俺の嫁はデレない異世界のお姫様
第52話時間をかけて少しずつ
午後からはというと、ちょっとしたステージをしたり、ここに来ているお客さんが参加できるような催しものばかりだった。当然俺もそのステージに立ったりして、盛り上げていたわけだけど、
「なあココネ、いくらなんでもこれはやりすぎなんじゃ……」
何故か俺は女装させられて立たされることになってしまった。
「一番盛り上がりそうだからいいじゃない。国の一大イベントなんだから、そのあたりはしっかりしないいとね。ぶふっ」
「今お前絶対に笑ったよな! お前が楽しんでいるだけだろ絶対」
「さあ?」
「さあじゃないだろ!」
どうして俺は国王祭で、男として大切な何かを失わなければならないんだ。
だが勿論やらないわけにはいかないので、俺は女装してステージへ。その後のことは……察してほしい。
「俺は二度とこんな事やらないからな!」
「まあまあ、楽しかったから、ぶふっ、いいじゃない、ぶふっ」
「今度はお前が男装させてやろうか?」
「ごめんなさい、もうしません」
そんなちょっとした(?)ハプニングがあったりと、午後もなかなか目白押しのイベントばかりが続いていたのだが、
(リタ来ないな。やっぱり無理があったか……)
王国祭も残り時間もそんなにない中で、まだリタは来ていない。由奈は果たしてうまくやってくれているのだろうか?
(信じて待つしかないよな)
俺達には何もできない以上、全ては由奈の手にかかっている。今まで彼女に何度も支えられてきた俺が保証できる。
「頼むぞ由奈」
だがその願いも虚しく、閉会式までリタの姿を俺は見ることはなかった。
■□■□■□
「本日は楽しんでいただけだでしょうか? 私達もこうした素晴らしいイベントを開催できたのはすごく誇りに思います。今後もこの国は……」
閉会式。相変わらずこういった場での挨拶がうまいココネの話を聞きながら、俺はリタが顔を出さなかったことにショックを受けていた。
(少しでも元気を出してほしいから、由奈に頼んだんだけど……)
やはりそう簡単にうまくいくような話ではないという事らしい。無理にこさせたところで逆効果だろうし、由奈にも無理やり呼んで来いとまで言っていない。
(そう簡単にトラウマは消えないって事か)
どうやらリタを外に出すのは、かなり先の話になるのかもしれない。
「何落胆してるの圭ちゃん」
己の非力さに絶望していると、背後から声がした。
「何ってそれはお前……って由奈、お前どうしてここに?」
その声の主はリタを呼びに行ってくれていた由奈だった。
「どうしても何も、約束ちゃんと守ったのよちゃんと」
「守ったってお前、リタはどこにもいないじゃないか」
彼女周辺を見回しても、その気配は全く見当たらない。これのどこが約束を守ったというのだろうか?
「ちっちっち、私を舐めてもらったら困るわよ」
「いやいや、どこをどう見てもいる気配がしないって」
「この場には……でしょ?」
「それはどういう意味……あっ」
由奈の言葉の意味をさっぱり理解できない俺は、もう少し辺りを見回してみる。するとある場所に、一つ小さな人影があるのが見えた。そう、その場所は今日俺が使っていたあのカレーの販売所。そこで一人、ひっそりと料理をしている一人の少女がいた。
「リタ!」
俺は閉会式中にも関わらず、慌てて彼女の元へと急ぐ。そんな俺に気づいたのか、リタは慌てて料理をする手を止めて何故か中へ隠れてしまった。俺もそれを追って中に入る。
「はぁ……はぁ……。何で逃げるんだよリタ」
「だって、は、恥ずかしかったから」
こちらに背を向けたまま話すリタ。果たして何が恥ずかしいのだろうか? 俺にはちょっと分からない。
「もう傷は大丈夫なのか?」
「うん。ユナお姉ちゃんが看病してくれていたから」
「へえ、そうなんだ」 
「だ、だからね、わ、私もいつまでも閉じこもってはいられなかったんだけど、どうしてもその勇気が……」
「そっか。でも今はこうして出てこられたんだから、何にも気にする必要なんかないぞ」
「……え? 怒らないの? 私皆に迷惑かけていたのに」
「誰もお前を怒ったりしないさ。こうしてお前がまた元気を出して料理をしてくれるならそれでいい」
何だか半分告白じみた言葉になってしまったが、俺は……いや俺達は一切彼女を責めることはしない。何故なら彼女は被害者で巻き込んでしまった俺達に責任がある。だから彼女がこうして元気になってくれたのはすごくありがたいし、この先も料理をしてくれるならもっとありがたい。
「そうね、ケイイチの言う通りよちびっ子。誰もあんたを責めたりしないわよ」
俺の背後から声が聞こえる。どうやら挨拶を終えたココネが、わざわざやって来たらしい。
「ココネお姉ちゃん……。でも私、まだすぐに料理できないけど、それでもいいの?」
それに反応して、ようやくリタがこちらを見てくれる。その彼女の目には、嬉しさからなのか、それとも悲しさからなのか一筋の涙が流れていた。
「そんなの誰だって分かっているわよ。一度抱えた傷はすぐには癒えない。少しずつでいいから頑張りなさい。……私も頑張るから」
古傷を抱えているからこそ言える彼女の言葉。それはすぐには癒えないだろうけど、時間をかけて少しずつ確実に癒していけばいい。いくら時間がかかったって、周りにはそれを支えてくれる人達がいるのだから。
「それよりもケイイチ、閉会式中に抜け出すなんていい度胸しているわね。それでも国王なの?」
「そういうお前だって同じだろ」
「私はわざわざあんたを呼びに来たのよ。ついでにちびっ子も」
「リタも?」
あの場所からリタの姿でも見えていたのだろうか? それにしたって彼女を呼ぶためのイベントは終了してしまったわけだし、果たしてどうするつもりなのだろうか?
「まだまだ終わってないわよ、王国祭は」
「なあココネ、いくらなんでもこれはやりすぎなんじゃ……」
何故か俺は女装させられて立たされることになってしまった。
「一番盛り上がりそうだからいいじゃない。国の一大イベントなんだから、そのあたりはしっかりしないいとね。ぶふっ」
「今お前絶対に笑ったよな! お前が楽しんでいるだけだろ絶対」
「さあ?」
「さあじゃないだろ!」
どうして俺は国王祭で、男として大切な何かを失わなければならないんだ。
だが勿論やらないわけにはいかないので、俺は女装してステージへ。その後のことは……察してほしい。
「俺は二度とこんな事やらないからな!」
「まあまあ、楽しかったから、ぶふっ、いいじゃない、ぶふっ」
「今度はお前が男装させてやろうか?」
「ごめんなさい、もうしません」
そんなちょっとした(?)ハプニングがあったりと、午後もなかなか目白押しのイベントばかりが続いていたのだが、
(リタ来ないな。やっぱり無理があったか……)
王国祭も残り時間もそんなにない中で、まだリタは来ていない。由奈は果たしてうまくやってくれているのだろうか?
(信じて待つしかないよな)
俺達には何もできない以上、全ては由奈の手にかかっている。今まで彼女に何度も支えられてきた俺が保証できる。
「頼むぞ由奈」
だがその願いも虚しく、閉会式までリタの姿を俺は見ることはなかった。
■□■□■□
「本日は楽しんでいただけだでしょうか? 私達もこうした素晴らしいイベントを開催できたのはすごく誇りに思います。今後もこの国は……」
閉会式。相変わらずこういった場での挨拶がうまいココネの話を聞きながら、俺はリタが顔を出さなかったことにショックを受けていた。
(少しでも元気を出してほしいから、由奈に頼んだんだけど……)
やはりそう簡単にうまくいくような話ではないという事らしい。無理にこさせたところで逆効果だろうし、由奈にも無理やり呼んで来いとまで言っていない。
(そう簡単にトラウマは消えないって事か)
どうやらリタを外に出すのは、かなり先の話になるのかもしれない。
「何落胆してるの圭ちゃん」
己の非力さに絶望していると、背後から声がした。
「何ってそれはお前……って由奈、お前どうしてここに?」
その声の主はリタを呼びに行ってくれていた由奈だった。
「どうしても何も、約束ちゃんと守ったのよちゃんと」
「守ったってお前、リタはどこにもいないじゃないか」
彼女周辺を見回しても、その気配は全く見当たらない。これのどこが約束を守ったというのだろうか?
「ちっちっち、私を舐めてもらったら困るわよ」
「いやいや、どこをどう見てもいる気配がしないって」
「この場には……でしょ?」
「それはどういう意味……あっ」
由奈の言葉の意味をさっぱり理解できない俺は、もう少し辺りを見回してみる。するとある場所に、一つ小さな人影があるのが見えた。そう、その場所は今日俺が使っていたあのカレーの販売所。そこで一人、ひっそりと料理をしている一人の少女がいた。
「リタ!」
俺は閉会式中にも関わらず、慌てて彼女の元へと急ぐ。そんな俺に気づいたのか、リタは慌てて料理をする手を止めて何故か中へ隠れてしまった。俺もそれを追って中に入る。
「はぁ……はぁ……。何で逃げるんだよリタ」
「だって、は、恥ずかしかったから」
こちらに背を向けたまま話すリタ。果たして何が恥ずかしいのだろうか? 俺にはちょっと分からない。
「もう傷は大丈夫なのか?」
「うん。ユナお姉ちゃんが看病してくれていたから」
「へえ、そうなんだ」 
「だ、だからね、わ、私もいつまでも閉じこもってはいられなかったんだけど、どうしてもその勇気が……」
「そっか。でも今はこうして出てこられたんだから、何にも気にする必要なんかないぞ」
「……え? 怒らないの? 私皆に迷惑かけていたのに」
「誰もお前を怒ったりしないさ。こうしてお前がまた元気を出して料理をしてくれるならそれでいい」
何だか半分告白じみた言葉になってしまったが、俺は……いや俺達は一切彼女を責めることはしない。何故なら彼女は被害者で巻き込んでしまった俺達に責任がある。だから彼女がこうして元気になってくれたのはすごくありがたいし、この先も料理をしてくれるならもっとありがたい。
「そうね、ケイイチの言う通りよちびっ子。誰もあんたを責めたりしないわよ」
俺の背後から声が聞こえる。どうやら挨拶を終えたココネが、わざわざやって来たらしい。
「ココネお姉ちゃん……。でも私、まだすぐに料理できないけど、それでもいいの?」
それに反応して、ようやくリタがこちらを見てくれる。その彼女の目には、嬉しさからなのか、それとも悲しさからなのか一筋の涙が流れていた。
「そんなの誰だって分かっているわよ。一度抱えた傷はすぐには癒えない。少しずつでいいから頑張りなさい。……私も頑張るから」
古傷を抱えているからこそ言える彼女の言葉。それはすぐには癒えないだろうけど、時間をかけて少しずつ確実に癒していけばいい。いくら時間がかかったって、周りにはそれを支えてくれる人達がいるのだから。
「それよりもケイイチ、閉会式中に抜け出すなんていい度胸しているわね。それでも国王なの?」
「そういうお前だって同じだろ」
「私はわざわざあんたを呼びに来たのよ。ついでにちびっ子も」
「リタも?」
あの場所からリタの姿でも見えていたのだろうか? それにしたって彼女を呼ぶためのイベントは終了してしまったわけだし、果たしてどうするつもりなのだろうか?
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