≪インフィニティ≫ ~日常編~
黒猫、クハージュ
にゃーん。
サウザンドストリート、マーズ・リッペンバーの家の傍にあったダンボールから聞こえるその鳴き声に、マーズは目をそちらに向けていた。
ダンボールの中には猫が入っていた。
黒猫だ。黒猫は不吉の象徴ともいわれているが、そんなことはどうだっていい。普通に考えて落ちている子猫に何の感情も抱かない人間などいるのだろうか? 猫アレルギーならば話は別だが、生憎マーズはそういう類ではなかったし、しかも女の子であったから直ぐにそれに食いついた。
「猫だー!」
マーズはそう言って猫に駆け寄る。しゃがんで猫を眺める。
「猫かわいー」
そう言って猫の頭を撫でる。指を顔の前に出すと、舌を出してペロペロと舐めている。
「もしかしてお腹が空いたのかな?」
マーズはカバンからパンを取り出した。おやつに購入しておいた甘いパンだ。コーヒーなどは入っていないはずだから猫にあげても問題ないだろう――マーズはそう思いながら一口分ちぎって猫にあげる。猫はマーズの言うとおりお腹が空いていたらしく直ぐにそれにかぶりついた。
そのパンは砂糖が塗してあったのだが、猫は口の周りに砂糖がついていた。それくらいかぶりついていたのだ。
「砂糖が口についちゃってるよー……」
マーズは持っていた紙で猫の口を拭いた。
「まったく仕方ないなあ……」
彼女はそこまで言って、考えた。
このまま猫を置きっぱなしにしてしまっては、自分の良心が痛む。
かといって連れ込んでしまっては崇人がどう言うか解らない。
「……ま、別に家主は私だし問題ないっか」
そう言って、彼女はダンボールを持ち上げて自分の家へと持っていった。
◇◇◇
「……おい、これっていったいどういうことだ?」
崇人が状況を把握できずマーズに訊ねたが、マーズは笑って首を傾げた。
「どうしたのかしら、特に何もないわよ?」
「いやいやいや! 俺の目の前にいる猫! 猫がいるじゃねえか!」
それを聞いて猫は怯えてマーズの後ろに隠れてしまった。原因は崇人が大声を出してしまったからだろう。
「ほらー、クハージュが怖がってるでしょ?」
「……クハージュ?」
「クハージュ、よ。彼の名前。確認したらオスだったから、クハージュって名前にしたの!」
「いや、オスだからその名前に落ち着いたのがよく解らないんだが……」
それはそれとして。
「いやいや、そういうことよりどうして猫がここにいるのか……それを聞かせてくれよ」
「あら、何か問題でも? 別にあなたは猫アレルギーでもなんでもないでしょう?」
「ぐぬぬ……それはそうだが……」
崇人はそう言いながらその言葉から逃げるようにキッチンへと逃げ込んだ。
マーズは猫を抱きかかえながら、呟く。
「……猫はほんとに可愛い」
――ただ、それだけの話だった。
後日。
コルネリアが家にやってきたときの話。
「……あの、マーズさん?」
コルネリアは猫と対峙していた。それを見ていたマーズは明らかに笑いを堪えながら、
「な……なに? ……んふっ、どうかした?」
「それ明らかに笑いを堪えてますよね!? そんなことより猫がどうしてここにいて私を睨みつけているのか、それを聞かせて欲しいんですけど!」
その声を聞いてクハージュはマーズの方へ走って逃げてしまった。そんなマーズはコルネリアに出す紅茶を作っていた。
それを見てマーズはクハージュの頭を撫でる。
「大丈夫よ、彼女は安心できるから。…………主に胸で」
「今の間はなんですか!」
コルネリアはそう言って立ち上がる。
「その豊満な胸を見て言ったわけじゃないわよ?」
「バレバレですよっ!!」
コルネリアは顔を真っ赤にさせて叫んだ。そのタイミングでコルネリアのたわわな胸がぽよんと弾んだ。
そんな、なんだかどうでもいいようなどうでもないような話であった。
余談だが、この話が特に本編の流れに組み込まれる重要な話だとかそういうわけではなくて、ただの日常回であることは、もう読んでいる人なら周知の事実だろう。
サウザンドストリート、マーズ・リッペンバーの家の傍にあったダンボールから聞こえるその鳴き声に、マーズは目をそちらに向けていた。
ダンボールの中には猫が入っていた。
黒猫だ。黒猫は不吉の象徴ともいわれているが、そんなことはどうだっていい。普通に考えて落ちている子猫に何の感情も抱かない人間などいるのだろうか? 猫アレルギーならば話は別だが、生憎マーズはそういう類ではなかったし、しかも女の子であったから直ぐにそれに食いついた。
「猫だー!」
マーズはそう言って猫に駆け寄る。しゃがんで猫を眺める。
「猫かわいー」
そう言って猫の頭を撫でる。指を顔の前に出すと、舌を出してペロペロと舐めている。
「もしかしてお腹が空いたのかな?」
マーズはカバンからパンを取り出した。おやつに購入しておいた甘いパンだ。コーヒーなどは入っていないはずだから猫にあげても問題ないだろう――マーズはそう思いながら一口分ちぎって猫にあげる。猫はマーズの言うとおりお腹が空いていたらしく直ぐにそれにかぶりついた。
そのパンは砂糖が塗してあったのだが、猫は口の周りに砂糖がついていた。それくらいかぶりついていたのだ。
「砂糖が口についちゃってるよー……」
マーズは持っていた紙で猫の口を拭いた。
「まったく仕方ないなあ……」
彼女はそこまで言って、考えた。
このまま猫を置きっぱなしにしてしまっては、自分の良心が痛む。
かといって連れ込んでしまっては崇人がどう言うか解らない。
「……ま、別に家主は私だし問題ないっか」
そう言って、彼女はダンボールを持ち上げて自分の家へと持っていった。
◇◇◇
「……おい、これっていったいどういうことだ?」
崇人が状況を把握できずマーズに訊ねたが、マーズは笑って首を傾げた。
「どうしたのかしら、特に何もないわよ?」
「いやいやいや! 俺の目の前にいる猫! 猫がいるじゃねえか!」
それを聞いて猫は怯えてマーズの後ろに隠れてしまった。原因は崇人が大声を出してしまったからだろう。
「ほらー、クハージュが怖がってるでしょ?」
「……クハージュ?」
「クハージュ、よ。彼の名前。確認したらオスだったから、クハージュって名前にしたの!」
「いや、オスだからその名前に落ち着いたのがよく解らないんだが……」
それはそれとして。
「いやいや、そういうことよりどうして猫がここにいるのか……それを聞かせてくれよ」
「あら、何か問題でも? 別にあなたは猫アレルギーでもなんでもないでしょう?」
「ぐぬぬ……それはそうだが……」
崇人はそう言いながらその言葉から逃げるようにキッチンへと逃げ込んだ。
マーズは猫を抱きかかえながら、呟く。
「……猫はほんとに可愛い」
――ただ、それだけの話だった。
後日。
コルネリアが家にやってきたときの話。
「……あの、マーズさん?」
コルネリアは猫と対峙していた。それを見ていたマーズは明らかに笑いを堪えながら、
「な……なに? ……んふっ、どうかした?」
「それ明らかに笑いを堪えてますよね!? そんなことより猫がどうしてここにいて私を睨みつけているのか、それを聞かせて欲しいんですけど!」
その声を聞いてクハージュはマーズの方へ走って逃げてしまった。そんなマーズはコルネリアに出す紅茶を作っていた。
それを見てマーズはクハージュの頭を撫でる。
「大丈夫よ、彼女は安心できるから。…………主に胸で」
「今の間はなんですか!」
コルネリアはそう言って立ち上がる。
「その豊満な胸を見て言ったわけじゃないわよ?」
「バレバレですよっ!!」
コルネリアは顔を真っ赤にさせて叫んだ。そのタイミングでコルネリアのたわわな胸がぽよんと弾んだ。
そんな、なんだかどうでもいいようなどうでもないような話であった。
余談だが、この話が特に本編の流れに組み込まれる重要な話だとかそういうわけではなくて、ただの日常回であることは、もう読んでいる人なら周知の事実だろう。
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