アンリミテッドペイン
勝者の報酬
2人、肉体が絡み合ったまま、地面に激突する。
俺が上、ハメルトンが下。
ハメルトンは俺の片足―――右足を自分の両足で絡めてくる。
両腕は俺の胴体を必死に抱きしめている。
いわゆるハーフマウントの状態。
少なからず驚かされた。寝技を知らないと思っていたが、最低限の知識―――やってはいけない事とやらないといけない事はわかっているじゃないか。
俺の体に密着したハメルトンを押しはがそうと、彼の顔面と俺の胴体の隙間に右手を差し入れる。
そのまま、上半身を起こしながら、奴の顔面を押し剥がそうとする。
ハメルトン、離れない。
今度は腕立て伏せの状態で上半身を起こす。
ハメルトンは、まるでコアラの子供のように引っ付いてはなれない。
俺は、そのまま両腕の力を抜き、彼を地面に叩きつける。
地面と俺の胸に押し潰されるが、まだ必死にしゃがみ付いている。
もう一度、同じ動作を繰り返し地面に叩きつける。
まだ剥がれない。
もう一度、3発目―――そう思わせる。
そう思わせて、俺の片足に絡めているハメルトンの足を右手で押す。
わずかに広がる隙間。それを利用して俺は右足を引き抜く。
状態は馬乗り状態へ
しかし、まだ完璧ではない。この状態は、上半身を起こして、一方的に打撃が入れられるようになって、初めて完成と言える。
再び、ハメルトンの顔面に腕を差し込んで、強引に押し出す。
まだ外れない。
今度は胸で押しつぶした状態から、軽くパンチを入れる。
ダメージを奪うものではない。相手の抱きしめを剥がすのが目的であり、バランスが不安定になるような強打を狙ってはいけない。
不完全な馬乗り状態は横の動きに弱い。
相手と密着した状態で、強引にひっくり返されて、自分が下に追い込まれてしまう場合が多々ある。
だから、コツ、コツと軽く。嫌がらせの為だと思って、小さく小まめに素早く殴らなければならない。
それを繰り返していく、明らかにハメルトンの力が低下していくのがわかる。
寝技は下になった者の疲労は上になった者の3倍という。
これは確か、J-DOの理屈だったか?
確かに人1人分の重さが、自分の上で自由に動こうとしているのを阻止しなければならないのだ。
寝技のスタミナロスは驚くほどに多い。
さて―――
ハメルトンの力が緩んだのを確信して、一気にハメルトンの顔面を押し剥がしにかかる。
ついにハメルトンの両手のクラッチは外れ、俺は上半身を起こした。
これで完璧なマウントポジションが完成される。
今度の打撃は、嫌がらせのためではない。
小刻みにコツコツ殴る?とんでもない。
上から下へ。体重を乗せたパンチを振り下ろしていく。
ガード?そんなの関係ない。ガードの上からでも容赦なくパンチを落とす。
それでも十分にダメージを入れれるのだ。
1発、2発、3発。4発?5発?6発?もう、数えてられない。
おっと、下からハメルトンがブリッチで跳ねる。
まるでロデオマシンごっこ。
俺は落ち着いてバランスを整える。人間が上に乗った状態でブリッチを連続して行うのは困難だ。
俺は相手が動けなくのを待てばいいだけ。
ハメルトンの動きが止まるの待ち、拳を振り落とすのを再開させる。
やがて、ハメルトンの顔面は熟れた果実のように変形していく。
ついに耐え切れなかったのか、ハメルトンは一番やってはいけない行為をしてしまう。
それは、腕で俺の体を押し返そうとすることだ。
俺に向かってくるハメルトンの片手を両手でキャッチ。
掴んだのは奴の右腕。俺は右足を空中の滑らせるように動かす。
そして、一瞬の体重移動。
俺の右足はハメルトンの首に絡める。
俺の左足はハメルトンの胸に投げ出される。
俺の両手はハメルトンの右腕を掴んでいる。
俺は肉体を重力に従わせ、後方へと倒れた。
そして―――
腕ひしぎ十字固めが完成された。
人間の腕が伸びていく感触。
それはやがて、伸びていく感覚から反り曲がっていく感覚へ変化していく。
腕の可動域限界を迎えた瞬間、ハメルトンの口から、声にならない音が発せられた。
意識してみると、ハメルトンの腕に設定されているHPが、ガリガリと減少していくが見える。
HPは、その減り具合がひと目でわかるよう、グリーンゾーン、イエローゾーン、レッドゾーンと分けられており、ダメージを受ける毎に黒色で染まっていく。
そして、ハメルトンのゲージは、全てが黒色に変化した。
俺の頭上に勝者(winner)の文字が浮かび上がり
ハメルトンの頭上には敗者(loser)の文字が浮かび上がり
ハメルトンのアバターは消滅した。
静まり返った会場に声が響く。
『勝者、痛み傷選手。彼とハメルトン選手には拍手をお送りください』
暴走天使長ユズキちゃんのアナウンスが流れた。
直後、会場の観客。数万人の人間から声援と拍手が送られる。
彼らは観客であるであると同時に、そのほとんどは現役のプレイヤーであり、競い合うライバルである。
ゆえに彼らは、戦いの困難さを理解し、勝者に有らんばかりの敬意を賞賛を送ってくるのだ。
俺は彼らの声援に対して、拳を振り上げて答えた。
俺が上、ハメルトンが下。
ハメルトンは俺の片足―――右足を自分の両足で絡めてくる。
両腕は俺の胴体を必死に抱きしめている。
いわゆるハーフマウントの状態。
少なからず驚かされた。寝技を知らないと思っていたが、最低限の知識―――やってはいけない事とやらないといけない事はわかっているじゃないか。
俺の体に密着したハメルトンを押しはがそうと、彼の顔面と俺の胴体の隙間に右手を差し入れる。
そのまま、上半身を起こしながら、奴の顔面を押し剥がそうとする。
ハメルトン、離れない。
今度は腕立て伏せの状態で上半身を起こす。
ハメルトンは、まるでコアラの子供のように引っ付いてはなれない。
俺は、そのまま両腕の力を抜き、彼を地面に叩きつける。
地面と俺の胸に押し潰されるが、まだ必死にしゃがみ付いている。
もう一度、同じ動作を繰り返し地面に叩きつける。
まだ剥がれない。
もう一度、3発目―――そう思わせる。
そう思わせて、俺の片足に絡めているハメルトンの足を右手で押す。
わずかに広がる隙間。それを利用して俺は右足を引き抜く。
状態は馬乗り状態へ
しかし、まだ完璧ではない。この状態は、上半身を起こして、一方的に打撃が入れられるようになって、初めて完成と言える。
再び、ハメルトンの顔面に腕を差し込んで、強引に押し出す。
まだ外れない。
今度は胸で押しつぶした状態から、軽くパンチを入れる。
ダメージを奪うものではない。相手の抱きしめを剥がすのが目的であり、バランスが不安定になるような強打を狙ってはいけない。
不完全な馬乗り状態は横の動きに弱い。
相手と密着した状態で、強引にひっくり返されて、自分が下に追い込まれてしまう場合が多々ある。
だから、コツ、コツと軽く。嫌がらせの為だと思って、小さく小まめに素早く殴らなければならない。
それを繰り返していく、明らかにハメルトンの力が低下していくのがわかる。
寝技は下になった者の疲労は上になった者の3倍という。
これは確か、J-DOの理屈だったか?
確かに人1人分の重さが、自分の上で自由に動こうとしているのを阻止しなければならないのだ。
寝技のスタミナロスは驚くほどに多い。
さて―――
ハメルトンの力が緩んだのを確信して、一気にハメルトンの顔面を押し剥がしにかかる。
ついにハメルトンの両手のクラッチは外れ、俺は上半身を起こした。
これで完璧なマウントポジションが完成される。
今度の打撃は、嫌がらせのためではない。
小刻みにコツコツ殴る?とんでもない。
上から下へ。体重を乗せたパンチを振り下ろしていく。
ガード?そんなの関係ない。ガードの上からでも容赦なくパンチを落とす。
それでも十分にダメージを入れれるのだ。
1発、2発、3発。4発?5発?6発?もう、数えてられない。
おっと、下からハメルトンがブリッチで跳ねる。
まるでロデオマシンごっこ。
俺は落ち着いてバランスを整える。人間が上に乗った状態でブリッチを連続して行うのは困難だ。
俺は相手が動けなくのを待てばいいだけ。
ハメルトンの動きが止まるの待ち、拳を振り落とすのを再開させる。
やがて、ハメルトンの顔面は熟れた果実のように変形していく。
ついに耐え切れなかったのか、ハメルトンは一番やってはいけない行為をしてしまう。
それは、腕で俺の体を押し返そうとすることだ。
俺に向かってくるハメルトンの片手を両手でキャッチ。
掴んだのは奴の右腕。俺は右足を空中の滑らせるように動かす。
そして、一瞬の体重移動。
俺の右足はハメルトンの首に絡める。
俺の左足はハメルトンの胸に投げ出される。
俺の両手はハメルトンの右腕を掴んでいる。
俺は肉体を重力に従わせ、後方へと倒れた。
そして―――
腕ひしぎ十字固めが完成された。
人間の腕が伸びていく感触。
それはやがて、伸びていく感覚から反り曲がっていく感覚へ変化していく。
腕の可動域限界を迎えた瞬間、ハメルトンの口から、声にならない音が発せられた。
意識してみると、ハメルトンの腕に設定されているHPが、ガリガリと減少していくが見える。
HPは、その減り具合がひと目でわかるよう、グリーンゾーン、イエローゾーン、レッドゾーンと分けられており、ダメージを受ける毎に黒色で染まっていく。
そして、ハメルトンのゲージは、全てが黒色に変化した。
俺の頭上に勝者(winner)の文字が浮かび上がり
ハメルトンの頭上には敗者(loser)の文字が浮かび上がり
ハメルトンのアバターは消滅した。
静まり返った会場に声が響く。
『勝者、痛み傷選手。彼とハメルトン選手には拍手をお送りください』
暴走天使長ユズキちゃんのアナウンスが流れた。
直後、会場の観客。数万人の人間から声援と拍手が送られる。
彼らは観客であるであると同時に、そのほとんどは現役のプレイヤーであり、競い合うライバルである。
ゆえに彼らは、戦いの困難さを理解し、勝者に有らんばかりの敬意を賞賛を送ってくるのだ。
俺は彼らの声援に対して、拳を振り上げて答えた。
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