連奏恋歌〜歌われぬ原初のバラード〜

川島晴斗

/7/:宣言

「【力の四角形フォース・スクエア】!」

 結界が割れると同時に俺は叫んだ。
 手を空に向け、【無色魔法】による力の操作を行う。
 手のひらから出た40cm四方のパネルのような四角形が、全ての散弾を押し返した。

「――!」

 炎のベクトルが変わったのに気付いたのか、男は穴から逃げ出して球を躱す。

「【フォース!」

 地面に力の四角フォース・スクエアを発動し、見えない力によって穴から押し出される。
 再び降り立った地面の側には、腰を抜かしたのか、男が尻餅を着いて座っていた。

「ヒ、ヒィイ」
「ここらの魔法レベルは大体理解した。その程度で俺に勝とうだなんて、舐めすぎだぜ?」
「い、命だけは見逃してくれ! 中の女も食いもんも好きにしていい! 命だけは!」
「…………」

 地に頭を擦り付け、必死に懇願される。
 命だけは――。
 そんな懇願をされるとは思っても見なかった。
 こちとら命を取る気はさらさらないというのに、この大陸での殺しが普通だからなのか、敗北が確定しただけで命を取られると思い込んでいる。
 …………。
 これは本当に改革が必要だろう。

「お前は取り敢えず縛られてろ。【束縛リストレイント】」
「グッ!?」

 黒魔法でできたロープが男の胴をぐるぐるに縛り上げる。
 もがくこともなく、地面に倒れ伏した。

「【無色魔法カラークリア】、【音響サウンド】」

 呟くと唇が淡く光を放ち、すぐに消える。
 音響、この魔法は言葉の通り音を響かせる魔法。
 唇に使えば、喋った言葉が響き渡る――。

『こんにちはぁぁああああ!!』

 大声で挨拶をする。
 声は風を纏い、耳が曲がりそうなほど大きな声が、辺り一面に広まった。
 おそらく、ここらの住民全員に聞こえていることだろう。

『この辺で1番強い男を倒しました! つきましてはこの辺を私が支配したいと存じます!』

 どれだけなにを言おうと、反応はない。
 しかし、俺は続けた。

『支配、と一概に言いましても、それは治めるという意味です。皆で共存している以上、協力しながら生きたいと思います! そのためにーーここを村とする! 嫌な奴は俺を殺すかとっとと出ていきな!』

 暴論だった。
 だが、俺は笑って言う。
 これから村を作る? これほど楽しい事をしようとして何故笑わずにいられよう。

『以上! これから住居を一件ずつ回っていくから、協力する者は俺の後に続け!』

 言いたいことを言い終えると、俺は音響サウンドを解除し、男をそのままにして来た道を戻っていく。
 その過程で2人の女性がこちらに歩いてきた。

「お疲れ様です、ヤララン」
「おう」

 フォルシーナの労いを片手を振るだけであしらった。

「凄いねアンタ。あっさり倒しちゃった」
「向こうが弱過ぎただけだ。動きも鈍いし、遠距離と罠ぐらいしか能が無いんじゃ俺には勝てねぇよっ」

 キィの見たて通りに俺は死ぬことはなく、あっさりと男はのした。
 はっきり言って雑魚だった。
 あんなのがここらで1番強いとは到底信じられないが、まぁ【無色魔法】結界も張れない人達なら勝てないのだろう。
 全色使える俺なら、西大陸で最強になれそうだ。
 別になったからって何もないが。

「さぁ、仕事だ。フォルシーナはやるとして、キィはどうする?」
「……私は自分の安全のためならなんでもするよ。それに、初めての村だ。是非とも協力させて頂きたいね」
「そうこなくっちゃな」

 微笑み合う。
 それから俺たちは、住居を見て回り出した。

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