スキルゲ!!
隠された思考 刃を届かず
殺意を帯びた刃。
自分に向けられた殺意から目を逸らし、死までの短い時間。
僕は硬く瞳を閉じた。
・・・・・・
死。確実な死。
その逆は生命?命?生きるということ?
死という明確な物に対して、生という物は曖昧で漠然としている。
反対の言葉であり、死は結果、生は過程だからだろうか?
だから、死という答えに人は憧れるのかもしれない。
僕は、みっともなく泣き喚くでもなく、走馬灯のよう自身を振り返るでもなく、ただ死ぬことにした。
潔い?いや、それは違う。うまく説明できないけれども、そんな良いものではない。
結局、それは死と言うものに人間の想像力が追いついていないだけなんだ。
これも死という非現実に対する現実逃避。・・・・・・非現実なのにね。
――――――いや、おかしい。
走馬灯のように死の直前の集中力が、僕の思考を速めているわけではない。
では、刃を振り落とすという1秒に満たないはずの動作で、どうして僕は、こんなにも考える事ができるのだろう?
そう、僕が目を閉じている間、いつまで立っても刃は落ちてこなかった。
ひょっとしたら、僕が目を開いた瞬間に刃を振り落とすつもりなのかもしれない。
そう考えると、いつまで立っても目を開けない状況になってしまうのだが、不思議なもので人間の恐怖心というものは秒単位で薄れて消滅してしまう物らしい。
僕は目を開いた。
すると、振り落とされるはずだった刃は宙に止まっていた。
何か、不思議な力で止まっているわけでもない。
昨日みたいに、誰かが中に割って入って、刃を止めてくれたわけでもない。
刃を止めたのは、誰でもない滝川晴人の意思のようだった。
「ここまでやってもあかんか」と滝川晴人はつぶやく。
そうして手にした大鎌を消し、僕に背を向ける。
このまま立ち去るつもりらしい。
僕は惚けて、それを見送ることしかできない。そういう人間だった・・・・・・はずなのだが
「なんで、お前、なんで? なんなんだよ」
出た言葉は自分でも驚くくらい情けない声と言葉だった。
まるで、刑事ドラマで犯人に復讐される悪役が、思いもよらぬ犯人の慈悲で見逃されるシーンのワンカットの再現みたいだった。
去っていく滝川晴人は足を止め振り返った。
思わず僕の口から小さい悲鳴が漏れる。自分で引き止めたにもかかわらずだ。
「理由だったら、もちろんあるで。俺はモンスターや。そしてお前はモンスターと対峙してる。
じゃ、なんでお前はスキル能力に目覚めない?
それとも、とっくに目覚めていて気がついていないのか?
それに―――」
滝川晴人は一度、言葉を区切った。
そして、僕を観察するような視線を向ける。
「お前、死を意識した瞬間、切り分けていなかったか?」
「切り分ける?」
どういう意味かわからず、僕は滝川晴人の言葉を反復した。
「お前は死に怯えて、情けない立ち振る舞いをしていた。
だがそれは、そういうものだからと行おうと思っていたんじゃないか。
俺には、それがどこか作り物のように感じた。
お前は死に怯えているフリをして、頭の中では別の事を考えていたんじゃないか?」
そう言って滝川晴人を、今度こそ立ち去っていった。
彼の最後の言葉。
僕には何を言っていたのか、さっぱりわからなかった。
まるで心当たりがない。まるで心当たりがない。まるで心当たりがない。
まるで・・・・・・
僕の脳内では、彼の言葉は不要な物として削除された。
自分に向けられた殺意から目を逸らし、死までの短い時間。
僕は硬く瞳を閉じた。
・・・・・・
死。確実な死。
その逆は生命?命?生きるということ?
死という明確な物に対して、生という物は曖昧で漠然としている。
反対の言葉であり、死は結果、生は過程だからだろうか?
だから、死という答えに人は憧れるのかもしれない。
僕は、みっともなく泣き喚くでもなく、走馬灯のよう自身を振り返るでもなく、ただ死ぬことにした。
潔い?いや、それは違う。うまく説明できないけれども、そんな良いものではない。
結局、それは死と言うものに人間の想像力が追いついていないだけなんだ。
これも死という非現実に対する現実逃避。・・・・・・非現実なのにね。
――――――いや、おかしい。
走馬灯のように死の直前の集中力が、僕の思考を速めているわけではない。
では、刃を振り落とすという1秒に満たないはずの動作で、どうして僕は、こんなにも考える事ができるのだろう?
そう、僕が目を閉じている間、いつまで立っても刃は落ちてこなかった。
ひょっとしたら、僕が目を開いた瞬間に刃を振り落とすつもりなのかもしれない。
そう考えると、いつまで立っても目を開けない状況になってしまうのだが、不思議なもので人間の恐怖心というものは秒単位で薄れて消滅してしまう物らしい。
僕は目を開いた。
すると、振り落とされるはずだった刃は宙に止まっていた。
何か、不思議な力で止まっているわけでもない。
昨日みたいに、誰かが中に割って入って、刃を止めてくれたわけでもない。
刃を止めたのは、誰でもない滝川晴人の意思のようだった。
「ここまでやってもあかんか」と滝川晴人はつぶやく。
そうして手にした大鎌を消し、僕に背を向ける。
このまま立ち去るつもりらしい。
僕は惚けて、それを見送ることしかできない。そういう人間だった・・・・・・はずなのだが
「なんで、お前、なんで? なんなんだよ」
出た言葉は自分でも驚くくらい情けない声と言葉だった。
まるで、刑事ドラマで犯人に復讐される悪役が、思いもよらぬ犯人の慈悲で見逃されるシーンのワンカットの再現みたいだった。
去っていく滝川晴人は足を止め振り返った。
思わず僕の口から小さい悲鳴が漏れる。自分で引き止めたにもかかわらずだ。
「理由だったら、もちろんあるで。俺はモンスターや。そしてお前はモンスターと対峙してる。
じゃ、なんでお前はスキル能力に目覚めない?
それとも、とっくに目覚めていて気がついていないのか?
それに―――」
滝川晴人は一度、言葉を区切った。
そして、僕を観察するような視線を向ける。
「お前、死を意識した瞬間、切り分けていなかったか?」
「切り分ける?」
どういう意味かわからず、僕は滝川晴人の言葉を反復した。
「お前は死に怯えて、情けない立ち振る舞いをしていた。
だがそれは、そういうものだからと行おうと思っていたんじゃないか。
俺には、それがどこか作り物のように感じた。
お前は死に怯えているフリをして、頭の中では別の事を考えていたんじゃないか?」
そう言って滝川晴人を、今度こそ立ち去っていった。
彼の最後の言葉。
僕には何を言っていたのか、さっぱりわからなかった。
まるで心当たりがない。まるで心当たりがない。まるで心当たりがない。
まるで・・・・・・
僕の脳内では、彼の言葉は不要な物として削除された。
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