俺の嫁はデレない異世界のお姫様

りょう

第41話料亭『ロリータ』開店!

 リタがナルカディアにやって来てから、早一週間近くが経つ。この日俺達はある物が完成したと聞いたので、早速それを見にやって来ていた。

「料亭」

「ロリータぁ?」

 そう、俺がこの世界に戻ってきた当初から進んでいた料亭の建設。外装はほとんどできていたが、内装はまだまだだったらしく、お披露目まで時間がかかってしまったらしい。そして今日、ついに完成したらしいが、その店の名前があまりにも変だったので、ココネと俺は二人してツッコミを入れた。

 何だよ料亭『ロリータ』って。どう考えても一部の人間にしか受けないだろそれ。

「どう? 私の新しいお店」

あまりに酷い店名に二人で唖然としていると、そこの亭主になるリタが店から顔を出してきた。

「どうも何も、この店名はどう考えてもおかしいだろ」

「別に私がつけたんじゃないもん。あの執事さんがつけてくれたもんだもん」

 執事ってまさかとは思うけど、セレス? あの執事、俺よりも悪趣味じゃないか(そもそも俺はそんな趣味持っていないけど)。

「ここの執事は一体どうなってるんだよ」

「元からそういう性格してそうな気もしていたけど、まさかここまでなんて私も予想外よ

「もう二人共、文句ばかり言ってないで入ってよぉ」

 二人でセレスに対して呆れていると、リタがまるで親を引っ張って連れ出そうとする子供のように、俺とココネを連れて行こうとするが、当然力がないので引っ張れない。

「うーん動かな~い」

「小さい頃からお前を育てているようなものだから、そういう性癖がついたんだよきっと」

「嫌! 何よそれ」

「はーやーくーいこうよー」

 そんなリタを無視して会話を続ける二人。勿論リタに気づいていないわけではなく、その光景が面白いので、あえて無視して彼女一人に頑張ってもらう。

「まあとにかく、あの執事が謎だらけなのは確かだな」

「それは言えてるかも。私が小さい頃から居たような気がする」

「ふぇーん、どうして無視するのー」

 無視すること五分、とうとう泣き出してしまったので流石にいじめるのをやめる。リタはからかわれた事にショックを受けてしまったのか、それ以降ずっといじけて、料亭の紹介もとい、本日の夕飯全てが雑な出来になってしまった。

「ちょっとやり過ぎたな」

「やり過ぎたわね」

その日の晩、俺とココネは静かにリタに謝罪したのであった。

■□■□■□
 それから更に三日後。王国祭の準備が着々と進む中、本日料亭『ロリータ』のオープン初日を迎えた。あまりに早すぎるオープンのような気もするけど、リタが皆に早く食べさせてあげたいと言い出したので、三日後の今日オープンすることになった。

「それで、だ。何で俺達がこんな格好をしているんだ?」

「それはあんた、初日ぐらい私達が働かなきゃ駄目でしょ」

「お前はメイド服なのにか?」

「勿論メイド服は気に食わないけど、それくらいの恩返しはしないと」

「そっか」

 で、国王と姫である俺達は、初日の視察の為だけに来店する予定だったけれど、何と一日ここで働くことに。お金はこっちが払う立場だというのに、俺達が稼いでどうするんだよ。ちなみに服装はココネがメイド服、俺はウェイターの格好というちょっとアンバランスな組み合わせなのだが、今はそれしかないのだから仕方がない。

「どうだリタ、調子は」

 開店までもう少しまで迫って来る中、俺は厨房で一人でせっせと働くリタに声をかけてみた。

「うん、料理もバッチシだし、いい初日を迎えられそう」

 笑顔でそう答えるリタ。どうやら心配はないようだ。

「お前は緊張とかしていないのか?」

「緊張? そんなのしないよ私は。いつも通りの料理を作って、それをお客さんに楽しんでもらうだけなんだから、何にも怖いことないもん」

「へえ、そういう所だけは大人なんだな」

「だけって酷いよ。私は何度も言うけど大人なんだから」

「そういう所が子供なんだってば」

 色々とこっちはこっちで準備しながら、リタの料理風景を眺める。包丁の使い方といい、鍋の使い方といい、こんなに小さい子供ができるような手捌きには全く見えない。これが本物のプロというやつなのだろうか。

(信じられないけど、腕前は確かなんだな)

 この前食べた料理の味といい、今の調理風景といい、ココネが言っていた通りだった。でもどうしてだろう。彼女は時々悲しそうな目をしている。

(もしかしてお父さんとお母さんを思い出しているからかな)

 行方不明の両親を探しながらコックを続ける彼女。その姿はどことなく、儚げだった。

「ケイイチ、そろそろ開店よ!」

 ボーッと一人で考え事をしていると、ホールの方からココネの声がする。気づかないうちに開店五分前になっていたらしい。

「ほら、リタも行くぞ」

「え、私は料理があるから……」

「数分で終わるから」

 リタも連れてホールにでる。集まっているのは俺とココネとリタの三人。今は少ないけど、いつかはこの店も大きなものになって、この国の名店になるに違いない。

 そう、努力はいつかきっと叶うのだから。

「うっし、全員揃ったな」

「早くしなさいケイイチ! あんたが一言言いたいって言ったんでしょ」

「おっとそうだった。じゃあ、一言だけ」

 息を吸って、俺は三人に聞こえるようにこう言った。

「今日は料亭『ロリータ』オープン日。皆頑張るぞ!」

『おー!』

 こうしてリタによって作られた料亭『ロリータ』がこの晴れた日に、無事オープンするのであった。

 ていうか名前、このままでいいのか?
 

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