スキルゲ!!

チョーカー

護衛

 滝川晴人は、学校の七不思議を体現化したモンスターである。
 芦屋先生の観測者効果に当てはめて考えてみる。
 滝川晴人は、この学校内でしか存在できない。
 なぜなら、七不思議の滝川晴人の存在を知っている人間がいないと、『モンスターは人間のイメージ通りの生態を行う』という観測者効果が成立しないからだ。
 滝川晴人にはモデルとなった人物がいる。現在は、この街のお偉いさんになっているらしい。
 その人物が在学中に神隠しにあったエピソードから、七不思議としての滝川晴人が生まれたそうだ。
 モンスターの行動が人間のイメージに影響される。ならば、七不思議としての滝川晴人の最終目標は、本物の滝川晴人になる事ではないのだろうか?
 知名度を獲て、行動範囲を広げ、本物の滝川晴人に取って代わる。
 考える限り不可能だと思うが、モンスターにはできる、できないは関係ない。
 それを行う事が存在理由だから・・・・・・
 じゃ、なんで滝川晴人は僕を襲った。
 結局、そこで行き詰る。彼の目的は何か?
 そう言えば・・・・・・
 「そう言えば、二回目に滝川晴人に襲われた時。僕のスキルについて言っていました」
 なぜか、二回目の記憶は霧がかかったみたいにハッキリと覚えていない。
 けれども、彼の去り際に、そんな言葉を残していた・・・・・・ような気がする。
 「スキル?君のスキル能力はなんだい?」
 先生の言葉に、僕は首を横に振った。
 「僕はまだ何も使えませんよ」
 「なるほど。それなのに滝川晴人は、君のスキルについて喋ったと言うことかい?」
 「……そうなりますね」
 おぼろげな記憶。それでも僕は必死に思い出す。
 あの時、滝川晴人はなんて言った?

 『なんでお前はスキル能力に目覚めない?』

 そうだ。確か、そんな感じだったはず。

 『それとも、とっくに目覚めていて気がついていないのか?』

 気がついていない?僕が僕のスキルに?
 頭痛がする。何か、思い出してはいけない事を思い出そうとしている。
 記憶はないのに、それを思い出してはいけないと、何かが僕に告げている。
 何が? 何が告げている?

 「朝倉くん?」
 「え?」

 先生に呼びかけられて、正気に戻った。

 「大丈夫ですか?急に顔色が悪く……息も乱れてますよ」
 「え?あっ……そうですね。大丈夫です」
 「もう、今日は帰って休んでください。明日から、僕たちで君を護衛します」
 先生は、自分を指し、次に三島界人と東郷剣を指さした。
 

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