俺の嫁はデレない異世界のお姫様
第58話歴史の中に眠る真実②
四十年前、まだこの国に先代の国王と姫が誕生してさほど経っていない頃、人と魔物による戦いが行われていた。
きっかけは未だに判明されていないらしいが、ほんの些細なきっかけだったらしい。誰かが開けてはならない何かを開いてしまったとか。
「それってもしかして、死者の扉か?」
「どうやらそうではないらしいですわよ」
「え?」
という事はやはり昔から扉関係なしに魔物はいたという事だろうか? だとしたら、ココネが開けた死者の扉と魔物は本来関係ないとも言える。でも彼女は、何かに出くわしているのだから、あの扉が何かしらに関係しているのは間違いない。
「話を続けますわね」
二人が就任した頃のナルカディアの状況はとにかく酷く、このまま衰退してしまうのかと思われていたくらい、絶望に陥っていた。
『なあメリアーナ』
『何でしょうか? 国王様』
当時王家との繋がりがあったわたくしは、ローウェン国王と何度かお話をしたことがあり、彼は私に何度かこの国の安泰について尋ねてきました。
『お前は近いうちに、伯爵の妻となるのだろう? 妻となったお前は、この国に居続けるのか?』
『家自体がこちらにございますから、当分引っ越そうとは考えないです』
『そうか。では一つ聞きたい。君はこの国にどんな未来を見る』
『この国の未来……ですか?』
(この前俺にした同じ質問だ)
俺はあの時は笑顔でいられる国とか答えた気がする。果たして彼女は何と答えたのだろうか?
「その時メリアーナさんはなんて答えたんですか?」
そんなことを考えている俺の代わりに、由奈が質問する。
「わたくしはその時、答えられませんでした。状況が状況だったので、そんなことを考える余裕なんてなかったですから」
「それほど酷かったんだ……」
当時の状況がどのくらいだったのか俺には分からないけど、今よりも酷かったのだろうか? 戦いと言っているのだから、一つの国が潰れてもおかしくない状況だったのかもしれない。そう、今よりも。
「でも国王様はそんな時でも、前向きでしたわ。彼の立ち向かっていく姿は、国民に勇気を与え、彼が国王の座についてから四年という月日が経った頃には、国が元の姿に戻っていました」
「四年でって、すごいな」
果たして俺にはそこまで出来るだけの力を持っているのだろうか?
「しかしそれとは裏腹に、人と魔物との戦いも激しさを増し、その被害はココロ姫に及んでしまうことになってしまいました」
「ココネの母親に?」
人と魔物による長きに渡る戦争は、始まってから間もなく二十年が経とうとしているのに、一向に収まる気配がない。そして激しい戦いが繰り広げられている中、国民を震撼させる事件が起きてしまう。
『何だと! ココロが魔物の襲撃にあっただと』
『はい。今緊急で治療をしています。傷はさほど深くはないので、命の別状はないかと』
『命に別状がないなら良かったが、いざという時のためにお前は治療に専念してくれ。セレス』
『はい!』
それはココロ姫が魔物の襲撃にあい、重傷負ったこと。幸い一命はとりとめたが、当時の王国にはある噂が立っていたので、国民の不安は簡単には消えなかった。
「感染症? ライドアの国王も同じことを言っていたけど,何か悪影響があるのか?」
「魔物に襲撃され傷を負ったものは、その傷口から体内にある物が入りこみ、それは体を徐々に蝕んでいく、という謎の病気の事ですわ。幸いココロ姫はそれにはかからなかったのですが、同時に一つの不安を生み出すきっかけになりました」
「一つの不安?」
「彼女が丁度その頃に子供を身ごもっていたんです」
「子供……それってもしかして」
「はい。ココネ姫の事ですわ」
魔物の襲撃に遭う少し前に、ココロ姫のお腹には赤ちゃんができていた。新たな命が生まれることに、彼女は勿論のこと、国全体が歓喜した。だが、それと同時に感染症が母親ではなくその子供に伝染ってしまうのではないかと危ぶまれていた。
『なあココロ、お前は危険だと分かっていても産むつもりなのか?』
『そんな野暮なこと聞かないで。私は何があってもこの子を育ってるって決めたの』
『相変わらず強いんだなお前は』
『誰かさんの影響かも知れないわね』
そして今から丁度二十年前、無事赤ちゃんを出産。可愛い元気な女の子だった。
『もう名前は決めたのか?』
『勿論よ。この子の名前は……』
「それがココネか」
「はい。周りの人から聞くと、とても元気な女の子だったらしいですわよ。感染病の恐れすら消えてしまうくらいに」
「まあ、子供っていうのはそんなものだろ。由奈は大人しい方だったけど」
「い、いきなり私の過去を暴露しないでよ」
「別に暴露なんかしてないだろ」
事実ではあるんだけど。
「しかし彼女が五歳になった時にある物が現れたのがきっかけで、その恐れが蘇ってしまいました」
「ある物ってもしかして、あの刻印のことか?」
「あら知っているのですか?」
「ああ。彼女に実際に見せてもらったこともあるし、これが魔物と繋がりがあるのも知っている」
カグヤ曰く、魔物と繋がるかなり重要なものらしい。そしてそれは、カグヤ自身にもついている。
「あの刻印は実は人と魔物の両方の血を継いでいる者にのみ現れる物らしいというのが、最近の調査で分かりました。そしてその刻印を持つ者の大半は、魔物の襲撃により傷を負ってしまったものであり、長生きができない運命に見舞われてしまうらしいです」
「それはつまり、ココネは長生きできないって事なのか?」
「そうなります。実際感染の恐れが全くないと言われていたココロ姫は、ココネ姫が十歳になった頃に亡くなってしまいました。本人はずっと黙っていたらしいですが、どうやら彼女にも刻印が刻まれていたらしいです」
「そんな……。そんな話……」
簡単に信じられるわけ無いだろ。ココネがすぐに亡くなる可能性が高いだなんて、そんなの簡単に受け入れられない
「受け入れない気持ちは分かります。けど、それは真実なんですよ国王様。ライドアは今まさにその被害を受けているんですから」
「けど、それでも……」
こんな事実を知ってしまった以上、子供を産むか否か悩んでしまう(まだ妊娠はしていないが)。俺はどの道を選べばいいのだろうか?
「でも国王様、まだあなたには知ってもらわないといけない事実が何個もあります。それをあなたが受け止められないと、この国は確実に終わりを迎えてしまいます」
「何だよそれほどまでして、知っておかなければならない事実って」
「そこにいる彼女、由奈様にも大変関わってくる話なので、よく聞いてください」
「え?」
「私?」
由奈がこの国の歴史と深く関わってくるって、一体どういう事だ?
きっかけは未だに判明されていないらしいが、ほんの些細なきっかけだったらしい。誰かが開けてはならない何かを開いてしまったとか。
「それってもしかして、死者の扉か?」
「どうやらそうではないらしいですわよ」
「え?」
という事はやはり昔から扉関係なしに魔物はいたという事だろうか? だとしたら、ココネが開けた死者の扉と魔物は本来関係ないとも言える。でも彼女は、何かに出くわしているのだから、あの扉が何かしらに関係しているのは間違いない。
「話を続けますわね」
二人が就任した頃のナルカディアの状況はとにかく酷く、このまま衰退してしまうのかと思われていたくらい、絶望に陥っていた。
『なあメリアーナ』
『何でしょうか? 国王様』
当時王家との繋がりがあったわたくしは、ローウェン国王と何度かお話をしたことがあり、彼は私に何度かこの国の安泰について尋ねてきました。
『お前は近いうちに、伯爵の妻となるのだろう? 妻となったお前は、この国に居続けるのか?』
『家自体がこちらにございますから、当分引っ越そうとは考えないです』
『そうか。では一つ聞きたい。君はこの国にどんな未来を見る』
『この国の未来……ですか?』
(この前俺にした同じ質問だ)
俺はあの時は笑顔でいられる国とか答えた気がする。果たして彼女は何と答えたのだろうか?
「その時メリアーナさんはなんて答えたんですか?」
そんなことを考えている俺の代わりに、由奈が質問する。
「わたくしはその時、答えられませんでした。状況が状況だったので、そんなことを考える余裕なんてなかったですから」
「それほど酷かったんだ……」
当時の状況がどのくらいだったのか俺には分からないけど、今よりも酷かったのだろうか? 戦いと言っているのだから、一つの国が潰れてもおかしくない状況だったのかもしれない。そう、今よりも。
「でも国王様はそんな時でも、前向きでしたわ。彼の立ち向かっていく姿は、国民に勇気を与え、彼が国王の座についてから四年という月日が経った頃には、国が元の姿に戻っていました」
「四年でって、すごいな」
果たして俺にはそこまで出来るだけの力を持っているのだろうか?
「しかしそれとは裏腹に、人と魔物との戦いも激しさを増し、その被害はココロ姫に及んでしまうことになってしまいました」
「ココネの母親に?」
人と魔物による長きに渡る戦争は、始まってから間もなく二十年が経とうとしているのに、一向に収まる気配がない。そして激しい戦いが繰り広げられている中、国民を震撼させる事件が起きてしまう。
『何だと! ココロが魔物の襲撃にあっただと』
『はい。今緊急で治療をしています。傷はさほど深くはないので、命の別状はないかと』
『命に別状がないなら良かったが、いざという時のためにお前は治療に専念してくれ。セレス』
『はい!』
それはココロ姫が魔物の襲撃にあい、重傷負ったこと。幸い一命はとりとめたが、当時の王国にはある噂が立っていたので、国民の不安は簡単には消えなかった。
「感染症? ライドアの国王も同じことを言っていたけど,何か悪影響があるのか?」
「魔物に襲撃され傷を負ったものは、その傷口から体内にある物が入りこみ、それは体を徐々に蝕んでいく、という謎の病気の事ですわ。幸いココロ姫はそれにはかからなかったのですが、同時に一つの不安を生み出すきっかけになりました」
「一つの不安?」
「彼女が丁度その頃に子供を身ごもっていたんです」
「子供……それってもしかして」
「はい。ココネ姫の事ですわ」
魔物の襲撃に遭う少し前に、ココロ姫のお腹には赤ちゃんができていた。新たな命が生まれることに、彼女は勿論のこと、国全体が歓喜した。だが、それと同時に感染症が母親ではなくその子供に伝染ってしまうのではないかと危ぶまれていた。
『なあココロ、お前は危険だと分かっていても産むつもりなのか?』
『そんな野暮なこと聞かないで。私は何があってもこの子を育ってるって決めたの』
『相変わらず強いんだなお前は』
『誰かさんの影響かも知れないわね』
そして今から丁度二十年前、無事赤ちゃんを出産。可愛い元気な女の子だった。
『もう名前は決めたのか?』
『勿論よ。この子の名前は……』
「それがココネか」
「はい。周りの人から聞くと、とても元気な女の子だったらしいですわよ。感染病の恐れすら消えてしまうくらいに」
「まあ、子供っていうのはそんなものだろ。由奈は大人しい方だったけど」
「い、いきなり私の過去を暴露しないでよ」
「別に暴露なんかしてないだろ」
事実ではあるんだけど。
「しかし彼女が五歳になった時にある物が現れたのがきっかけで、その恐れが蘇ってしまいました」
「ある物ってもしかして、あの刻印のことか?」
「あら知っているのですか?」
「ああ。彼女に実際に見せてもらったこともあるし、これが魔物と繋がりがあるのも知っている」
カグヤ曰く、魔物と繋がるかなり重要なものらしい。そしてそれは、カグヤ自身にもついている。
「あの刻印は実は人と魔物の両方の血を継いでいる者にのみ現れる物らしいというのが、最近の調査で分かりました。そしてその刻印を持つ者の大半は、魔物の襲撃により傷を負ってしまったものであり、長生きができない運命に見舞われてしまうらしいです」
「それはつまり、ココネは長生きできないって事なのか?」
「そうなります。実際感染の恐れが全くないと言われていたココロ姫は、ココネ姫が十歳になった頃に亡くなってしまいました。本人はずっと黙っていたらしいですが、どうやら彼女にも刻印が刻まれていたらしいです」
「そんな……。そんな話……」
簡単に信じられるわけ無いだろ。ココネがすぐに亡くなる可能性が高いだなんて、そんなの簡単に受け入れられない
「受け入れない気持ちは分かります。けど、それは真実なんですよ国王様。ライドアは今まさにその被害を受けているんですから」
「けど、それでも……」
こんな事実を知ってしまった以上、子供を産むか否か悩んでしまう(まだ妊娠はしていないが)。俺はどの道を選べばいいのだろうか?
「でも国王様、まだあなたには知ってもらわないといけない事実が何個もあります。それをあなたが受け止められないと、この国は確実に終わりを迎えてしまいます」
「何だよそれほどまでして、知っておかなければならない事実って」
「そこにいる彼女、由奈様にも大変関わってくる話なので、よく聞いてください」
「え?」
「私?」
由奈がこの国の歴史と深く関わってくるって、一体どういう事だ?
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