俺の嫁はデレない異世界のお姫様
第70話大切な人の為ならば
カグヤの手によってナルカディアが落ちた事をしった俺は、今すぐにでも助けに向かいたいところなのだが、状況が状況なだけあってすぐには迎えなかった。
まず一つ目の問題が、ナルカディアに向かうまでの手段。
ルナに後で聞いたところ、どうやらルイヴァック島は俺達が住んでいる本土からかなり離れている所にあるらしく、定期船みたいなものも出ていないらしい。その為、ナルカディアに向かうどころか本土にすら行けないという完全に手詰まりな状況になっていた。
そしてもう一つの問題がココネだ。
ルイヴァック島に流れ着いてから、早くもニ週間が経とうというのに、未だに外にも出てこず誰かとも話すことすらしていない。おまけに記憶喪失という最悪極まりない状況。この状態のままの彼女を連れて行くわけにはいかない。まあ、それ以前に移動手段がないのだから、何にも始まらないのだが……。
(でもこのまま放置しておくわけにもいかないよな……)
確かに問題は山程あるが、だからって諦めるなんてことはできない。ココネの事だって、ナルカディアの事だって、そして大切な仲間だって、何一つ諦めていいものなんてない。
(だから頼むココネ、お前が記憶を取り戻してくれさえすれば、色々変わるんだ)
だから俺は今日もルイヴァック島の大きな書庫に来ていた。二週間ほぼ毎日こもっていたおかげで、ここにある本のほとんどを読み終えた。とは言っても当てずっぽうに探すのではなく、この島の歴史の書物を主に手に取り、ここにいる皆が記憶喪失になってしまうきっかけを探っていた。
「ケイイチさん、また調べ物?」
「ああ。カグヤが言っていた事もそうだけど、刻印と記憶喪失が何かしらの関係があるのはほぼ間違いないはずなんだ」
「でももうここにある本のほとんどを読んだんでしょ? それでもなにも分からないのに、これ以上同じことをしたって……」
だが、ルナの言っている通りめぼしい情報は一つもなく、周りから見れば無意味とも思える事を毎日のように続けていた。
「だからといって諦めるわけにはいかないだろ?」
「それもそうだけど、これ以上無理をすると今度はケイイチさんの体が……」
「俺の事は心配しなくていい。こんな所で根を上げるような体じゃないからな」
「それでも……」
ルナが何を言いたいのかは分かる。確かに最近の俺は、まともに睡眠をとらず、ずっと調べ物をしている。適度に食事は取っているが、それでも一日一回か二回程度。これ以上無理をしたら確実に体を壊してしまうレベル。けど、そこまでしてでも何かを掴まなければならない。ココネだけでなく、この世界で刻印の被害に合っている人のためにも……。
「何じゃいお主、まだ本を読んでおったのかい」
そんな時ふと書庫の方から少し年老いた声が聞こえた。振り返ると、そこには既に九十は越えていそうな老婆が一人、眠たそうな顔をしながら杖をついて立っていた。
「あなたは?」
「と、島長、どうしてここに」
「どうしても何も、島の人から最近やけに熱心に調べ物をしている異国の者がいるって話を聞いてのう」
島長と思わしき老婆曰く、俺が毎日ここで調べていることが島の人の間でちょっとした噂になっていたらしく、それを聞いた島長自ら俺に会いに来たらしい。
(島長って、ルナが言っていたけど確かこの島で最年長の人間だよな)
「あ、あの島長、もし宜しければ……」
「お主にわしから教えることなどない」
「え?」
長生きしている人なら何か情報を仕入れられると思った俺は、話を切り出そうとしたがその前に島長に拒否されてしまった。
「お主が何故この刻印の事を調べているかは分からんが、わしだってその被害者じゃから肝心なことを覚えているわけないじゃろ」
「そ、それは確かにそうですけれど……」
「調べるのは勝手じゃが、これ以上島の者に迷惑をかけるならすぐに出て行ってもらう」
「と、島長それはちょっと言い過ぎでは……」
「過ぎているのはお主の方じゃ。思い出せないものを無理やり思い出させようとして、何が人の為じゃ。こっちとしては迷惑がかかっておるというのに」
「でも俺は……」
厳しい言葉を突きつけられ、俺は思わずたじろいでしまう。確かに俺のやり方は間違っているのかもしれない。いや、間違っている。思い出せないものを無理やり思い出させるなんて、逆に人を苦しめてしまうだけだ。それのどこが人のためだと言えるのだろうか?
(確かに正しいわけじゃない。でも……それでも俺は……)
「分かったらもうこれ以上調べないことじゃな。本土に戻りたいならいくらでも船をだしてやる。それでとっとと自分の国へ帰りなさい」
最後にそう言い放ち、書庫を後にしようとする島長。本土に帰してくれるのは好都合だ。そうすればすぐにナルカディアへ迎えるし、由奈達を救いに迎える。けど、それじゃあ駄目なんだ。それじゃあ一つ足りない。それは……。
「俺は……ココネの為に諦めることなんて出来ません!」
それは記憶を失ってしまう前の、いつものココネの姿。常に怒られてばかりで、何かと文句を言うけど、それも含めてあいつ……ナルカディア王国の姫、そして俺の大切な人間、ココネなんだ。だからそれが欠けたまま、俺はあの場所に帰ることなんてできない。
「そのココネとやらの為に命を削ってでも、お主は諦めたくないのか?」
そんな俺の声に反応してくれたのか、島長は足を止めた。だが顔はこちらに向けてはいない。
「ココネは……俺にとって大切な存在なんてす。そのあいつが記憶喪失になって、自分の名前も分からず、俺の名前だけしか覚えていないあの姿を、いつまでも見ていられないんです。いつも怒ってばかりで、姫として足りていない所があるけど、でもそれら全てがあってあいつなんです。それが一つでも欠けているあいつなんて、俺はココネだなんて呼べません。だから……だからどうか、協力してください! お願いします!」
俺はその場で土下座をして頼む。有力な情報を得られるかなんて分からないけど、少しでも……ほんの少しでも彼女の記憶を取り戻せるキッカケになるならどんな情報でも手に入れた。そんな一心で俺は、島長に頭を下げた。
「その言葉に偽りはないか?」
「はい!」
「だったらこの島の中心にある遺跡に言ってみるがよい。もしかしたらお主が求めている何かが手に入るかも知れない。そしてあわよくば、わしらの記憶も取り戻してくれ」
「ありがとうございます!」
島長はそう言い残して、その場を去っていった。
(島の中心の遺跡、そこに何かが……)
まず一つ目の問題が、ナルカディアに向かうまでの手段。
ルナに後で聞いたところ、どうやらルイヴァック島は俺達が住んでいる本土からかなり離れている所にあるらしく、定期船みたいなものも出ていないらしい。その為、ナルカディアに向かうどころか本土にすら行けないという完全に手詰まりな状況になっていた。
そしてもう一つの問題がココネだ。
ルイヴァック島に流れ着いてから、早くもニ週間が経とうというのに、未だに外にも出てこず誰かとも話すことすらしていない。おまけに記憶喪失という最悪極まりない状況。この状態のままの彼女を連れて行くわけにはいかない。まあ、それ以前に移動手段がないのだから、何にも始まらないのだが……。
(でもこのまま放置しておくわけにもいかないよな……)
確かに問題は山程あるが、だからって諦めるなんてことはできない。ココネの事だって、ナルカディアの事だって、そして大切な仲間だって、何一つ諦めていいものなんてない。
(だから頼むココネ、お前が記憶を取り戻してくれさえすれば、色々変わるんだ)
だから俺は今日もルイヴァック島の大きな書庫に来ていた。二週間ほぼ毎日こもっていたおかげで、ここにある本のほとんどを読み終えた。とは言っても当てずっぽうに探すのではなく、この島の歴史の書物を主に手に取り、ここにいる皆が記憶喪失になってしまうきっかけを探っていた。
「ケイイチさん、また調べ物?」
「ああ。カグヤが言っていた事もそうだけど、刻印と記憶喪失が何かしらの関係があるのはほぼ間違いないはずなんだ」
「でももうここにある本のほとんどを読んだんでしょ? それでもなにも分からないのに、これ以上同じことをしたって……」
だが、ルナの言っている通りめぼしい情報は一つもなく、周りから見れば無意味とも思える事を毎日のように続けていた。
「だからといって諦めるわけにはいかないだろ?」
「それもそうだけど、これ以上無理をすると今度はケイイチさんの体が……」
「俺の事は心配しなくていい。こんな所で根を上げるような体じゃないからな」
「それでも……」
ルナが何を言いたいのかは分かる。確かに最近の俺は、まともに睡眠をとらず、ずっと調べ物をしている。適度に食事は取っているが、それでも一日一回か二回程度。これ以上無理をしたら確実に体を壊してしまうレベル。けど、そこまでしてでも何かを掴まなければならない。ココネだけでなく、この世界で刻印の被害に合っている人のためにも……。
「何じゃいお主、まだ本を読んでおったのかい」
そんな時ふと書庫の方から少し年老いた声が聞こえた。振り返ると、そこには既に九十は越えていそうな老婆が一人、眠たそうな顔をしながら杖をついて立っていた。
「あなたは?」
「と、島長、どうしてここに」
「どうしても何も、島の人から最近やけに熱心に調べ物をしている異国の者がいるって話を聞いてのう」
島長と思わしき老婆曰く、俺が毎日ここで調べていることが島の人の間でちょっとした噂になっていたらしく、それを聞いた島長自ら俺に会いに来たらしい。
(島長って、ルナが言っていたけど確かこの島で最年長の人間だよな)
「あ、あの島長、もし宜しければ……」
「お主にわしから教えることなどない」
「え?」
長生きしている人なら何か情報を仕入れられると思った俺は、話を切り出そうとしたがその前に島長に拒否されてしまった。
「お主が何故この刻印の事を調べているかは分からんが、わしだってその被害者じゃから肝心なことを覚えているわけないじゃろ」
「そ、それは確かにそうですけれど……」
「調べるのは勝手じゃが、これ以上島の者に迷惑をかけるならすぐに出て行ってもらう」
「と、島長それはちょっと言い過ぎでは……」
「過ぎているのはお主の方じゃ。思い出せないものを無理やり思い出させようとして、何が人の為じゃ。こっちとしては迷惑がかかっておるというのに」
「でも俺は……」
厳しい言葉を突きつけられ、俺は思わずたじろいでしまう。確かに俺のやり方は間違っているのかもしれない。いや、間違っている。思い出せないものを無理やり思い出させるなんて、逆に人を苦しめてしまうだけだ。それのどこが人のためだと言えるのだろうか?
(確かに正しいわけじゃない。でも……それでも俺は……)
「分かったらもうこれ以上調べないことじゃな。本土に戻りたいならいくらでも船をだしてやる。それでとっとと自分の国へ帰りなさい」
最後にそう言い放ち、書庫を後にしようとする島長。本土に帰してくれるのは好都合だ。そうすればすぐにナルカディアへ迎えるし、由奈達を救いに迎える。けど、それじゃあ駄目なんだ。それじゃあ一つ足りない。それは……。
「俺は……ココネの為に諦めることなんて出来ません!」
それは記憶を失ってしまう前の、いつものココネの姿。常に怒られてばかりで、何かと文句を言うけど、それも含めてあいつ……ナルカディア王国の姫、そして俺の大切な人間、ココネなんだ。だからそれが欠けたまま、俺はあの場所に帰ることなんてできない。
「そのココネとやらの為に命を削ってでも、お主は諦めたくないのか?」
そんな俺の声に反応してくれたのか、島長は足を止めた。だが顔はこちらに向けてはいない。
「ココネは……俺にとって大切な存在なんてす。そのあいつが記憶喪失になって、自分の名前も分からず、俺の名前だけしか覚えていないあの姿を、いつまでも見ていられないんです。いつも怒ってばかりで、姫として足りていない所があるけど、でもそれら全てがあってあいつなんです。それが一つでも欠けているあいつなんて、俺はココネだなんて呼べません。だから……だからどうか、協力してください! お願いします!」
俺はその場で土下座をして頼む。有力な情報を得られるかなんて分からないけど、少しでも……ほんの少しでも彼女の記憶を取り戻せるキッカケになるならどんな情報でも手に入れた。そんな一心で俺は、島長に頭を下げた。
「その言葉に偽りはないか?」
「はい!」
「だったらこの島の中心にある遺跡に言ってみるがよい。もしかしたらお主が求めている何かが手に入るかも知れない。そしてあわよくば、わしらの記憶も取り戻してくれ」
「ありがとうございます!」
島長はそう言い残して、その場を去っていった。
(島の中心の遺跡、そこに何かが……)
コメント