アンリミテッドペイン

チョーカー

戦闘そして、敗北の後

 『アンリミテッドペイン』からログアウトした俺は———

 「うがああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!?」

 俺は発狂していた。

 負けたくない。俺は負けるのは嫌だ。
 俺は『アンリミテッドペイン』の上位ランカーだ。
 しかし、無敗というわけではない。そりゃ負けるときは負ける。
 当たり前だ。いつでも誰とやっても、勝てる試合をやって何が楽しい?
 と、そんな事を言って自分を誤魔化す。嗚呼、誤魔化しだ。
 負けるのが当たり前?
 それで納得できるなら、俺は『アンリミテッドペイン』の上位ランカーまで上り詰めていない。
 負けて、納得できる程度なら、俺は『アンリミテッドペイン』をやってない。
 他にないから・・・・・・。
 他に、自分の存在を肯定できる媒体がない。
 勉強ができるわけでもない。面白い事を言えるわけでもない。
 顔が良いわけでもなく、オシャレでもない。
 趣味と言う趣味が持てず、他に何もない。
 残ったのが『アンリミテッドペイン』と『痛み傷ペインウーンド』だけだ。
 本当は悔しくて、悔しくて、悔しくて・・・・・・。 

 「畜生、畜生、こんちくしょ!?HPヒットポイント管理なんて基礎中の基礎だろが!?何やってんだ?俺は!?」

 敗因は、分かっている。
 楽しみ過ぎて、ゲームとしてのシステム面が頭から抜けていた。
 いくら本人に戦う気があっても、HPが0になったら負けだ。

 俺はベットの上で枕を相手にマウントポジションを展開。
 枕が反撃できない事をいいことに、タコ殴りの八つ当たりをしていた。
 次にやる時はこうやってやるとか、ああしてやるとか
 蛇口が壊れた水道のように戦いのイメージが頭からこぼれ落ちそうになるほど湧いてくる。

 「もう一回だ。勝ち逃げなんか許すかよ!勝つまでやってやんよ」

 俺は再び、『アンリミテッドペイン』にログイン。
 まだ、『ハイトゥン・イー』がログインしているか、検索をかける。
 しかし、いくら探しても見つからない。彼女はログアウトしてしまったみたいだ。

 「どうするか?明日、学校で再戦を申し込むか?」

 『アンリミテッドペイン』から再びログアウトした俺は、再び彼女と戦う算段をしていた。
 不意に俺のタブレット端末から電子音が鳴り響いた。
 電話だ。そして、電話の相手として表示された名前は『向里佳那』
 いつ登録していた?一瞬、思考がフリーズした。
 しかし、すぐに思い出した。
 確かに昨日の放課後、彼女自身が登録していたのだった。

 恐ろ恐ろとタブレット端末を操作。耳に添えると彼女の声が聞こえてきた。
 「こんばんわ。霞城一郎くん」
 負けた直後だからか?普通の挨拶が癇に障る。
 そのまま、無言でいると
 「もしもし?城一郎くん?えっと、そちらは霞城一郎くんの御電話で間違いありませんか?」
 「・・・・・・・・・・・・」
 「えっと、すいません。どうやら間違えたみたいです。すません。ごめんなさい」
 「いや、合ってるよ」
 「・・・・・・怒ってもいいかしら?」
 声に本気の怒気が含まれている。
 「電波が悪くてねぇ。それと敗北直後で機嫌も悪いんだ」
 彼女は、俺の発言を冗談と思ったのだろう。くすくすと笑い声が聞こえてくる。
 「どうすれば、機嫌は直ってくれるのかしら?」
 「リベンジマッチ。もう一試合だ」
 「いいわ。ただし、条件があるわ」
 「わかった。その条件を呑もう」
 俺は即答する。
 「・・・・・・ずいぶんと聞き分けがいいのね。条件の内容も聞かないなんて」
 「一応、確認しておくが、「死ね」とか「金貸して」じゃないよな?」
 「貴方は、私の事をそんな女の子だと思っているの?」
 「思っていないから即答した」
 彼女が息を飲む姿が電話を通して伝わってきた。
 「これは、その条件の範囲外だけれど、今から会えないかしら?」
 俺は時間を確認する。
 時刻は7時15分。
 『アンリミテッドペイン』での試合開始が7時ジャスト。
 それから15分しか経っていなかった。時間の進みが遅い事に驚く。
 だが、夜だ。学生が出歩く時間として世間的にどうだろうか?
 まぁ、許容範囲だろう。本日、学校をサボった身としては心苦しい部分もあるが・・・・・・。

 「よし、会おう」

 俺は返事を返した。

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