スキルゲ!!

チョーカー

終わらない終焉

 果たして、それはいつからそこにあったのだろうか?
 少なくとも、今まで僕は気がつかなかった。
 しかし、一度気がついてしまうと、その不自然さから逃れられる事はできない。
 僕の目の前の人物―——
 つまりは滝川晴人に関わる事だ。
 彼の胸の位置に何かが生えている。それは金属のようだ。
 どこかで見た事があるはずだけど、それがなんだったのか思い出せない。
 いや、思い出した。滝川晴人の胸から生えている物体。
 それは、日本刀の刃だ。滝川晴人の背後から体を貫通している。
 今まで、動きを止めていた滝川晴人の口が開く。
 その口から漏れた赤い液体が僕にかかる。
 そのまま、滝川晴人は前のめりに倒れていった。
 一体、何が起こったのか? 僕の頭は疑問符で埋め尽くされる。
 僕にわかるのは、あまりにも唐突で、あまりにも呆気ない終幕が訪れたという事だけだ。
 滝川晴人の背後には人が立っていた。
 誰か?この結界で閉ざされた空間に誰がいるというのか?
 僕は失念していた。ここには僕、朝倉亮期と滝川晴人の2人以外にも、もう1人いたじゃないか。
 橘あかね。日本刀を握っていたのは人質として、滝川晴人に連れ去らわれていたはずの少女だった。
 「怪我はありませんか?亮期くん?」
 彼女は、僕と違って普通だった。普通に平常心を維持していた。
 「えっと……怪我はないけど……でも、どうして?」
 混乱した僕から言葉にならない声がでた。僕は混乱しているようだ。
 「私も芦屋先生に頼まれていたんですよ。……滝川晴人討伐を」
 「え?あっああ、そうなんだ」
 なぜ、滝川晴人の討伐者が人質になっていたのか?その疑問は残っているけれども、大体は納得できる理由だった。
 ……あれ?何か奇妙な違和感がある。どこかで、昔、彼女とあった事があるような……
 パズルのように記憶が繋がっていく。確か、彼女は……
 転校初日、校門で見かけた彼女だ。いや、それよりも前に―——
 そうだ。僕が初めて、この街に来た時。ファーストフードの店内でモンスター相手に大立ち回りを見せていた彼女だ。いや、それよりも前に―——
 いや、それよりも前!?それよりも前に僕と彼女、橘あかねは出会っている?
 そんな馬鹿な、いつ?どこで? 記憶が……記憶が……記憶が……記憶がおかしい。

 だから気がつかない。僕の魂は、まだ僕に返ってきていないと。
 だから気がつかない。僕の魂は、まだ滝川晴人が握っていると。
 だから気がつかない。僕の魂を握った滝川晴人は、まだ生きていると。
 だから気がつかなかったんだ。立ち上がった滝川晴人が『リヴァイアサン』を召喚に成功した……と。

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