連奏恋歌〜歌われぬ原初のバラード〜
/96/:真相・④
それからは1人で過ごし、時には徒党を組んだけど一週間も持たなかった。
口調はどんどん悪くなっていった。
悪たいばかりついていた。
だけれど、守られたこの命だけは大切にした――。
いつしか、東を目指していた。
海沿いまで来たけれど、海を渡る術がなくてずっと近くの村に住み着いた。
私も中々強いが、その村でボスになろうとはしなかった。
もう色々とどうでもいい。
とにかく、この大陸にいるか知らぬあの男を殺すためだけに生きている。
私には、それしかなかった――。
それが、キィから聞いた話の全てだった。
当時の俺は、何も言えなかったけれど――今、俺はその話をしている――。
話が終わる頃には月が顔を出していた。
俺はキィの母についての話と、キィから聞いた話を混ぜ合わせて全てを話した。
キィが王族の末裔であるということ、俺の父親がキィの母を殺したことを。
「――どうして今まで黙ってた?」
当然の疑問を、キィは口にした。
キィにとって知りたい情報だろうと、俺だってわかっていたのに黙っていたんだから――。
「……お前に逆恨みで殺されるかもしれなかった。俺はこの大陸を平和にしたい。まだ死ぬわけにはいかなかったんだよ」
「……なるほど、確かになっ。いろんな感情が爆発して、今にもどうにかなっちゃいそうだよ……。私が王族? それで、お前の親父がお母さんを……? ふざけんなよ……この怒り、どうすりゃいいんだよ……」
「…………」
キィはしゃがみ込んだ。
ゆっくりと啜り泣き始める彼女の掠れる声が、俺の心にチクチクと刺さる……。
「……ずっと悪いと思ってた。俺はシュテルロード家を出た男だ。だけれど、あの男の血を半分受け継いでることは変わらない。だからか、お前には優しくしたかった。お前が凄い奴になってくれればと思っていた。どれもこれも、俺の自分勝手だ。本当にごめん……」
本当に、自分勝手だったと思う。
自分が傷つきたくないだけで隠し事をして、今になって、こんなに悲しませている。
情け無い男だと自嘲する。
俺は自然と視線を下げていた……。
「……。ヤララン……私、私は……」
「…………」
「……お前のことを嫌いになったりはしねぇよ!」
「――――!」
彼女のたった一言で、俺は全てが救われた。
すっくと立ち上がり、涙ながらにキィは叫ぶ。
「ヤラランが私のお母さんを殺したわけでもないしっ! 第一、ヤラランが悪い奴じゃないってのは私自身が良く知っている!! だから好きになった……だから、一緒にいたかった……私はこんな事で! ヤラランを恨んだりなんかしねぇっ!!」
「……キィ」
「私は1人だったけど、お前達と会えて、また家族ができたと思えたんだよっ! お前達と居れて幸せなんだっ!! だから、逆恨みで殺すとか、そんな心配はするなっ! 私は、アンタの側に居られりゃ、それでいいから……」
ふらりと、倒れこむように彼女が抱きついてくる。
そこには微かな暖かさと優しさがあった。
俺はどうやら、思い違いをしていたらしい。
もっと前から、とっくにキィは成長していたんだ――。
「……ありがとう、キィ」
「礼には及ばねぇよ。叫んだら怒りもあらかたスッキリしたしな……」
「……そうかよ」
「……あ、それより返事聞かせてくれよ! 恋人になれよもー!」
「……うーん」
抱きつく体が離れ、手を取られてお願いされる。
だが、俺が恋人になるというのは色々複雑なはずだ。
勘当したといっても、俺はシュテルロード家の嫡子であったことは変わらないし、キィの母親を殺したのが自分の父だと、後ろめたさと申し訳なさで俺にはなんと返事したものか答え難い……。
「返事は、もう少し待ってくれないか? さすがにいきなり過ぎて、なんとも言えねぇよ……」
「……わかったよ。明日からはお前に好きって言わせるように頑張るから、覚悟しろよ?」
「ははっ、そりゃあ怖いなぁ……」
「怖いってなんだよ!?」
「いや、頑張るならもうちょっとしおらしくなりやがれっての……」
頭の上に手を置いてやり、ぐしゃぐしゃに撫でる。
金髪の少女は甘えるようにえへへと笑って返した。
口調はどんどん悪くなっていった。
悪たいばかりついていた。
だけれど、守られたこの命だけは大切にした――。
いつしか、東を目指していた。
海沿いまで来たけれど、海を渡る術がなくてずっと近くの村に住み着いた。
私も中々強いが、その村でボスになろうとはしなかった。
もう色々とどうでもいい。
とにかく、この大陸にいるか知らぬあの男を殺すためだけに生きている。
私には、それしかなかった――。
それが、キィから聞いた話の全てだった。
当時の俺は、何も言えなかったけれど――今、俺はその話をしている――。
話が終わる頃には月が顔を出していた。
俺はキィの母についての話と、キィから聞いた話を混ぜ合わせて全てを話した。
キィが王族の末裔であるということ、俺の父親がキィの母を殺したことを。
「――どうして今まで黙ってた?」
当然の疑問を、キィは口にした。
キィにとって知りたい情報だろうと、俺だってわかっていたのに黙っていたんだから――。
「……お前に逆恨みで殺されるかもしれなかった。俺はこの大陸を平和にしたい。まだ死ぬわけにはいかなかったんだよ」
「……なるほど、確かになっ。いろんな感情が爆発して、今にもどうにかなっちゃいそうだよ……。私が王族? それで、お前の親父がお母さんを……? ふざけんなよ……この怒り、どうすりゃいいんだよ……」
「…………」
キィはしゃがみ込んだ。
ゆっくりと啜り泣き始める彼女の掠れる声が、俺の心にチクチクと刺さる……。
「……ずっと悪いと思ってた。俺はシュテルロード家を出た男だ。だけれど、あの男の血を半分受け継いでることは変わらない。だからか、お前には優しくしたかった。お前が凄い奴になってくれればと思っていた。どれもこれも、俺の自分勝手だ。本当にごめん……」
本当に、自分勝手だったと思う。
自分が傷つきたくないだけで隠し事をして、今になって、こんなに悲しませている。
情け無い男だと自嘲する。
俺は自然と視線を下げていた……。
「……。ヤララン……私、私は……」
「…………」
「……お前のことを嫌いになったりはしねぇよ!」
「――――!」
彼女のたった一言で、俺は全てが救われた。
すっくと立ち上がり、涙ながらにキィは叫ぶ。
「ヤラランが私のお母さんを殺したわけでもないしっ! 第一、ヤラランが悪い奴じゃないってのは私自身が良く知っている!! だから好きになった……だから、一緒にいたかった……私はこんな事で! ヤラランを恨んだりなんかしねぇっ!!」
「……キィ」
「私は1人だったけど、お前達と会えて、また家族ができたと思えたんだよっ! お前達と居れて幸せなんだっ!! だから、逆恨みで殺すとか、そんな心配はするなっ! 私は、アンタの側に居られりゃ、それでいいから……」
ふらりと、倒れこむように彼女が抱きついてくる。
そこには微かな暖かさと優しさがあった。
俺はどうやら、思い違いをしていたらしい。
もっと前から、とっくにキィは成長していたんだ――。
「……ありがとう、キィ」
「礼には及ばねぇよ。叫んだら怒りもあらかたスッキリしたしな……」
「……そうかよ」
「……あ、それより返事聞かせてくれよ! 恋人になれよもー!」
「……うーん」
抱きつく体が離れ、手を取られてお願いされる。
だが、俺が恋人になるというのは色々複雑なはずだ。
勘当したといっても、俺はシュテルロード家の嫡子であったことは変わらないし、キィの母親を殺したのが自分の父だと、後ろめたさと申し訳なさで俺にはなんと返事したものか答え難い……。
「返事は、もう少し待ってくれないか? さすがにいきなり過ぎて、なんとも言えねぇよ……」
「……わかったよ。明日からはお前に好きって言わせるように頑張るから、覚悟しろよ?」
「ははっ、そりゃあ怖いなぁ……」
「怖いってなんだよ!?」
「いや、頑張るならもうちょっとしおらしくなりやがれっての……」
頭の上に手を置いてやり、ぐしゃぐしゃに撫でる。
金髪の少女は甘えるようにえへへと笑って返した。
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