スキルゲ!!
光の部屋にて ③
「人間は人を殺す自由を捨てた代わりに国から安全を保障されている。ホッブズはそう言っています。人間は400年前から『なぜ人は人を殺してはいけないのか?』そんな事を考えていたのですね。
果たして、我々は進化しているのか、停滞しているのか、それとも退化しているのでしょうかね」
朝倉正成は笑いながら言い、芦屋悟朗は鋭い視線で彼を睨み付ける。
「いやはや……そんなに怖い顔をしないでくださいよ。私がやろうとしているって、どこか間違っていますかね?」
「貴方は『国』そのものの性質を持ち合わせるモンスター『リヴァイアサン』を呼び起こして、『キングダム』を亡ぼそうとしている。それが間違っていないと?」
「ええ。間違っているのは『キングダム』と言う国の方でしょ?むしろ、貴方は、この国が正常だとでも?」
朝倉正成は「心外」だと言わんばかりの表情だった。
「……それはどういう意味でしょうか?」
「この世界では、人間は『スキル』という人を超えた超常的な技が使え、モンスターと言われる怪物を日夜、戦っている。これが正しい世界の姿だというのでしょうか?いいえ、そんなはずがない。だから、正す。これはそういう単純な話なのです」
「亮期くんは、それを知っているのですか!?」
芦屋悟朗の荒げた声に朝倉正成は言葉を止めた。
「いいえ。しかし、これは息子のためでもあるのですよ」
「亮期くんのためですって?」
「そうです。ちょっとして貴方は勘違いしていませんかね?
私の目的のために息子は『リヴァイアサン』のスキルを身につけられた……と」
「―—————―——ッッッ!?」
芦屋悟朗は肯定の沈黙と驚きを同時に表現した。
「息子が『リヴァイアサン』召喚のスキルに目覚めたのは、数年前にこの街を訪れた時でした。
国を亡ぼす伝説のモンスター。それを息子の内部に巣くっていると知った時、私の心情を想像できますか?
だから、私は息子を救う事にしたんですよ」
芦屋悟朗は警戒を強めた。
朝倉正成の話は意味がわからない。
なぜ、朝倉亮期の魂を消費してまで召喚した『リヴァイアサン』が朝倉亮期の救う事になるのか?
わからない。ひょっとして、朝倉正成は錯乱でもしているのではないか?
そんな疑問も脳裏に浮かぶ。
だが———
「私は正気ですよ」と思考を読んだかのように朝倉正成は言う。
「一度、この国を亡ぼせば、新たな国『リヴァイアサン』が誕生する。
そうすれば、新たに創造された世界に、全てがリセットされた世界に、息子は蘇生する」
芦屋悟朗は理解した。目の前の人物は錯乱している……なんてもんじゃない。
彼の目に宿るのは狂気。世界を亡ぼせば、全てが元に戻る。
そんな拙い考えに取り付かれている。そんな人物が自らを「正気ですよ」と言っている。これが狂気以外のなんだというのだろうか?
「しかし、それは今の亮期くんではありません。そして、その世界にいる貴方も、今の貴方とは全く違う人間じゃないですか」
「先生……。私はそれでも構わないんですよ。ここではない世界で息子が幸せに生きていく可能性があるだけで私は救われるんですよ」
「貴方は間違えている」芦屋悟朗は拳を固く握りしめ、立ち上がった。
そのまま、部屋の外へ歩いていく。
「もう行かれるのですか?」
「ええ、貴方の目的を止めてきます」
「できますかね?もう『リヴァイアサン』の発動は間に合わないと思いますよ」
「いいえ」と芦屋悟朗は否定した。「こちらも罠を張っていたのですよ」
「なんだと?」
今まで歓喜の感情のみを見せていた朝倉正成に、初めての変化が見えた。
「こちらは、いつ襲ってくるのかわからない滝川晴人に対して防ぐしかない防戦一方の戦いでした。
だから、こちらは徹底的に必要以上に力を見せつけていたのですよ。滝川晴人が強行策にでるほどにね」
「何を仕掛けた?」
「おかしいとは思いませんでしたか?たまたま、早く登校した生徒が1人だけしかいなかったのでしょうか?部活の朝練の生徒もいない。そんな事あり得ますかね?」
「……」と朝倉正成は険しい顔を見せる。
「それでは打破してきますよ。貴方の計画を……」
そう言い残し、芦屋悟朗は部屋から出ていった。
果たして、我々は進化しているのか、停滞しているのか、それとも退化しているのでしょうかね」
朝倉正成は笑いながら言い、芦屋悟朗は鋭い視線で彼を睨み付ける。
「いやはや……そんなに怖い顔をしないでくださいよ。私がやろうとしているって、どこか間違っていますかね?」
「貴方は『国』そのものの性質を持ち合わせるモンスター『リヴァイアサン』を呼び起こして、『キングダム』を亡ぼそうとしている。それが間違っていないと?」
「ええ。間違っているのは『キングダム』と言う国の方でしょ?むしろ、貴方は、この国が正常だとでも?」
朝倉正成は「心外」だと言わんばかりの表情だった。
「……それはどういう意味でしょうか?」
「この世界では、人間は『スキル』という人を超えた超常的な技が使え、モンスターと言われる怪物を日夜、戦っている。これが正しい世界の姿だというのでしょうか?いいえ、そんなはずがない。だから、正す。これはそういう単純な話なのです」
「亮期くんは、それを知っているのですか!?」
芦屋悟朗の荒げた声に朝倉正成は言葉を止めた。
「いいえ。しかし、これは息子のためでもあるのですよ」
「亮期くんのためですって?」
「そうです。ちょっとして貴方は勘違いしていませんかね?
私の目的のために息子は『リヴァイアサン』のスキルを身につけられた……と」
「―—————―——ッッッ!?」
芦屋悟朗は肯定の沈黙と驚きを同時に表現した。
「息子が『リヴァイアサン』召喚のスキルに目覚めたのは、数年前にこの街を訪れた時でした。
国を亡ぼす伝説のモンスター。それを息子の内部に巣くっていると知った時、私の心情を想像できますか?
だから、私は息子を救う事にしたんですよ」
芦屋悟朗は警戒を強めた。
朝倉正成の話は意味がわからない。
なぜ、朝倉亮期の魂を消費してまで召喚した『リヴァイアサン』が朝倉亮期の救う事になるのか?
わからない。ひょっとして、朝倉正成は錯乱でもしているのではないか?
そんな疑問も脳裏に浮かぶ。
だが———
「私は正気ですよ」と思考を読んだかのように朝倉正成は言う。
「一度、この国を亡ぼせば、新たな国『リヴァイアサン』が誕生する。
そうすれば、新たに創造された世界に、全てがリセットされた世界に、息子は蘇生する」
芦屋悟朗は理解した。目の前の人物は錯乱している……なんてもんじゃない。
彼の目に宿るのは狂気。世界を亡ぼせば、全てが元に戻る。
そんな拙い考えに取り付かれている。そんな人物が自らを「正気ですよ」と言っている。これが狂気以外のなんだというのだろうか?
「しかし、それは今の亮期くんではありません。そして、その世界にいる貴方も、今の貴方とは全く違う人間じゃないですか」
「先生……。私はそれでも構わないんですよ。ここではない世界で息子が幸せに生きていく可能性があるだけで私は救われるんですよ」
「貴方は間違えている」芦屋悟朗は拳を固く握りしめ、立ち上がった。
そのまま、部屋の外へ歩いていく。
「もう行かれるのですか?」
「ええ、貴方の目的を止めてきます」
「できますかね?もう『リヴァイアサン』の発動は間に合わないと思いますよ」
「いいえ」と芦屋悟朗は否定した。「こちらも罠を張っていたのですよ」
「なんだと?」
今まで歓喜の感情のみを見せていた朝倉正成に、初めての変化が見えた。
「こちらは、いつ襲ってくるのかわからない滝川晴人に対して防ぐしかない防戦一方の戦いでした。
だから、こちらは徹底的に必要以上に力を見せつけていたのですよ。滝川晴人が強行策にでるほどにね」
「何を仕掛けた?」
「おかしいとは思いませんでしたか?たまたま、早く登校した生徒が1人だけしかいなかったのでしょうか?部活の朝練の生徒もいない。そんな事あり得ますかね?」
「……」と朝倉正成は険しい顔を見せる。
「それでは打破してきますよ。貴方の計画を……」
そう言い残し、芦屋悟朗は部屋から出ていった。
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