「魔王様」の定義
エルフリーデの力
「兄さん!!」
エルフリーデたちと会話している最中に、千佳が慌てたように入ってきた。
「達樹がっ!! 発作起こしたの! いつも持ち歩いてる強い薬も効かないの!!」
とうとうおきてしまったか。いや、今までそんな発作を起こさなかったのが、奇跡だったのだ。
「すぐ行く! エルフリーデさん、エリ、悪い!」
「どどどどどうしたのですか!?」
今の話を聞いていたのか、そう千紘はエリに突っ込みを入れたくなった。
「シスさんと千夏は?」
「シスさんは神殿側の『魔法医師』を呼んできてる! 千夏はエリザベスさんが呼びに行った」
ということは、かなり危ないかもしれない。今まで無茶をさせ過ぎたと、どんなに後悔しても遅すぎた。
つん、とエルフリーデが千紘の袖を引っ張った。
「あなたの言い分を聞いている余裕がない。申し訳ない」
そして一度部屋に戻り、白衣と手術道具を持って達樹の所へ向かった。
己の無力さを嘆いたのはいつ以来だろう。
いつも達樹は苦しんでいる。
それなのにまた自分の力ではどうしようもない。
達樹のいる部屋に行くと、既に人が集まっていた。
「……にい……さん。……そこまで……」
「阿呆!」
手術できる状態ではない。そして、この苦しみを緩和できる技量もない。何のためにここまで来たのか、分からなくなる。
「……おれ……まだ……し……い……」
俺、まだ死ねない。やる事がある。そう苦しげに達樹が呟く。
達樹は何度も命を狙われた。そして多種の毒。解毒剤で何度も緩和してきたが、それ以上に蓄積された毒の量が酷かったのだ。元々身体が弱かったところにそんな爆弾を仕掛けられては、どうしようもない。
千夏もナース服になっている。二人揃って一応「仕事着」になったものの、すべき事がない。
「エルフリーデ様?」
すっと、入ってきたので、気がつくのが遅れた。
躊躇いもなく、エルフリーデが達樹の手を握った。
そして次の瞬間、達樹の身体が光に包まれた。
「これが『白き偉大なる癒し』……」
神殿側の「魔法医師が呟いた。
達樹の意識がほとんどない時でよかったと、千紘は思った。
もし、意識があったら、悪用までいかなくても、利用するという変な自信はあった。
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