アンリミテッドペイン

チョーカー

葛藤と決闘の申し込み

 彼女は泣いた。
 まるで子供のように泣きじゃくっていた。
 おそらく、佳那の言葉は事実だったのだろう。
 しかし、それでも、なぜ?
 頭が混乱する。
 「あかりは俺のことを嫌っていたんじゃ・・・・・・」
 俺の言葉に反応して、あかりが顔を上げる。
 大粒の涙が頬を伝って、溢れ落ちていた。
 「嫌い。嫌いだよ。城一郎くんなんて」 
 彼女は怒っていた。普段の彼女からは想像すら難しい怒鳴り声を俺に向ける。

「なんで?なんでリアルはダメなの?なんで現実よりもバーチャルを優先するの?
 私を否定してるのは、城一郎くんの方じゃない!?」

 俺の方?俺があかりを否定していた?

 「そうだよ。私を置いていかないで、無視しないで!?」

 頭を殴られたかのような衝撃だった。
 無視してたのは俺の方?俺があかりを見ていなかったのか?

 「城一郎くんなんて大嫌いだよ!?」

 俺は・・・・・・ 俺は・・・・・・

 俺はどうすればいい?俺は彼女に何ができる?
 嗚呼、なんて馬鹿なことを。決まっているじゃないか。
 俺ができる事は1つだけなのに。1つしかないのに。

 俺は制服のポケットから、タブレット端末を取り出し、電話をかける。

 「もしも、先日、電話しました。霞城一郎です。はい。そうです。例の件でお願いします。
 決まりました。時間は今晩で。」

 俺は電話を切ると再びあかりの方へ向いた。

 「あかり」

 名前を呼ばれた彼女は、普段通りの笑顔を見せた。
 いや、違うな。その笑顔が俺に向けられたのは数年ぶりだ。
 そして、彼女は返事をする。

 「なあに?城一郎くん?」

 彼女は、まるで俺と仲が良かった時代に戻ってしまったような口調だ。
 動揺がないと言えば嘘になるが、俺はそれを押さえ込む。

 「お前は俺と『ハイトゥン・イー』の試合を、同期した俺のPCを通して見てたわけだろ?」

 「ん~ そうだね。その通りだよ」

 「つまり、お前のPCにも『アンリミテッドペイン』のデータがインストールされているわけだよな?」

 「いや、そんなゲームの話なんてしないでよ」

 「いいや。させてもらう。少なくとも、自分で『アンリミテッドペイン』をインストールしているか、俺のPCを通じて自動インストールされているはずだ」

 「それが、それがなんだっていうの!」

 あかりの声は叫び声に近かった。
 彼女にとってすべての元凶。いや、元凶は俺自身か?
 少なくとも、原因の一片である、ゲームの名前を聞くのも苦痛のはずだ。
 だけれども、俺もここで引くわけにはいかない。

 「今晩、俺とお前、全ての決着をつけたい。『アンリミテッドペイン』で勝負してくれ」
 「え?」

 「もしも、お前が、俺との関係がこのままで良いというなら断ってくれても構わない。
 しかし、昔のように戻りたいという気持ちがあるなら受けてくれ。頼む」

 俺は深々と頭を下げ、こう伝えた。

 「ルールは・・・・・・

 『アンリミテッドペイン』

 だ」

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