連奏恋歌〜歌われぬ原初のバラード〜
/75/:国債
ミュラリルの言った言葉の意味が、一瞬わからなかった。
属国にして、西大陸と同じような状態に……?
「なんでそんなことを……」
「単純に、悪意の量が足りないからだと思いますわ。我が国にはいくらか国債もありますから、都合が良いのでしょう。属国になれば払わなくていい、らしいのですわよ」
「…………!」
ミュラルルがボソッと国債と言ってたのは、そのことだったらしい。
だとすれば、話も理に適っている……。
「……国債、幾らだ?」
「フフ、アルトリーユはそんなに貧しいわけではありませんから多くはないですわよ。ですが、そうですね、ポンッと出せるものではありませんわ」
「いいから、幾らなんだ?」
「……38兆7000億リーユくらいだったかしら?あぁ、フラクリスラルの単位に直すと、1935億フラですわね。まったく、フラは高いですわね……」
「……結構巨額だな」
「当然ですわよ……」
そうでなければ苦しんだりしないか。
けど、まぁ……。
「なぁ、フォルシーナ?」
「はい?」
「なんとかなると思うか?」
「うちの利益忘れたんですか?推定3兆ですよ?」
「……そうだっけ?」
「そうですよ。ですが、今の売り上げはどれぐらいでしょう?私という主戦力が出払ってるし……最低でも商会に戻れば資産5000億フラ程度はあると思いますよ?」
「じゃあそれ使うか……」
なんとかなりそうな話だった。
はー、商会を築いといて良かった……。
あり得ないくらい稼いでるしな。
まだ俺もガキだし、3兆とかそんな数字言われても実感湧かねぇよ。
「……お待ちください。なんですの?5000億フラって……?」
「ヤララン商会って聞いたことないか? 魔法道具を主に売ってる商会なんだが、俺はそこの会長やってんだ」
「え? え? ヤララン商会って、魔法道具を売ってるあの……? か、会長ですの?」
「おう、会長だ。実際はフォルシーナが主にやってたけどな」
「ヤラランの人徳があってこそですよ……半分は私のおかげですがね」
それもこれも、もはや過去の栄光ではあるが、今思えば昔は若かった。
大貴族の旦那相手に肩組んで顔面に酒をブチ撒けたり、街行く人に一人一人困ってることとか聞いたり、よくあんな精魂あったなぁ。
その功があったかは知らんが、フォルシーナが商談する際に楽だったみたいだけど、そんなのは俺にはよくわからん。
ガキ相手によく商談してくれたと謎の感慨がある。
「すっ、すすすすす……」
「ん?」
ミュラリルがすを連呼する。
喉をつっかえたのかと思いきや、彼女は急に地べたに這いつくばって土下座をした。
「すいませんでしたっ!!」
「え?なんで?」
「分を弁えず、攻撃した事をお詫び申し上げます! どうか国だけは潰さないでくださいまし!」
「え? あー、そっかそっか……」
なんで謝ってるのか理解した。
金の力で負債のある小国くらい潰せるしな。
しかも、一応俺はフラクリスラルの人間だ。
つまり、金でフラクリスラルを動かすことも容易だと思われたのだろう。
実際コネはあるが……。
「気にすんなよ、そんな事。戦闘時のお前の気持ちだってわからんでもないし、襲ってきたのは仕方ないさ」
「は、はいっ……貴方様の寛大な御心に感謝いたしますっ」
「いや、いいよ。つーかそんな畏まらないでくれよな?ほら、キィとかすげー目で俺のこと見てるじゃん」
ミュラリルは見た目若いのだが、20歳は超えているだろう。
そんな大人が俺に土下座しているのだからキィは今にも白眼を剥きそうだった。
白眼剥くほどかよっ、とは思うが……。
「なんにしても、怒ってないから気にすんな。いいな?」
「は、はい……」
「それと――」
俺はチラッと、フォルシーナの顔を眺めた。
何を思ったのか彼女はポッと顔を赤らめ、頬に手をやって頭を振った。
「いやん♪ そんなに見つめられると困っちゃいます〜っ」
「寒気のすること言うんじゃねーよ。それより、いいか?」
「はい? 何がですか?」
何が。
そんなことは話の流れから百も承知のはずなのに、コイツは……。
「アルトリーユに、2000億フラ寄付する。いいな?」
「ダメです」
俺の頼みを、フォルシーナはスッパリ断った。
属国にして、西大陸と同じような状態に……?
「なんでそんなことを……」
「単純に、悪意の量が足りないからだと思いますわ。我が国にはいくらか国債もありますから、都合が良いのでしょう。属国になれば払わなくていい、らしいのですわよ」
「…………!」
ミュラルルがボソッと国債と言ってたのは、そのことだったらしい。
だとすれば、話も理に適っている……。
「……国債、幾らだ?」
「フフ、アルトリーユはそんなに貧しいわけではありませんから多くはないですわよ。ですが、そうですね、ポンッと出せるものではありませんわ」
「いいから、幾らなんだ?」
「……38兆7000億リーユくらいだったかしら?あぁ、フラクリスラルの単位に直すと、1935億フラですわね。まったく、フラは高いですわね……」
「……結構巨額だな」
「当然ですわよ……」
そうでなければ苦しんだりしないか。
けど、まぁ……。
「なぁ、フォルシーナ?」
「はい?」
「なんとかなると思うか?」
「うちの利益忘れたんですか?推定3兆ですよ?」
「……そうだっけ?」
「そうですよ。ですが、今の売り上げはどれぐらいでしょう?私という主戦力が出払ってるし……最低でも商会に戻れば資産5000億フラ程度はあると思いますよ?」
「じゃあそれ使うか……」
なんとかなりそうな話だった。
はー、商会を築いといて良かった……。
あり得ないくらい稼いでるしな。
まだ俺もガキだし、3兆とかそんな数字言われても実感湧かねぇよ。
「……お待ちください。なんですの?5000億フラって……?」
「ヤララン商会って聞いたことないか? 魔法道具を主に売ってる商会なんだが、俺はそこの会長やってんだ」
「え? え? ヤララン商会って、魔法道具を売ってるあの……? か、会長ですの?」
「おう、会長だ。実際はフォルシーナが主にやってたけどな」
「ヤラランの人徳があってこそですよ……半分は私のおかげですがね」
それもこれも、もはや過去の栄光ではあるが、今思えば昔は若かった。
大貴族の旦那相手に肩組んで顔面に酒をブチ撒けたり、街行く人に一人一人困ってることとか聞いたり、よくあんな精魂あったなぁ。
その功があったかは知らんが、フォルシーナが商談する際に楽だったみたいだけど、そんなのは俺にはよくわからん。
ガキ相手によく商談してくれたと謎の感慨がある。
「すっ、すすすすす……」
「ん?」
ミュラリルがすを連呼する。
喉をつっかえたのかと思いきや、彼女は急に地べたに這いつくばって土下座をした。
「すいませんでしたっ!!」
「え?なんで?」
「分を弁えず、攻撃した事をお詫び申し上げます! どうか国だけは潰さないでくださいまし!」
「え? あー、そっかそっか……」
なんで謝ってるのか理解した。
金の力で負債のある小国くらい潰せるしな。
しかも、一応俺はフラクリスラルの人間だ。
つまり、金でフラクリスラルを動かすことも容易だと思われたのだろう。
実際コネはあるが……。
「気にすんなよ、そんな事。戦闘時のお前の気持ちだってわからんでもないし、襲ってきたのは仕方ないさ」
「は、はいっ……貴方様の寛大な御心に感謝いたしますっ」
「いや、いいよ。つーかそんな畏まらないでくれよな?ほら、キィとかすげー目で俺のこと見てるじゃん」
ミュラリルは見た目若いのだが、20歳は超えているだろう。
そんな大人が俺に土下座しているのだからキィは今にも白眼を剥きそうだった。
白眼剥くほどかよっ、とは思うが……。
「なんにしても、怒ってないから気にすんな。いいな?」
「は、はい……」
「それと――」
俺はチラッと、フォルシーナの顔を眺めた。
何を思ったのか彼女はポッと顔を赤らめ、頬に手をやって頭を振った。
「いやん♪ そんなに見つめられると困っちゃいます〜っ」
「寒気のすること言うんじゃねーよ。それより、いいか?」
「はい? 何がですか?」
何が。
そんなことは話の流れから百も承知のはずなのに、コイツは……。
「アルトリーユに、2000億フラ寄付する。いいな?」
「ダメです」
俺の頼みを、フォルシーナはスッパリ断った。
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