「魔王様」の定義

神無乃愛

一応、美味しいものの対価だそうです

 そんな時だった。

 ぐらりと達樹が倒れたのだ。


 今まで以上の発作と、意識の低下。
 危篤状態である。

 そう、薬も切れて久しい。いつなってもおかしくは無かった。
 それをずっと支えていたのが、エルフリーデである。

 こっそりと治癒魔法を使い、達樹を支え続けていた。
 それですら手遅れと言いたいのか。

「姉さん……」
 神殿の魔法医師ウィッチドクターが総出で治癒にあたるも、達樹の意識は戻らない。
 エルフリーデも関わっているが、それすらも及ばない。

 無力だ。

 全員が絶望に陥った。


「絶望とは甘美であるな」
 魔王の声がこだました。
「ななななな何しにきたんですかぁぁぁぁ!!」
 エリの慌てた声が部屋に響き渡った。
「せっかく面白き人の子に会えたばかりで、いなくなるはつまらぬ」
 それだけ言って、達樹の身体に手を添えた。
「光ばかりが治癒ではない。人の子よ、しばらく余を楽しませよ」
 それだけが理由らしく、何かを施すとあっという間にいなくなった。
 そして、達樹の意識が戻ったのだ。

 達樹に言わせれば、「やりかねない」という一言で魔王の行動に言及することは無かった。

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