私から言うね。私圭ちゃんに話しておきたいことがあるの」
「話しておきたいこと?」
「実は昨日の結婚式で、私ある人に話しかけられたの」
「ある人?」
確か昨日はココネが言っていた通り、異国の貴族に人とかが来ていたらしいが、由奈の存在を知っている人がいるはずがない。そんな彼女に話しかけるのなんて、ちょっとおかしくないか?
「私はこの世界に来たばかりなのに、どうして話しかけてくるのかなって不思議だったんだけど、どうやら私の事を知っていたらしいの」
「由奈の事を? この城の人とか?」
「ううん。一度も見たことがないから、本当に知らない人」
「だったらもっと謎だな。俺ならともかくお前に話しかけるなんて、とことん変な奴だな。で、どんな会話をしたんだ?」
「それが会話をしたとかじゃなくて、ただ一言こんな事言われたの?」
「一言?」
「『カグヤは危険な人物だ。お前らが匿っている間に必ず災厄が訪れる』だって。カグヤって、確か寝てばかりの子だよね」
(カグヤが危険?)
そもそもの話、カグヤの存在を知っているのは、ナルカディア城にいる俺達しか知らない。それを知っているという事は、何かしらカグヤと関わりがある人物という事だけど、そもそも彼女が何者なのかさえ把握できていない。つまりそれを知る人物も何か秘密があるという事だ。
(それに昨日のココネの仮説を入れたら……)
「圭ちゃん? どうかしたの?」
「あ、いや、悪い。考え事してた」
「カグヤって女の子の事?」
「ああ。そいつが言っていることが仮に本当なら、一つだけ彼女の事で言えることがある」
「言えること?」
昨日のココネの言葉をそのまま借りるなら、彼女は間違いなく、
「カグヤは……恐らく五年前のナルカディアの悲劇が生み出した、魔物だ」
つまりココネが生み出してしまった魔物である。
けどこれは、あくまで昨日ココネが立てたある仮説を踏まえた上での話だ。実際どうなのかは分からない。それは直接本人に聞くか、それとも由奈が会ったという謎の人物に聞くしかない。
「魔物……前に圭ちゃんが話していたやつ?」
「ああ。あれは恐らく世界を脅かすものだ。実際に俺も遭遇したことがある。あれも人間に近い存在だった」
「じゃあどう見ても人間のカグヤって子も?」
「可能性がないとは言えない」
そしてそれを保護している俺達は、何よりも危険だという事だ。
■□■□■□
その日の晩、俺はまたココネと同じベッドで寝ていた(相変わらず背を向けて寝ているけど)。
「なあココネ、起きてるか?」
「起きてるわよ」
「昨日お前が話した事覚えているか?」
「カグヤの事かしら」
「ああ。その件について俺からもお前に話しておきたいことがある」
「あんたから?」
「ああ」
そこで昼の由奈の話を話す。それを踏まえた上で、俺自身が立てた仮説を彼女に話す。それに対して彼女は、
「やっぱりあんたもそう考えるわよね。あの子と出会った時からおかしいとは思っていたの。いきなり海岸で倒れいるなんて、不自然すぎるもの」
「不自然?」
「だってあの海の先に、何も島がないのよ」
「え?」
それは知らなかった。あの海岸の先に他の島がないと言うなら、確かに不自然だ。どこからか流れ着いたなら自然だけど、島がないというならどこから流れてきたのか謎である。これで益々仮説が核心に近づいてきた。
「なあココネ、これからどうするべきだと思う?」
「もうここまできたら。本人にしか聞くしかないんじゃない? もしくはその男に合うしかないでしょ」
「やっぱりそうなるよな。でも、あいつ口を開いてくれるか?」
「多分無理よ。今まで喋った試しないでしょ?」
「だよな」
ずっと寝たきりの彼女が、いきなり喋るなんて思えない。今は待つ以外の選択肢はないって事になる。
「なあココネ、もしこの先何か起きたとしたら、その時はどうする?」
「何か起きたら……ね。多分私は私なりの責任を取らなきゃいけないと思う。だって今回の件、全て私のせいでもあるんだから」
責任か……。取りたいって気持ちは痛いほど分かるけど、それで死んでもらわれては困る。だったら俺がする事は一つしかない。
「なるほどな……。だったら俺がやる事は一つしかないな」
「何よ」
「俺は何があってもお前を守るって事だよ」
これ以外に選択肢なんてない。
「んなっ! い、い、いきなり何言い出すのよ」
「だってそうだろ? 前にも言ったとおり、お前の重みは俺も抱える。だからお前がどんなに危険な目にあっても、必ず守り通してみせる」
「そ、そんな事言っても何もでないわよ」
「お前は本当相変わらずだな」
素直なのか、そうじゃないのか。
「まあ、細かいことはまたゆっくり考えるとして、もう寝るか。おやすみ」
「おやすみ」
それ以降会話はしなかったものの、俺とココネはまともに寝れていなかったと思う。何せ保護した人物が魔物だなんて信じられない。証拠が何もないとは言え、ほぼ核心に近い。だから少しずつ俺達は恐怖を覚え始めた。何せ相手は大量の魔物だ。そいつらから果たしてこの国を守ることができるのか、すごく不安だ。でもだからといって恐れていたら何にも始まらない。国を変えるためには、踏み出さなけらばいけない恐怖から抜け出す一歩を。
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