スキルゲ!!

チョーカー

滅びゆく世界に

 『リヴィアサン』は理解している。
 もしも、全力を出せば世界は滅びてしまう……と。
 体内で形成される炎。それは太陽の業火に等しく、放てば世界を滅ぼすだけでは終わらない。
 地球そのものが新たな太陽に生まれ変わり、銀河系そのものを大きく塗り替えてしまうだろう。
 だが、それは『リヴィアサン』の目的とはかけ離れている。 
 目的はあくまで、世界の、『キングダム』の再構築。 滅んだ世界とひとつになり、新しい世界になる事。 
 だから、『リヴィアサン』は手加減をした。 
 咢から放つは業火を固めた巨大な火球。
 神経をすり減らし、微調整に微調整を重ねた最弱の一撃。
 それでも、目の前のニンゲンなら完全に消滅しきる程度の威力は込めた。
 目の前のニンゲンは火球を避ける余裕もない。いや、あるはずもない。
 その、ちっぽけな体に向かい、吸い込まれていくように激突した。
 ただそれだけで終わりだ。
 どんな力を持ったニンゲンであっても、自分の前に例外は存在しない。
 ただ消え去るだけ……そのはずだった。
 『リヴァイアサン』が異変に気がついたのは、直後である。
 あらゆる生物は熔かし消し去すはずの火球。それが空中で停止していたのだ。
 まるで推進力を失ってしまったかのように静止している。
 その直後、火球ははじけ飛んだ。
 そして、火球があった場所にはニンゲンがいた。
 無傷。 火傷の後どころか、衣服ですら焦げた跡もない。
 どういう方法を使ったのか? 『リヴァイアサン』はあらゆる可能性を考えるが答えが出てこない。
 しかし、よくよく観察を続けてみるとニンゲンの変化に気がつく。
 ニンゲンは武器を手にしていた。 金属を圧縮して作るニンゲンの武器だ。
 おそらく、それを使ったのだろうが、何をどうやれば火球をかき消すことができたのか?
 不意にニンゲンが動く。
 そのニンゲンは武器をこちらに向け、何かをしゃべっている。

 「『リヴァイアサン』よ。お前はきっと、こう思っていただろ?自分の火力は地球すら破壊するだから手加減をしなければならない。そう考えていたのではないか?」

 ニンゲンの言葉はわからない。わからないはずだが、その言葉を聞いてはいけない気がする。
 ニンゲンの言葉を途切れさすために威圧する。
 体内の肺から空気を絞りだし、ニンゲンにぶつける。
 ニンゲンが作った住処程度なら、簡単に吹き飛ばすはずだが、ニンゲンはビクともせずに立ち続けている。

 「『リヴァイアサン』よ。お前が本物のリヴァイアサンならば、地球を破壊できるかもしれない。
 しかし、お前はシステムが作り出したモンスターであり、リヴァイアサンを模した偽物に過ぎない」

 ニンゲンの言葉はわからない。わからないはずだが……侮辱された。
 自身を侮辱された。存在を侮辱された。何もかも、目の前のニンゲンは侮辱した。
 ならば構わない。
 この街を滅ぼし、この国を滅ぼし、この世界を滅ぼし、惑星を滅ぼし、星々を滅ぼす。
 滅ぼした後に復元するば良い。
 その罪は、目の前のニンゲンにある。 
 後悔すればいい。自分が原因であらゆる物が滅ぶということを!?

 体内での炎形成を始める。 作るは太陽そのもの。
 火力という言葉すら虚しい。 放出すると同時に世界は融け落ちる。
 これは決定事項……世界よ、沈め。 
 『リヴァイアサン』は咢を開く。放つは世界を滅ぼす一撃。

 世界は光に包まれた。 

 

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