「魔王様」の定義
何とか目的地を見つけられました
浮いた、動いたと歓声をあげ、はしゃぎ回る子供たちと、驚き、何かに備えようとする大人たち。それを横目で見ながら達樹は移動軸を固定していく。
まずは魔王領と人間領の間にある砂漠へ向かう。
前回歩きの旅のときはここを通らないように考慮していた。
理由はいくつかあり、一つは達樹の身体のため、もう一つは、人間が住む領域ではないということだ。
今回ばかりはそうもいっていられない。何せ、未開の土地にこの自治領を根付かせるのだ。
「行ったら、オアシスの主に挨拶しなきゃなぁ……」
新参者が行くのだ。菓子折りとまではいかなくとも、挨拶は必要だろう。
「翠兄、千夏姉、砂漠の魔物って聞くとなにを思い浮かべる?」
「色々いるけど? 有名どころだとマミーとか?」
「あとはロック鳥、パズズ、バツ、ラミア。意外なところでトウテツとかな」
「バジリスクとリザードマンも入れないと」
そこまで言われてもどうしようもないと思ったのは、どうやら達樹だけではないらしい。千紘やシスまで呆れた顔をしていた。
「……もういいです。ありがとう。で、その中で砂漠、もしくはオアシスを守っているものと言ったら?」
「オアシスとかじゃなく、『守り』っていう意味でなら、スフィンクスとギルタブルルだろうな。スフィンクスは有名だろ?」
「なぞなぞ……だっけ?」
達樹のあやふやな答えに、翠と千夏はにっこり笑って頷いた。
「それだけじゃないでしょ? 何考えてんの?」
「どうせ行くなら『守り』の方がいる砂漠に行きたいと思っただけ。その方が恩恵にあずかりやすいし。ただ、いきなり戦闘になると、オアシスの恩恵がなくなっちゃいそうだから、穏便にすまそうななぁって」
「あんたが、『穏便に済ます』!? 天変地異の前触れ!?」
周囲に他の住民がいるにもかかわらず、千夏は大きな声をあげた。
「人聞き悪いよ、千夏姉。俺は今までだってなるべく穏便に済ませてるよ」
「どこがだ」
そう言ってきたのはシスだった。全員酷いと思ったが、「自業自得」と満場一致で言われてしまった。
どうやら自治領に住む人々にもその話は伝わっているらしく、笑って終わった人が多数だった。「聖女様をこのように扱うなど……」と怒る住民もいなくはなかったが、他に方法があったのか、となれば誰一人答えられずにいた。
「ちなみに、他に方法ってなかったの?」
「あることはあったけど?」
千佳の問いに達樹はあっさり答えた。
「一番簡単なのは、住民と聖女様を見捨てることかな? あとはどちらかを見捨てる方法とかね」
「いきなりそういうこと言わないの」
「せっかくエルフリーデさんが提案してくれたんだし、移動するものの大きさを大きくしてみようと思っただけだよ」
「大きくなりすぎだ」
シスが笑って入ってきた。
「……シス、神殿の関係者と自警団に裏切り者がいる」
「だろうね。君の動きからしてそうだと思っていたよ。で、誰だい?」
「まだ分からない。その前に住む場所とそこの主の許可を取ろうと思ってる。とりあえず酒ってあったっけ」
「……ある」
「俺と千紘兄、シスとエリザベスさんで行くことにする。……二人はどうしようかなぁ」
エリとエルフリーデ、この二人を連れて行くか、行かないかが問題なのだ。
「連れて行ったほうがいいと思う。裏切り者がグレス聖王国に連れて行ってしまうと、後々たいへ……」
「別に大変じゃないよ。その方が楽」
楽な理由を言えば、シスはため息をついた。
「穏便に済ませる気はないんだね」
穏便に済ませようとするからこそ、そういう計画になると言っても誰も信じやしない。
「信じろというほうが無理だぞ」
とどめは千紘だった。
一昼夜、そこそこ速いスピードで動かしていたら何とか目的地近くまで来ることが出来た。
ここからはゆっくりと場所を探していくのだ。
実はこの砂漠、最初に行こうとしていた砂漠とは違うところなのだ。
ただ、達樹に言わせれば「嘘は言っていない」ということになる。
何せ、「魔界領と人間領の間の砂漠」という点では同じなのだ。
未開の地なので、当然地図にも載っていない。
魔界領と人間領に伝承が数点あるだけだ。
当然、知っている砂漠に行って欲しい連中はこのことを隠す。ところがどっこい、達樹は隠されたものを暴くのがかなり得意である。
そしてこの地図は、アリーが描いたもの。諸国をたった一人で旅してきたアリーは地図を大まかに描くことだけが、心休まる一時だったようだ。
「もうそろそろかな?」
砂漠の中にある、大きなオアシス。
斥候を立てれば大体のことは分かる。ここも駄目、あれも駄目。そうやっているうちに、あっという間に日暮れになった。
「まいったなぁ……」
希望に沿うようなオアシスがない。
仕方なく、もう少し進もうとした時だった。
ひゅん。
どうやら矢が飛んできたらしい。
「じじじじ人体と、ささささサソリが合わさった化け物が!!」
ちょうど見回りに行っていた自警団が報告に来た。
「いい場所見つけた」
達樹は少数精鋭で一度大地に降りる決心をつけた。
まずは魔王領と人間領の間にある砂漠へ向かう。
前回歩きの旅のときはここを通らないように考慮していた。
理由はいくつかあり、一つは達樹の身体のため、もう一つは、人間が住む領域ではないということだ。
今回ばかりはそうもいっていられない。何せ、未開の土地にこの自治領を根付かせるのだ。
「行ったら、オアシスの主に挨拶しなきゃなぁ……」
新参者が行くのだ。菓子折りとまではいかなくとも、挨拶は必要だろう。
「翠兄、千夏姉、砂漠の魔物って聞くとなにを思い浮かべる?」
「色々いるけど? 有名どころだとマミーとか?」
「あとはロック鳥、パズズ、バツ、ラミア。意外なところでトウテツとかな」
「バジリスクとリザードマンも入れないと」
そこまで言われてもどうしようもないと思ったのは、どうやら達樹だけではないらしい。千紘やシスまで呆れた顔をしていた。
「……もういいです。ありがとう。で、その中で砂漠、もしくはオアシスを守っているものと言ったら?」
「オアシスとかじゃなく、『守り』っていう意味でなら、スフィンクスとギルタブルルだろうな。スフィンクスは有名だろ?」
「なぞなぞ……だっけ?」
達樹のあやふやな答えに、翠と千夏はにっこり笑って頷いた。
「それだけじゃないでしょ? 何考えてんの?」
「どうせ行くなら『守り』の方がいる砂漠に行きたいと思っただけ。その方が恩恵にあずかりやすいし。ただ、いきなり戦闘になると、オアシスの恩恵がなくなっちゃいそうだから、穏便にすまそうななぁって」
「あんたが、『穏便に済ます』!? 天変地異の前触れ!?」
周囲に他の住民がいるにもかかわらず、千夏は大きな声をあげた。
「人聞き悪いよ、千夏姉。俺は今までだってなるべく穏便に済ませてるよ」
「どこがだ」
そう言ってきたのはシスだった。全員酷いと思ったが、「自業自得」と満場一致で言われてしまった。
どうやら自治領に住む人々にもその話は伝わっているらしく、笑って終わった人が多数だった。「聖女様をこのように扱うなど……」と怒る住民もいなくはなかったが、他に方法があったのか、となれば誰一人答えられずにいた。
「ちなみに、他に方法ってなかったの?」
「あることはあったけど?」
千佳の問いに達樹はあっさり答えた。
「一番簡単なのは、住民と聖女様を見捨てることかな? あとはどちらかを見捨てる方法とかね」
「いきなりそういうこと言わないの」
「せっかくエルフリーデさんが提案してくれたんだし、移動するものの大きさを大きくしてみようと思っただけだよ」
「大きくなりすぎだ」
シスが笑って入ってきた。
「……シス、神殿の関係者と自警団に裏切り者がいる」
「だろうね。君の動きからしてそうだと思っていたよ。で、誰だい?」
「まだ分からない。その前に住む場所とそこの主の許可を取ろうと思ってる。とりあえず酒ってあったっけ」
「……ある」
「俺と千紘兄、シスとエリザベスさんで行くことにする。……二人はどうしようかなぁ」
エリとエルフリーデ、この二人を連れて行くか、行かないかが問題なのだ。
「連れて行ったほうがいいと思う。裏切り者がグレス聖王国に連れて行ってしまうと、後々たいへ……」
「別に大変じゃないよ。その方が楽」
楽な理由を言えば、シスはため息をついた。
「穏便に済ませる気はないんだね」
穏便に済ませようとするからこそ、そういう計画になると言っても誰も信じやしない。
「信じろというほうが無理だぞ」
とどめは千紘だった。
一昼夜、そこそこ速いスピードで動かしていたら何とか目的地近くまで来ることが出来た。
ここからはゆっくりと場所を探していくのだ。
実はこの砂漠、最初に行こうとしていた砂漠とは違うところなのだ。
ただ、達樹に言わせれば「嘘は言っていない」ということになる。
何せ、「魔界領と人間領の間の砂漠」という点では同じなのだ。
未開の地なので、当然地図にも載っていない。
魔界領と人間領に伝承が数点あるだけだ。
当然、知っている砂漠に行って欲しい連中はこのことを隠す。ところがどっこい、達樹は隠されたものを暴くのがかなり得意である。
そしてこの地図は、アリーが描いたもの。諸国をたった一人で旅してきたアリーは地図を大まかに描くことだけが、心休まる一時だったようだ。
「もうそろそろかな?」
砂漠の中にある、大きなオアシス。
斥候を立てれば大体のことは分かる。ここも駄目、あれも駄目。そうやっているうちに、あっという間に日暮れになった。
「まいったなぁ……」
希望に沿うようなオアシスがない。
仕方なく、もう少し進もうとした時だった。
ひゅん。
どうやら矢が飛んできたらしい。
「じじじじ人体と、ささささサソリが合わさった化け物が!!」
ちょうど見回りに行っていた自警団が報告に来た。
「いい場所見つけた」
達樹は少数精鋭で一度大地に降りる決心をつけた。
「ファンタジー」の人気作品
-
-
3万
-
4.9万
-
-
2.1万
-
7万
-
-
1.3万
-
2.2万
-
-
1.2万
-
4.8万
-
-
1万
-
2.3万
-
-
9,711
-
1.6万
-
-
9,545
-
1.1万
-
-
9,448
-
2.4万
-
-
9,173
-
2.3万
コメント