アンリミテッドペイン
狂乱への開幕
両者は対峙する。
彼女は『ハイトゥン・イー』
短い黒髪。丈が長めのチャイナドレス。
全体的に艶やかな赤で統一された女性型アバター。
俺は『痛み傷』
黒い胴着を身に着けている。その胴着には赤い炎が派手に描かれいる。
イメージで言えば、昔の空手家の格好に近い。
男性型のアバター。
間合い。離れた距離は約3メートル。
『ハイトゥン・イー』の尋常ではない脚力を持ってしても、この距離から奇襲的に攻めてはこれない・・・・・・はず。
俺は一歩、踏み出す。
彼女は、一歩下がる。
俺は一歩、踏み出す。
彼女は、一歩下がる。
今度は彼女が一歩踏み出す。
俺は一歩下がる。
この繰り返し。間合いが縮まらない。
まるで両者の空間に、不可侵の物体が存在しているかのように錯覚する。
どちらが、この不可視の物体を壊すか?
俺の中で様々な感情が膨らんでいく。感情の多くを占めるのは恐怖心。
しかし、歓喜?狂喜?喜悦?
この状況を、この恐怖を楽しんでいる俺が存在している。
その感情が俺を後押しする。早く戦えと急かしてくる。
俺は踏み込み間合いを詰めた。空間に踏み込むと同時に感じる圧迫感。
この数瞬後に何が起きるかわからない未知の空間に踏み込んだ。
だが―――
狙われていた。最初から、このタイミングを。
俺が踏み出したと同時に、彼女も踏み出す。
俺が一歩だけ前に出る。それと同時に彼女は二歩、前に出る。
俺が二歩目を踏み出した時、彼女は駆け出していた。
彼女は走ってくる。俺に向かい、全力疾走。
俺は完全な後手に回された。彼女は先手。何を狙い、何を繰り出す?
彼女は飛び上がる。全力疾走から加速した肉体を空に舞わせる。
俺に向かって、俺に向かって、俺に向かって・・・・・・。
彼女が繰り出した技は飛び膝蹴り。
キックボクシングで言うところの真空飛び膝蹴り。
衝撃は顔面を襲う。
彼女の膝と俺の顔面。その隙間にねじ込ませた右腕が彼女の膝をガードする。
しかし、真空飛び膝蹴りは、全力の体当たりと等しい衝撃を持った技。
片腕で衝撃を押さえ込むのは不可能だ。
視線が上へ向いていく。バーチャルが再現した青空が見えてくる。
体が倒れようとしている。だが、俺の意識は失われていない。
彼女の細い腰へ片腕を回す。そのまま、強く、強く抱き締めた。
もう片方の腕は彼女の足、俺を襲った膝を抱え込む。
倒れ行く体に反抗し、足腰に力を込める。
そのまま、背中だけ後方へ反り返らせていく。
フロントスープレックスの型。正確に言えばキャプチュードと言うプロレスの投げ技だ。
反り返る体。そのまま重力に任せ、地面へ投げ落とす。
彼女と接触した部分から、衝撃が伝わってくる。それは確かな手ごたえ。
彼女から両手の捕縛を解いて、立ち上がる。
「へぇ~」
と俺は、できるだけ平然を装い声を出す。内心の驚きは漏れなかっただろうか?
彼女は立っていた。俺が彼女から目を離したのは、俺が立ち上がる間の僅かな時間のみ。
俺が立ち上がると、同時に彼女も立ち上がっていた・・・・・・という事なのだろう。
再び構える両者。二人共、構えたまま微動だにしない。
まるで最初の間合いの取り合いを繰り返しているかのように見える。
しかし、そう見えるだけだ。
実際には、互いの初弾。戦い、一手目から大技の応酬。
そのダメージが、体の奥まで浸透していて、動けないと言うのが正しい。
どちらが先にダメージから回復するか?
先に動けるようになった方が、動けない方へ一方的な攻撃が可能。
そのアドバンテージは計り知れない。そのまま決着がつく可能性も・・・・・・。
思考が止まる。先に動いたのは彼女『ハイトゥン・イー』だった。
俺は・・・・・・。まだ回復までは程遠い。
彼女は『ハイトゥン・イー』
短い黒髪。丈が長めのチャイナドレス。
全体的に艶やかな赤で統一された女性型アバター。
俺は『痛み傷』
黒い胴着を身に着けている。その胴着には赤い炎が派手に描かれいる。
イメージで言えば、昔の空手家の格好に近い。
男性型のアバター。
間合い。離れた距離は約3メートル。
『ハイトゥン・イー』の尋常ではない脚力を持ってしても、この距離から奇襲的に攻めてはこれない・・・・・・はず。
俺は一歩、踏み出す。
彼女は、一歩下がる。
俺は一歩、踏み出す。
彼女は、一歩下がる。
今度は彼女が一歩踏み出す。
俺は一歩下がる。
この繰り返し。間合いが縮まらない。
まるで両者の空間に、不可侵の物体が存在しているかのように錯覚する。
どちらが、この不可視の物体を壊すか?
俺の中で様々な感情が膨らんでいく。感情の多くを占めるのは恐怖心。
しかし、歓喜?狂喜?喜悦?
この状況を、この恐怖を楽しんでいる俺が存在している。
その感情が俺を後押しする。早く戦えと急かしてくる。
俺は踏み込み間合いを詰めた。空間に踏み込むと同時に感じる圧迫感。
この数瞬後に何が起きるかわからない未知の空間に踏み込んだ。
だが―――
狙われていた。最初から、このタイミングを。
俺が踏み出したと同時に、彼女も踏み出す。
俺が一歩だけ前に出る。それと同時に彼女は二歩、前に出る。
俺が二歩目を踏み出した時、彼女は駆け出していた。
彼女は走ってくる。俺に向かい、全力疾走。
俺は完全な後手に回された。彼女は先手。何を狙い、何を繰り出す?
彼女は飛び上がる。全力疾走から加速した肉体を空に舞わせる。
俺に向かって、俺に向かって、俺に向かって・・・・・・。
彼女が繰り出した技は飛び膝蹴り。
キックボクシングで言うところの真空飛び膝蹴り。
衝撃は顔面を襲う。
彼女の膝と俺の顔面。その隙間にねじ込ませた右腕が彼女の膝をガードする。
しかし、真空飛び膝蹴りは、全力の体当たりと等しい衝撃を持った技。
片腕で衝撃を押さえ込むのは不可能だ。
視線が上へ向いていく。バーチャルが再現した青空が見えてくる。
体が倒れようとしている。だが、俺の意識は失われていない。
彼女の細い腰へ片腕を回す。そのまま、強く、強く抱き締めた。
もう片方の腕は彼女の足、俺を襲った膝を抱え込む。
倒れ行く体に反抗し、足腰に力を込める。
そのまま、背中だけ後方へ反り返らせていく。
フロントスープレックスの型。正確に言えばキャプチュードと言うプロレスの投げ技だ。
反り返る体。そのまま重力に任せ、地面へ投げ落とす。
彼女と接触した部分から、衝撃が伝わってくる。それは確かな手ごたえ。
彼女から両手の捕縛を解いて、立ち上がる。
「へぇ~」
と俺は、できるだけ平然を装い声を出す。内心の驚きは漏れなかっただろうか?
彼女は立っていた。俺が彼女から目を離したのは、俺が立ち上がる間の僅かな時間のみ。
俺が立ち上がると、同時に彼女も立ち上がっていた・・・・・・という事なのだろう。
再び構える両者。二人共、構えたまま微動だにしない。
まるで最初の間合いの取り合いを繰り返しているかのように見える。
しかし、そう見えるだけだ。
実際には、互いの初弾。戦い、一手目から大技の応酬。
そのダメージが、体の奥まで浸透していて、動けないと言うのが正しい。
どちらが先にダメージから回復するか?
先に動けるようになった方が、動けない方へ一方的な攻撃が可能。
そのアドバンテージは計り知れない。そのまま決着がつく可能性も・・・・・・。
思考が止まる。先に動いたのは彼女『ハイトゥン・イー』だった。
俺は・・・・・・。まだ回復までは程遠い。
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