俺の嫁はデレない異世界のお姫様

りょう

第71話遺跡の奥に眠る物

 翌日俺はルナを連れて島長が言っていた遺跡へと向かっていた。

「悪いなルナ、付き合ってもらって」

「私ケイイチさんに協力するって決めたんだから、ついてかなきゃダメでしょ? それに私も気になるの」

「気になる?」

「この島に遺跡があるのは知っていたけど、それが私達の記憶と何かしらの関係があるなんて知らなかったから、一体何があるのか気になるの」

「でも関係があるか分からないぞ」

「島長さんが教えてくれたんだから間違いないよ。最後に島長さん言っていたでしょ? あわよくば私達の記憶を取り戻してくれって」

「確かに言っていたけどさ……」

「とにかく島長さんを信じようよ」

「……分かった」

 別に島長さんを信じていないわけではないし、むしろ感謝をしている。けれど、先程からするこの胸騒ぎは一体何だろうか? 何か知らない方が良かったものまで知ってしまいそうなそんな気がしてならない。

「着きましたよケイイチさん」

「ここが……」

 木々が生い茂る中を歩き続けること三十分、ようやく目的地である遺跡に到着する。雰囲気からして、どうやら何百年も前からありそうな遺跡だ。果たしてこの先に何が待っているのだろうか?

「ルナはこの遺跡の存在を知っていたのか?」

「島の中心に遺跡があることだけは知っていましたけど、実際に来るのは初めて」

「じゃあこの先に何があるのかも?」

「勿論分からないよ。それに多分島の人の誰もが一度も来たことがないと思う」

「でもあの島長さんは何かを知っているようだったけど、それはどうなんだ?」

「それは私にも……」

「まあとにかく行ってみれば分かるってことか」

 改めて全体を見渡してみると、そんなに大きな遺跡というわけではなさそうだし、調べるには時間はかかりそうにない。

「よし、行くか」

「うん」

 一度深呼吸をした後、俺とルナは遺跡の中に足を踏み入れるのだった。
■□■□■□
 遺跡の中は光がなく、俺達は暗闇の中を進んでいくことになった。でも進んでいくうちに暗闇に光が慣れ、次第に遺跡内部がどうなっているのか分かるようになってきた。

「一見すると普通の遺跡みたいだよな」

「私遺跡自体見たことないから分からないけど、こんな感じなのかな」

「まあ俺もイメージでしか分からないけどさ」

 明かりがない事を除くと、特にこれと言って目立つものがない。一体この中に何があるというのだろうか?

 更に遺跡を進むこと約五分後。

「どうやらここが最深部みたいけど」

「特に何もないね」

 遺跡の一番奥に到着したのだが、特にこれと言ったものはあらず、何故島長さんがここに行くことを勧めたのか、よく分からなかった。

「違う遺跡だったりするのかな」

「多分それはないと思うよ。島の移籍はこれしかないもん」

「だったら、何でここに行かせたのかな島長さん」

「多分島長さんの気のせいだったんじゃないのかな」

「あそこまで言っておいてそのようには思えないけど……」

「やっぱりそうなるよな……」

 このまま帰るわけにはいかないので、とりあえず辺りを探索する。すると俺はある物を発見した。

「これは本か?」

「どうしたのケイイチさん」

「いや、そこの台座にこんなのがあったからさ」

 それは丁寧に台座の上に置かれている一冊の黒い本。タイトルは……。

「って、なんだこの字。見たことがないぞ」

「えっと……『始まりの物語』って書いてあるね」

「え?」

「え?」

 全く見覚えがない字をサラッと読み上げたルナに思わず驚いてしまう、しかし読んだ本人も何故か驚いていた。

「読めるのかこの字」

「いや私も初めて見る字のはずなんだけど、何か頭の中に言葉が浮かんできてそれを読んだだけなんだけど」

「それってつまり、ルナの記憶と何かしらの関係があるって事か」

「分からない。とりあえずこの本を読んでみよう」

「そうだな」

そう言って本を開こうとしたその瞬間、突然本が光を発した。

「な、何だ?」

 あまりの眩しさに思わず目を閉じてしまう。そして数秒後、眩しさが消えたのを確認してゆっくりと目を開ける。

「って、あれ?」

 だが再び目を開いた先は、さっきまでいた遺跡と何にも変わりないはずなのに、気のせいか遺跡が先程までの古ぼけた感じがなくなっていた。

(何か新しくなったような気がするけど、気のせいか?)

「そういえばルナは?」

 慌てて彼女がいた隣を見たが、そこには誰もおらず代わりに一冊の本が置かれていた。

「これってさっきの本か?」

 でも先程の本は黒かったが何故かこの本は赤色だった。表紙には何て書いてあるか分からず、さっきと同じように本を開いてみるが突然光が出てくるようなことはなかった。

(とりあえずルナの事も気になるし外に出るか)

 いつまでもここにいても埒があかないと感じた俺は、一度遺跡を出ることにする。その間にも遺跡を一通り見たがやはり先ほどのものと雰囲気が違った。

(本当にここ、さっきの遺跡なのか?)

 思わずそう感じてしまうほど先ほどとのギャップがあった。一体俺が目を閉じている僅か数秒の間に何が起きたのだろうか?

(よし、出口だ)

 仮に遺跡の雰囲気が変わっているとしても流石に外が変わっていることはないと思っていた俺は、何も迷うことなく外に出る。だが、その先で待っていた景色は目を疑うものだった。

「おい、どうなっているんだよこれ」

 外に広がっていた景色、本来ルイヴァック島があるはずのそこは、先ほどの景色とは一変して人一人住めそうにない更地だった。

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