俺の嫁はデレない異世界のお姫様
第55話全てはあの日から
二人が行方不明になってからもうすぐ三時間が経とうとしている。未だに二人の足取りが掴めず、俺は若干イライラしていた。
「少しは落ち着きなさい。焦っていたって何も始まらないわよ」
「落ち着いていられるかよ。あいつがいなかったら俺は……」
ずっとあいつは俺の近くにいてくれた。幼馴染という関係だからとかそういう事じゃなくて、彼女はいつだって近くにいたんだ。その由奈が行方不明だなんて、到底信じられない。
「実の妻を目の前にしてよくそんな事が言えるわよねあんた」
「別にそういった意味じゃないんだよ。ただ、あいつはずっと昔から俺にとってかけがえのない存在だった。いつでも一緒だったし、こんな遠い異世界にまで彼女はついてきてくれた。切っても切れない存在なんだよ」
「ふーん」
何だかつまらなそうに聞くココネ。まあ本人の前で別の女性の話をされたら、気に食わないのは当然だよな。でもだからこそ分かってほしかった。あいつは俺にとってどんな存在なのかを。
「あんたの言いたいことはすごく分かったわ。けど、焦っていたって何も始まらない。彼女を助けたいなら、落ち着きなさい」
「あ、ああ」
ちょっと興奮しすぎたため、すぐに頭を冷やす。とりあえず落ち着いて今できることを考えるしかない。
「そういえばリタはどうした? 朝から見かけていないけど」
「王国祭が終わってから、ずっと料理漬けよ彼女は。本当料理が好きなのね」
「じゃあ今も調理場に?」
「いるんじゃないかしら」
「もしかしたら何か聞けるかも知れないし、行ってみよう」
ただ焦っていたって意味がない。とにかく今は動いて、なるべく早く由奈を助け出さなければならない。後悔だけはしない内に。
■□■□■□
調理場にたどり着くと、リタは以前の自分を取り戻したかのように料理を続けていた。俺達が来たのを見た彼女は、一旦料理を止めてどうしたのか聞いてきたので、俺はここまでの事を彼女に話した。
「え?! ユナお姉ちゃんが行方不明なの?」
「ああ。カグヤと一緒にどこかへ消えたんだよ。リタは何か知らないか?」
「うーん、私ずっとここで料理していたけど、特に何も見なかったかも」
「そっか」
やはりここでも情報は無し。ただ時間が過ぎていくの見ていくしかないのだろうか? こんな雲をつかむような感覚をいつまでも続けていたら、何かが起きてしまう。何かが起きてしまったら全てが御終いだ。どうすればいいんだ、どうすれば……。
「あ、一つ思い出した。今朝誰かが調理場の前を通った気がする」
「朝? ココネの事じゃなくて?」
「ううん。違う。誰か分からないけど、ここにいる人じゃなかったような……。でもどこかで見たことがある気がする」
「この城にいる人は全員見たことがあるのよね? だったら誰かが当てはまる気がするんだけど」
「うーん、誰だったかな……」
必死に思い出そうとしているが、なかなか出てこないらしい。部屋にしばらく篭っていたとはいえ、ある程度誰だか認識できるはずだ。それなのに、なぜ彼女は思い出せないのだろうか?
(それはつまり、ほとんど会ったことがないからか?)
それだったら一人だけ当てはまる人物がいるが、それだとしたらなぜ今朝彼女の姿をリタは見たのだろうか? だって彼女は、その時既に……。
「いや、ちょっと待てよ」
「どうかしたケイイチ」
「なあリタ、お前が見かけたのって黒髪の女性だったか?」
「確かそうだけど。あんな人いたっけ」
「恐らくそれはカグヤの事だ。俺やココネ以外特に用事がない限り会わない人物、それが当てはまるのは彼女しかいない」
「でもそれだとおかしくないかしら。朝の時点で彼女は既にいなかったはずよ。私が行った時には既にいなかったわけだし、それにあの声だって」
「そう思い込ませるために仕組まれていたんだよきっと。彼女はもう城の外に出ていると勘違いさせる為の」
「どういう意味よ」
「つまりこういう事だ」
まずあの声を聞いたのは時間帯的に夜なのは間違いないだろ。明け方に動くと下手したらある事に気がつかれてしまう。あえて夜に全てを行ったのは、時間に余裕を持たせるため。そして早いうちに由奈をある場所に閉じ込めておくため。更に夜に行っておけば、犯人が遠くに移動したことを勘違いさせることができる。実際はそうではないことはリタが証明してくれた。
「え? じゃあカグヤと由奈ちゃんは近くにいるってことなの?」
「ああ。行方不明と見せかけて、実は思ったより近くにいるんだよ。リタが朝その姿を見たのがその証拠だ。それが同時に誤算にもなるわけだけど」
「誤算?」
「恐らくカグヤは誰も気づかずに計画を実行しようとしていた。何せこの世界は広い。情報がなければ簡単に見つけられない。そう踏み込んでいたが、不幸にも今朝その姿をリタに見られてしまった。自分達の計画の実行場所がすぐそこにある事を教えてしまったんだよ」
「でもその場所ってどこなのよ」
「そんなの考えなくたって分かる。誰にも気づかずに行える場所なんて一つしかない」
「それってまさか」
「ああ。この城の地下だ」
もっと早くに気づくべきだったんだ。カグヤが目を覚まして俺達の目の前に現れた時に。何故彼女はあの場所を知っていたのかを。そして何故扉の存在を知っていたのかを。全ては最初から仕組まれていたんだ。あの浜辺で出会った時から。
そしてその計画に、共犯者がいるってことにも。
「少しは落ち着きなさい。焦っていたって何も始まらないわよ」
「落ち着いていられるかよ。あいつがいなかったら俺は……」
ずっとあいつは俺の近くにいてくれた。幼馴染という関係だからとかそういう事じゃなくて、彼女はいつだって近くにいたんだ。その由奈が行方不明だなんて、到底信じられない。
「実の妻を目の前にしてよくそんな事が言えるわよねあんた」
「別にそういった意味じゃないんだよ。ただ、あいつはずっと昔から俺にとってかけがえのない存在だった。いつでも一緒だったし、こんな遠い異世界にまで彼女はついてきてくれた。切っても切れない存在なんだよ」
「ふーん」
何だかつまらなそうに聞くココネ。まあ本人の前で別の女性の話をされたら、気に食わないのは当然だよな。でもだからこそ分かってほしかった。あいつは俺にとってどんな存在なのかを。
「あんたの言いたいことはすごく分かったわ。けど、焦っていたって何も始まらない。彼女を助けたいなら、落ち着きなさい」
「あ、ああ」
ちょっと興奮しすぎたため、すぐに頭を冷やす。とりあえず落ち着いて今できることを考えるしかない。
「そういえばリタはどうした? 朝から見かけていないけど」
「王国祭が終わってから、ずっと料理漬けよ彼女は。本当料理が好きなのね」
「じゃあ今も調理場に?」
「いるんじゃないかしら」
「もしかしたら何か聞けるかも知れないし、行ってみよう」
ただ焦っていたって意味がない。とにかく今は動いて、なるべく早く由奈を助け出さなければならない。後悔だけはしない内に。
■□■□■□
調理場にたどり着くと、リタは以前の自分を取り戻したかのように料理を続けていた。俺達が来たのを見た彼女は、一旦料理を止めてどうしたのか聞いてきたので、俺はここまでの事を彼女に話した。
「え?! ユナお姉ちゃんが行方不明なの?」
「ああ。カグヤと一緒にどこかへ消えたんだよ。リタは何か知らないか?」
「うーん、私ずっとここで料理していたけど、特に何も見なかったかも」
「そっか」
やはりここでも情報は無し。ただ時間が過ぎていくの見ていくしかないのだろうか? こんな雲をつかむような感覚をいつまでも続けていたら、何かが起きてしまう。何かが起きてしまったら全てが御終いだ。どうすればいいんだ、どうすれば……。
「あ、一つ思い出した。今朝誰かが調理場の前を通った気がする」
「朝? ココネの事じゃなくて?」
「ううん。違う。誰か分からないけど、ここにいる人じゃなかったような……。でもどこかで見たことがある気がする」
「この城にいる人は全員見たことがあるのよね? だったら誰かが当てはまる気がするんだけど」
「うーん、誰だったかな……」
必死に思い出そうとしているが、なかなか出てこないらしい。部屋にしばらく篭っていたとはいえ、ある程度誰だか認識できるはずだ。それなのに、なぜ彼女は思い出せないのだろうか?
(それはつまり、ほとんど会ったことがないからか?)
それだったら一人だけ当てはまる人物がいるが、それだとしたらなぜ今朝彼女の姿をリタは見たのだろうか? だって彼女は、その時既に……。
「いや、ちょっと待てよ」
「どうかしたケイイチ」
「なあリタ、お前が見かけたのって黒髪の女性だったか?」
「確かそうだけど。あんな人いたっけ」
「恐らくそれはカグヤの事だ。俺やココネ以外特に用事がない限り会わない人物、それが当てはまるのは彼女しかいない」
「でもそれだとおかしくないかしら。朝の時点で彼女は既にいなかったはずよ。私が行った時には既にいなかったわけだし、それにあの声だって」
「そう思い込ませるために仕組まれていたんだよきっと。彼女はもう城の外に出ていると勘違いさせる為の」
「どういう意味よ」
「つまりこういう事だ」
まずあの声を聞いたのは時間帯的に夜なのは間違いないだろ。明け方に動くと下手したらある事に気がつかれてしまう。あえて夜に全てを行ったのは、時間に余裕を持たせるため。そして早いうちに由奈をある場所に閉じ込めておくため。更に夜に行っておけば、犯人が遠くに移動したことを勘違いさせることができる。実際はそうではないことはリタが証明してくれた。
「え? じゃあカグヤと由奈ちゃんは近くにいるってことなの?」
「ああ。行方不明と見せかけて、実は思ったより近くにいるんだよ。リタが朝その姿を見たのがその証拠だ。それが同時に誤算にもなるわけだけど」
「誤算?」
「恐らくカグヤは誰も気づかずに計画を実行しようとしていた。何せこの世界は広い。情報がなければ簡単に見つけられない。そう踏み込んでいたが、不幸にも今朝その姿をリタに見られてしまった。自分達の計画の実行場所がすぐそこにある事を教えてしまったんだよ」
「でもその場所ってどこなのよ」
「そんなの考えなくたって分かる。誰にも気づかずに行える場所なんて一つしかない」
「それってまさか」
「ああ。この城の地下だ」
もっと早くに気づくべきだったんだ。カグヤが目を覚まして俺達の目の前に現れた時に。何故彼女はあの場所を知っていたのかを。そして何故扉の存在を知っていたのかを。全ては最初から仕組まれていたんだ。あの浜辺で出会った時から。
そしてその計画に、共犯者がいるってことにも。
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