連奏恋歌〜歌われぬ原初のバラード〜
/19/:予定
食事が終わると、フォルシーナの指揮を元に家の男女別配置と俺に渡された紙で住民登録が行われ、その日は解散となった。
家は基本二人一組で、まだ色々不安かもしれないが、殺し合いは絶対タブーであり、日替わりで村の見張りを家毎に必ず付ける事がフォルシーナによって決められた。
その中でも例外がある。
「なぁ、なんで俺が女2人と同じ家なわけ? 割り振りおかしくね?」
ランプの明かりが灯る小部屋で俺はフォルシーナに不満を言いつけた。
6畳程度の小部屋で、あとはキッチンがあるだけの狭いこの空間にはベッドが1つ、あとはテーブルセットだけが存在する。
俺は床に座り、テーブルでペンを走らせるフォルシーナ、そして、ベッドの上にはキィが居た。
「ヤララン、私に手を出すんですか?」
「そんな事は訊いてねーよ! でも絶対おかしいだろ! なんか!」
「……女と男が同じ家に住むと、なんか悪いのか?」
「キィ、ちょっとお前は黙ってろ」
「え!?」
無知な金髪を黙らせ、狙いをフォルシーナ一点に集中する。
別に女遊びする気なんてさらっさらないが、これじゃ俺が女囲ってるみたいで村人に示しがつかないだろうが。
フォルシーナの事だからその辺を含めて何か考えがあるんだろうが、もしかしたら単なる遊び心かもしれん。
「とにかく、この配置を俺は認めない。ほら、俺最近は畑作ってるから土の匂いするし!」
「今日海潜ってたって聞きましたけど?」
「ぐはっ」
バレてる最近は海に潜ってばっかりだよ。
外堀きっちり固めてやがって……。
「でも、私とヤラランの配置は確定してないと困りますよ。色々と会議をしないとなりませんからね」
「あぁ、お前は良い。でも男女比1対2はやめてくれ。キィを住まわすならもう1人、タルナとか連れてこい」
「この家を4人で使うには狭いですよ。3人ならなんとか……って間取りですし。3人目のキィちゃんは文字を覚えてもらうのと、私が研究するために居て欲しいんですよ」
「……研究だぁ?」
「東大陸から連れて来られた人が恨みを持つのはわかりましたが、西大陸で生まれた場合はどうなのかという研究ですよ。ヤラランも知っておきたいでしょう?」
「む……」
フォルシーナも我流で西大陸の悪意について調べてたようだ。
今日タルナと悪意のなんたるかを語り合ったから知りたい。
しかし、
「それをキィの前で言うなよ」
「まったくだ。フォルは失礼だな」
キィが俺の言葉に便乗した。
あまりにも自然に言うものだから一瞬気付かなかったが、気付くとキィの方にグルンと首を回す。
なんだその愛称は。
いつの間にお前らは仲良くなったんだ。
「な、なんだよヤララン。いきなりこっち見んなよ……ビックリしたぁ……」
「……いや、仲良さそうで何よりだよ」
「ヤラランもいい加減、私を略称で呼べばいいのに……」
「こっちの方が慣れてんだよ。気にすんな」
4年も呼んでる名を今更呼び方変えろと言われても無理がある。
そして今の論点はそこじゃない。
「……とにかく、なんとか男女比変えられないの?」
「できませんよ。ヤラランと私達が身の潔白を示せば別に良いじゃないですか」
「……おう」
でも疑われることは間違いない筈だ。
俺は清らかに生きたいんだが、ハァ……。
「それよりもっ、今日も戦闘になったそうじゃないですか。神楽器使ってないですよね?」
目線をテーブルから俺に移し、ペンを向けて来るフォルシーナさん。
自分の都合になると元気だな、おい。
「……影の中仕舞ってたよ。キィが証人だ」
「本当ですか、キィ?」
「あー、確かに持ってなかったな。使ってねぇよ」
「……ふむ。なら良いのですが」
満足気にフォルシーナは頷く。
製作者だから文句言えないが、なんか腹立つな……。
「楽器は武器じゃないんですから、その辺は弁えてくださいよ」
「言われんでもわかってるっつーの。でも万が一の時は許せよな」
「それはもちろん、本当に死にそうな時ぐらいは仕方ないと思いますけどね。でも、極力はダメですよ?」
「はいはいっ……」
楽器は人を楽しませるための物だ。
なら人を守るためとかに神楽器を使ってもいい気はするが、今日は口を動かし過ぎて疲れた。
後日としよう。
「話は変わるが、俺は明日、東大陸に物資を取りに行く。全体の指揮はフォルシーナに任せる。いいな?」
「……まだ戻らなくとも良いのでは?」
「いや、この先は冬だ。早急に食料が欲しい。冷たい海だと魚取りも難しくなるし、野菜や穀物の備蓄が最適なんだよ」
「……そうですね。では任せます」
「あぁ」
畑も今日であらかたできた。
植物なら緑魔法でいくらでも実らせることができるし、このやり方に文句のつけようがない。
「畑も荒らされたら困りますし、バリケードを作らなくてはなりませんね」
「……だな。明日やってくれ」
「はい」
盗みを働く不届き者が怖いところ。
対策は何かしら必要だ。
「……明日の予定はそんな所か」
「ですね。ハァ……なんとか村らしくなって来て良かったです」
「あぁ。みんなが良くやってくれてるおかげだな」
これでもっと親睦を深められれば文句の1つも無いが……つい先日までお互い殺しあってたような中だし、100%信用とは早急にいかない。
時間が解決してくれれば良いのだが……。
「じゃ、俺は明日に備えてもう寝るよ。また明日な」
「……おや、そこで眠るのですか?」
「おう」
ベッドはいつの間にか眠ってしまったキィに占領され、寝る場所などもう床しかない。
野宿慣れしてるから俺はどこでも寝れるし、別に気にしなかった。
「お前はまだ作業か?」
「えぇ。作りたいものがたくさんありますからね。まだまだ眠るには早いようです」
そう言いながらフォルシーナは青い半透明の空間パネルを生み出し、魔法言語を入力していた
いろいろしてくれるフォルシーナだが、本職は魔法作成や魔法道具作成。
また何か便利なものを作ってくれるんだろう。
「……東大陸からは船で来るか。何人か技術班の奴も連れてくるよ」
「それは助かります。是非お願いします」
「……おう。じゃあ、おやすみ」
「おやすみなさい。また明日頑張りましょう」
「あぁ……」
壁に凭れ掛かり、項垂れて目を閉じる。
いつしか部屋の薄明かりを忘れ、静かに眠りについた。
家は基本二人一組で、まだ色々不安かもしれないが、殺し合いは絶対タブーであり、日替わりで村の見張りを家毎に必ず付ける事がフォルシーナによって決められた。
その中でも例外がある。
「なぁ、なんで俺が女2人と同じ家なわけ? 割り振りおかしくね?」
ランプの明かりが灯る小部屋で俺はフォルシーナに不満を言いつけた。
6畳程度の小部屋で、あとはキッチンがあるだけの狭いこの空間にはベッドが1つ、あとはテーブルセットだけが存在する。
俺は床に座り、テーブルでペンを走らせるフォルシーナ、そして、ベッドの上にはキィが居た。
「ヤララン、私に手を出すんですか?」
「そんな事は訊いてねーよ! でも絶対おかしいだろ! なんか!」
「……女と男が同じ家に住むと、なんか悪いのか?」
「キィ、ちょっとお前は黙ってろ」
「え!?」
無知な金髪を黙らせ、狙いをフォルシーナ一点に集中する。
別に女遊びする気なんてさらっさらないが、これじゃ俺が女囲ってるみたいで村人に示しがつかないだろうが。
フォルシーナの事だからその辺を含めて何か考えがあるんだろうが、もしかしたら単なる遊び心かもしれん。
「とにかく、この配置を俺は認めない。ほら、俺最近は畑作ってるから土の匂いするし!」
「今日海潜ってたって聞きましたけど?」
「ぐはっ」
バレてる最近は海に潜ってばっかりだよ。
外堀きっちり固めてやがって……。
「でも、私とヤラランの配置は確定してないと困りますよ。色々と会議をしないとなりませんからね」
「あぁ、お前は良い。でも男女比1対2はやめてくれ。キィを住まわすならもう1人、タルナとか連れてこい」
「この家を4人で使うには狭いですよ。3人ならなんとか……って間取りですし。3人目のキィちゃんは文字を覚えてもらうのと、私が研究するために居て欲しいんですよ」
「……研究だぁ?」
「東大陸から連れて来られた人が恨みを持つのはわかりましたが、西大陸で生まれた場合はどうなのかという研究ですよ。ヤラランも知っておきたいでしょう?」
「む……」
フォルシーナも我流で西大陸の悪意について調べてたようだ。
今日タルナと悪意のなんたるかを語り合ったから知りたい。
しかし、
「それをキィの前で言うなよ」
「まったくだ。フォルは失礼だな」
キィが俺の言葉に便乗した。
あまりにも自然に言うものだから一瞬気付かなかったが、気付くとキィの方にグルンと首を回す。
なんだその愛称は。
いつの間にお前らは仲良くなったんだ。
「な、なんだよヤララン。いきなりこっち見んなよ……ビックリしたぁ……」
「……いや、仲良さそうで何よりだよ」
「ヤラランもいい加減、私を略称で呼べばいいのに……」
「こっちの方が慣れてんだよ。気にすんな」
4年も呼んでる名を今更呼び方変えろと言われても無理がある。
そして今の論点はそこじゃない。
「……とにかく、なんとか男女比変えられないの?」
「できませんよ。ヤラランと私達が身の潔白を示せば別に良いじゃないですか」
「……おう」
でも疑われることは間違いない筈だ。
俺は清らかに生きたいんだが、ハァ……。
「それよりもっ、今日も戦闘になったそうじゃないですか。神楽器使ってないですよね?」
目線をテーブルから俺に移し、ペンを向けて来るフォルシーナさん。
自分の都合になると元気だな、おい。
「……影の中仕舞ってたよ。キィが証人だ」
「本当ですか、キィ?」
「あー、確かに持ってなかったな。使ってねぇよ」
「……ふむ。なら良いのですが」
満足気にフォルシーナは頷く。
製作者だから文句言えないが、なんか腹立つな……。
「楽器は武器じゃないんですから、その辺は弁えてくださいよ」
「言われんでもわかってるっつーの。でも万が一の時は許せよな」
「それはもちろん、本当に死にそうな時ぐらいは仕方ないと思いますけどね。でも、極力はダメですよ?」
「はいはいっ……」
楽器は人を楽しませるための物だ。
なら人を守るためとかに神楽器を使ってもいい気はするが、今日は口を動かし過ぎて疲れた。
後日としよう。
「話は変わるが、俺は明日、東大陸に物資を取りに行く。全体の指揮はフォルシーナに任せる。いいな?」
「……まだ戻らなくとも良いのでは?」
「いや、この先は冬だ。早急に食料が欲しい。冷たい海だと魚取りも難しくなるし、野菜や穀物の備蓄が最適なんだよ」
「……そうですね。では任せます」
「あぁ」
畑も今日であらかたできた。
植物なら緑魔法でいくらでも実らせることができるし、このやり方に文句のつけようがない。
「畑も荒らされたら困りますし、バリケードを作らなくてはなりませんね」
「……だな。明日やってくれ」
「はい」
盗みを働く不届き者が怖いところ。
対策は何かしら必要だ。
「……明日の予定はそんな所か」
「ですね。ハァ……なんとか村らしくなって来て良かったです」
「あぁ。みんなが良くやってくれてるおかげだな」
これでもっと親睦を深められれば文句の1つも無いが……つい先日までお互い殺しあってたような中だし、100%信用とは早急にいかない。
時間が解決してくれれば良いのだが……。
「じゃ、俺は明日に備えてもう寝るよ。また明日な」
「……おや、そこで眠るのですか?」
「おう」
ベッドはいつの間にか眠ってしまったキィに占領され、寝る場所などもう床しかない。
野宿慣れしてるから俺はどこでも寝れるし、別に気にしなかった。
「お前はまだ作業か?」
「えぇ。作りたいものがたくさんありますからね。まだまだ眠るには早いようです」
そう言いながらフォルシーナは青い半透明の空間パネルを生み出し、魔法言語を入力していた
いろいろしてくれるフォルシーナだが、本職は魔法作成や魔法道具作成。
また何か便利なものを作ってくれるんだろう。
「……東大陸からは船で来るか。何人か技術班の奴も連れてくるよ」
「それは助かります。是非お願いします」
「……おう。じゃあ、おやすみ」
「おやすみなさい。また明日頑張りましょう」
「あぁ……」
壁に凭れ掛かり、項垂れて目を閉じる。
いつしか部屋の薄明かりを忘れ、静かに眠りについた。
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