連奏恋歌〜歌われぬ原初のバラード〜
/135/:作戦
俺の見立てが正しいのか正しくないのかはまだハッキリとわかっていない。
しかし、2人が研究を抜け出す機会は格段に増えた。
そして、もう1つ特徴がある事が最近わかってきた。
気が付けば2人ともいないが、ひょっこりフォルシーナだけが先に帰ってくるんだ。
この事が何か意味あるのか知らないが、どこに行ってたのか訊いても変な事を聞き返されるだけでまともに取り合うつもりはないらしい。
やはり怪しい。
超怪しい。
俺の知らぬ間に、一体どこで何をやってるのか……知りたいような、知りたくないような……。
俺はこんな悩みを抱えてるし、フォルシーナもルガーダスも仕事が手付かずだから、ここのところ、成果らしい成果は一切なかった。
俺だけがコツコツと用紙に数字や文字をビッシリと書いていくだけ……。
これはかなり寂しいもんだが、今更投げ出す程でもないし、頬杖つきながら机に向かうのだった。
「ヤ、ヤララン」
「?」
そんな俺に声が掛かる。
後ろを振り返れば、胸の前で人差し指同士を合わせ、なんかモジモジした様子のフォルシーナが立っていた。
ルガーダスはおらず、フォルシーナは今戻ってきたらしい。
「おー、どこ行ってた?」
「あ、お風呂です。お先入らせてもらいました」
「……そうかい」
髪も濡れてないのに、と突っ込んだら負けなんだろう。
見え透いた嘘を吐くなんて、呆れて突っ込む気もないけどな。
「それよりヤララン、肩でも揉みましょうか? お疲れでしょう?」
「いーって。まだ作業してるし、肩凝ってねぇし」
「まぁまぁ、休息も必要ですから、そこをどうにか……」
「あのなぁ……時間が大切だと思わないか? 俺の事はいいから、早く作業に移ってくれよ」
「……はい」
しょぼくれた様子で後ろから俺の横を過ぎ去り、俺の前方にある椅子にフォルシーナが座る。
そして何かを書き始めた。
彼女の後ろ姿を見ながら、聞こえないようにため息を吐く。
フォルシーナにはフォルシーナの思いも考えもあるんだから、彼女の自由にしてもらったって一向に構わないんだ。
それなのに、悩みから来たストレスで怒って、少しキツイ言い方をしたかもしれない。
俺は何をやっているんだ。
みんなで作業がしたいだけなのに……。
クソ……。
…………。
次の日。
「……私達の仲を怪しんでるどころか、サボってる私達に怒ってますよ。どーしましょう?」
第1層の魔物倉庫通路にて、私は葉っぱをムシャムシャ食べるルガーダスさんに相談しました。
あぁぁあ、もう半月はこうしてるのに、寧ろヤラランに嫌われてるような気が……。
「まぁ落ち着け。俺たちの仲を疑ってるのは間違いないんだ」
「……なんでそう言い切れるんです?」
「ヤラランの感じ取れる俺とお前の生活は、実験で共同作業することでしかない。そんな中、何べんも同じ時間帯に抜け出していりゃあデキてると思うだろ。しかも、俺たちは3人だ。ヤラランが1人で疑心暗鬼する時間はたっぷりあるんだからな。頭が足りなくとも、結論着くはずだ」
「はぁ……そういうもんですかね?」
「そういうもんだ。この調子で続けろ」
「……言い訳がもう苦しいんですけどね。バレる内容の嘘なのは間違い無いのですが……」
私達の作戦は、簡単に言うと『ヤララン、相棒が取られて初めて好きだった事に気付く作戦』。
もしも私達が恋仲であって、ヤラランがヤキモチを妬いたりすれば自分の心に気付くはず!ということです。
しかし――もし、私に微塵も興味がなくてヤキモチのなの字も無いのならこの作戦は、ほんっとに無駄なのです。
というか虚しい……。
「そもそも、私が貴方みたいなおじさんを……」
「うっせーよ。実際はなんとも思ってねーし、ヤラランがそーいう妄想膨らませるまで我慢しろ」
「……わかりましたよ」
上手く事が進んでるかもわからないのにやっていくのも不安ですが、こんなロクデナシの男と恋仲と思われなきゃならないのは中々耐え難いですね……。
「それより、次はどうしますか?」
「次なぁ……肩揉みすらダメだったんだろ?アイツもほんっと堅物だよなあ」
「……抱きついたことがありますが、次の日から防具のメイル着るぐらいですからね」
「はぁ!? 女に触られて喜ばねぇとか男かよ!? いや、きっと照れたんだな。そうじゃなきゃ胸デケェお前に抱きつかれて何も思わねぇわけねぇしな、うん」
「……確かに、あの時はめちゃくちゃ赤面してましたからねぇ」
それはそれとしても、胸が大きい云々は関係あるんですか?
なんとなく不快感ありますね……。
「つか、なんで今はメイル着てねぇワケ?」
「戦闘の時に壊れたんです。それからは付けてませんね。重いし、不要といえばそうなのですが……」
「はーん。じゃあ今はガードが甘いんだろ。チャンスだな」
「え?」
ルガーダスさんの次に言う言葉は、私には容易に想像できた。
そして、現実となる。
「思いっきり後ろから抱きしめちまえ」
しかし、2人が研究を抜け出す機会は格段に増えた。
そして、もう1つ特徴がある事が最近わかってきた。
気が付けば2人ともいないが、ひょっこりフォルシーナだけが先に帰ってくるんだ。
この事が何か意味あるのか知らないが、どこに行ってたのか訊いても変な事を聞き返されるだけでまともに取り合うつもりはないらしい。
やはり怪しい。
超怪しい。
俺の知らぬ間に、一体どこで何をやってるのか……知りたいような、知りたくないような……。
俺はこんな悩みを抱えてるし、フォルシーナもルガーダスも仕事が手付かずだから、ここのところ、成果らしい成果は一切なかった。
俺だけがコツコツと用紙に数字や文字をビッシリと書いていくだけ……。
これはかなり寂しいもんだが、今更投げ出す程でもないし、頬杖つきながら机に向かうのだった。
「ヤ、ヤララン」
「?」
そんな俺に声が掛かる。
後ろを振り返れば、胸の前で人差し指同士を合わせ、なんかモジモジした様子のフォルシーナが立っていた。
ルガーダスはおらず、フォルシーナは今戻ってきたらしい。
「おー、どこ行ってた?」
「あ、お風呂です。お先入らせてもらいました」
「……そうかい」
髪も濡れてないのに、と突っ込んだら負けなんだろう。
見え透いた嘘を吐くなんて、呆れて突っ込む気もないけどな。
「それよりヤララン、肩でも揉みましょうか? お疲れでしょう?」
「いーって。まだ作業してるし、肩凝ってねぇし」
「まぁまぁ、休息も必要ですから、そこをどうにか……」
「あのなぁ……時間が大切だと思わないか? 俺の事はいいから、早く作業に移ってくれよ」
「……はい」
しょぼくれた様子で後ろから俺の横を過ぎ去り、俺の前方にある椅子にフォルシーナが座る。
そして何かを書き始めた。
彼女の後ろ姿を見ながら、聞こえないようにため息を吐く。
フォルシーナにはフォルシーナの思いも考えもあるんだから、彼女の自由にしてもらったって一向に構わないんだ。
それなのに、悩みから来たストレスで怒って、少しキツイ言い方をしたかもしれない。
俺は何をやっているんだ。
みんなで作業がしたいだけなのに……。
クソ……。
…………。
次の日。
「……私達の仲を怪しんでるどころか、サボってる私達に怒ってますよ。どーしましょう?」
第1層の魔物倉庫通路にて、私は葉っぱをムシャムシャ食べるルガーダスさんに相談しました。
あぁぁあ、もう半月はこうしてるのに、寧ろヤラランに嫌われてるような気が……。
「まぁ落ち着け。俺たちの仲を疑ってるのは間違いないんだ」
「……なんでそう言い切れるんです?」
「ヤラランの感じ取れる俺とお前の生活は、実験で共同作業することでしかない。そんな中、何べんも同じ時間帯に抜け出していりゃあデキてると思うだろ。しかも、俺たちは3人だ。ヤラランが1人で疑心暗鬼する時間はたっぷりあるんだからな。頭が足りなくとも、結論着くはずだ」
「はぁ……そういうもんですかね?」
「そういうもんだ。この調子で続けろ」
「……言い訳がもう苦しいんですけどね。バレる内容の嘘なのは間違い無いのですが……」
私達の作戦は、簡単に言うと『ヤララン、相棒が取られて初めて好きだった事に気付く作戦』。
もしも私達が恋仲であって、ヤラランがヤキモチを妬いたりすれば自分の心に気付くはず!ということです。
しかし――もし、私に微塵も興味がなくてヤキモチのなの字も無いのならこの作戦は、ほんっとに無駄なのです。
というか虚しい……。
「そもそも、私が貴方みたいなおじさんを……」
「うっせーよ。実際はなんとも思ってねーし、ヤラランがそーいう妄想膨らませるまで我慢しろ」
「……わかりましたよ」
上手く事が進んでるかもわからないのにやっていくのも不安ですが、こんなロクデナシの男と恋仲と思われなきゃならないのは中々耐え難いですね……。
「それより、次はどうしますか?」
「次なぁ……肩揉みすらダメだったんだろ?アイツもほんっと堅物だよなあ」
「……抱きついたことがありますが、次の日から防具のメイル着るぐらいですからね」
「はぁ!? 女に触られて喜ばねぇとか男かよ!? いや、きっと照れたんだな。そうじゃなきゃ胸デケェお前に抱きつかれて何も思わねぇわけねぇしな、うん」
「……確かに、あの時はめちゃくちゃ赤面してましたからねぇ」
それはそれとしても、胸が大きい云々は関係あるんですか?
なんとなく不快感ありますね……。
「つか、なんで今はメイル着てねぇワケ?」
「戦闘の時に壊れたんです。それからは付けてませんね。重いし、不要といえばそうなのですが……」
「はーん。じゃあ今はガードが甘いんだろ。チャンスだな」
「え?」
ルガーダスさんの次に言う言葉は、私には容易に想像できた。
そして、現実となる。
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