それはきっと、蜃気楼。

些稚絃羽

Prologue

いつになったら、その気持ちを知れるのだろう。
誰が私に、その気持ちを教えてくれるのだろう。


愛とは、異性を愛しいと思う心だと、
恋とは、切ないまでに深く思いを寄せる事だと、
そう辞書には書いてあった。
言葉の意味を知っているのに、
その気持ちを、私は知らない。
本の中の主人公がどれほど熱い恋をしていても、
どれほど苦しい恋をしていても、
それは物語のスパイスでしかなくて。
私を教える教師にはなってくれなかった。
それなのに貴方は。
凛とした瞳の奥に弱さと熱を隠して。
一面のピンク。
その丘で告げられる、私の知らない想い。
真剣で、愛おしむ様な眼差し。
素直で、混じり気のない言葉。
あの人の瞳には、確かに私が映っていて。
心の奥に優しく触れる。


「好きなんだ、君が。これ以上ないってくらい。」


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