連奏恋歌〜歌われぬ原初のバラード〜
/65/:最初の決まり
それから十字路に戻って【力狩り】の効果が切れるまで駄弁していると1人、また1人とおどおどしながらも人が集まってくる。
大体20人くらいだろうか?
思ったよりも人数は少なくて、俺とフォルシーナは目を合わせて肩を落とした。
「どうせなら仲間がたくさん増えて欲しかったですね」
「まだ来てないだけの奴もいるかもしれないだろ? もう少しま――」
「おいっ!!? お前!!!」
『?』
誰かが放った怒声。
振り返れば色あせた着物を着た髪がむくじゃらの大男が紫色の髪を持つ女性の胸ぐらを掴んでいた。
「よくもお前……俺のダチを殺してくれたなっ!!」
「な、なんの話……?」
「見ていたんだ!! 森から戻った所を炎で殺して、獲物だけ奪ってさっさと去りやがって! 今この場でブッ殺してやる!!」
「や、やめてよ! あたしだって生きるために――」
「おい、お前ら」
2人以外が静まったこの場では俺の声はよく届いただろう。
俺の声を聞いて、2人が首をこちらに向けた。
同時に、無色魔法で2人を引き離して宙に浮かせる。
「なにしやがる!! ソイツを殺さねぇと!」
「いやいや、待てよ。なんとなく話はわかった。お前さんの気持ちはわからんでもない。けどな、殺さなきゃ生きれねぇ境遇だったのはお互い様なんじゃないのかよ? お前は誰も殺してないか? 自分の恨みと同じだけ、誰かに恨まれてる可能性がないと言えるのか?」
「――ッ! だからなんだ! 俺はソイツを殺さなきゃ気がすまねぇ!!」
「そうかい」
それだけ聞くと、俺は肩を揺らして大股に歩いた。
人は俺に道を譲り、宙に浮いた女性の下まで辿り着く。
「アンタ、名前は?」
「え……ひ、ヒューンだけど……」
「じゃあヒューン。俺とお前は今から仲間だ。俺は仲間を殺したりする奴には容赦しないぜ?」
ニコリと笑って男に語りかける。
毛むくじゃらの男は憎々しげにこちらをずっと眺めていた。
視線も逸らさず、歯ぐきを出して歯ぎしりをしている。
俺の強さはわかってるんだろう。
もしくは自分の怒りをわかってくれなかったと思ったのか……。
…………。
「全員に言う。過去にここで起こったことで誰かに恨みを持っていても、それをなかったことにしてほしい。そんな事急に言われても無理なのはわかる。けどな、これからここで共栄していくのに、仲が悪いとか恨みがあるとか、そんなんじゃ協力できるわけがない。だからさ、過去に恨まれるようなことをされていても、全員で周り全体の事を考えて行動してくれないだろうか? もしくは恨み持たれてるやつも謝罪するなりしてくれよ。そうじゃないと延々と平和にはなれない」
ここまで言って、一度口を閉じた。
まぁ、それなりに恨みを持ってたりする奴もいるだろう。
単独でいる奴の方が多いはずだが、子供や親を殺されたり、友達を殺されたり、そういう奴もいるだろう。
後ろめたいことがあるのか、数人は首を長くして俯いていた。
「悪いことをしたと思ってるなら、謝れ。恨みを持ってる奴も相手の気持ちを考えてくれ。それで仲直りできなそうなら俺に相談してくれ。解決策が出るかもしれないだろ? それで解決できなくとも頑張るからよ。頼むからこれ以上、人を殺そうとしないでくれ……。そのことをまず、約束してほしい――」
俺の懇願は全員の耳に伝わっただろうか。
これは単なるお願いであって、強制力はない。
だけれど、この現状を打開するためにはこの約束を守ってもらわないと成立しないんだ。
共に生きる、なのに殺すなんて、あってはならない――。
俺はそっと体を浮かせた2人を地面に下ろし、今度は男の方に一歩ずつ歩み寄った。
毛むくじゃらの男は少したじろいだが、退くよりも早く俺が目の前にやってきた。
そして、俺は開いた手を彼に伸ばす。
「別に、お前が何もしないなら俺は敵意なんてないんだ。まずは自己紹介でもしようぜ? 俺はヤラランだ」
微笑して、安心させるように言ってみた。
男は眉を顰めて口を鼻とくっつけようとして、どうしようかわからない様子だった。
なら、もう一言。
「一緒に生きようぜ! まずは握り返してくれ!」
もう一度、深く手を伸ばした。
少し戸惑い、自分の手を見て一度拳を作ったが――その手を広げ、男は俺の手を取った。
「……悪かったよ。俺だって、人を殺したくなんかないんだ」
「気にすんな。誰だって憎む相手は居るもんだぜ? これから一緒に暮らすんだから、仲良くしてやれよ?」
ギュッと手を握り、男の瞳を見やった。
そこには反省と後悔の念が少なからず見えて、俺は今の言葉を信用しようと思えた――。
大体20人くらいだろうか?
思ったよりも人数は少なくて、俺とフォルシーナは目を合わせて肩を落とした。
「どうせなら仲間がたくさん増えて欲しかったですね」
「まだ来てないだけの奴もいるかもしれないだろ? もう少しま――」
「おいっ!!? お前!!!」
『?』
誰かが放った怒声。
振り返れば色あせた着物を着た髪がむくじゃらの大男が紫色の髪を持つ女性の胸ぐらを掴んでいた。
「よくもお前……俺のダチを殺してくれたなっ!!」
「な、なんの話……?」
「見ていたんだ!! 森から戻った所を炎で殺して、獲物だけ奪ってさっさと去りやがって! 今この場でブッ殺してやる!!」
「や、やめてよ! あたしだって生きるために――」
「おい、お前ら」
2人以外が静まったこの場では俺の声はよく届いただろう。
俺の声を聞いて、2人が首をこちらに向けた。
同時に、無色魔法で2人を引き離して宙に浮かせる。
「なにしやがる!! ソイツを殺さねぇと!」
「いやいや、待てよ。なんとなく話はわかった。お前さんの気持ちはわからんでもない。けどな、殺さなきゃ生きれねぇ境遇だったのはお互い様なんじゃないのかよ? お前は誰も殺してないか? 自分の恨みと同じだけ、誰かに恨まれてる可能性がないと言えるのか?」
「――ッ! だからなんだ! 俺はソイツを殺さなきゃ気がすまねぇ!!」
「そうかい」
それだけ聞くと、俺は肩を揺らして大股に歩いた。
人は俺に道を譲り、宙に浮いた女性の下まで辿り着く。
「アンタ、名前は?」
「え……ひ、ヒューンだけど……」
「じゃあヒューン。俺とお前は今から仲間だ。俺は仲間を殺したりする奴には容赦しないぜ?」
ニコリと笑って男に語りかける。
毛むくじゃらの男は憎々しげにこちらをずっと眺めていた。
視線も逸らさず、歯ぐきを出して歯ぎしりをしている。
俺の強さはわかってるんだろう。
もしくは自分の怒りをわかってくれなかったと思ったのか……。
…………。
「全員に言う。過去にここで起こったことで誰かに恨みを持っていても、それをなかったことにしてほしい。そんな事急に言われても無理なのはわかる。けどな、これからここで共栄していくのに、仲が悪いとか恨みがあるとか、そんなんじゃ協力できるわけがない。だからさ、過去に恨まれるようなことをされていても、全員で周り全体の事を考えて行動してくれないだろうか? もしくは恨み持たれてるやつも謝罪するなりしてくれよ。そうじゃないと延々と平和にはなれない」
ここまで言って、一度口を閉じた。
まぁ、それなりに恨みを持ってたりする奴もいるだろう。
単独でいる奴の方が多いはずだが、子供や親を殺されたり、友達を殺されたり、そういう奴もいるだろう。
後ろめたいことがあるのか、数人は首を長くして俯いていた。
「悪いことをしたと思ってるなら、謝れ。恨みを持ってる奴も相手の気持ちを考えてくれ。それで仲直りできなそうなら俺に相談してくれ。解決策が出るかもしれないだろ? それで解決できなくとも頑張るからよ。頼むからこれ以上、人を殺そうとしないでくれ……。そのことをまず、約束してほしい――」
俺の懇願は全員の耳に伝わっただろうか。
これは単なるお願いであって、強制力はない。
だけれど、この現状を打開するためにはこの約束を守ってもらわないと成立しないんだ。
共に生きる、なのに殺すなんて、あってはならない――。
俺はそっと体を浮かせた2人を地面に下ろし、今度は男の方に一歩ずつ歩み寄った。
毛むくじゃらの男は少したじろいだが、退くよりも早く俺が目の前にやってきた。
そして、俺は開いた手を彼に伸ばす。
「別に、お前が何もしないなら俺は敵意なんてないんだ。まずは自己紹介でもしようぜ? 俺はヤラランだ」
微笑して、安心させるように言ってみた。
男は眉を顰めて口を鼻とくっつけようとして、どうしようかわからない様子だった。
なら、もう一言。
「一緒に生きようぜ! まずは握り返してくれ!」
もう一度、深く手を伸ばした。
少し戸惑い、自分の手を見て一度拳を作ったが――その手を広げ、男は俺の手を取った。
「……悪かったよ。俺だって、人を殺したくなんかないんだ」
「気にすんな。誰だって憎む相手は居るもんだぜ? これから一緒に暮らすんだから、仲良くしてやれよ?」
ギュッと手を握り、男の瞳を見やった。
そこには反省と後悔の念が少なからず見えて、俺は今の言葉を信用しようと思えた――。
「ファンタジー」の人気作品
書籍化作品
-
-
140
-
-
125
-
-
440
-
-
314
-
-
310
-
-
2813
-
-
34
-
-
4112
-
-
4
コメント