分解っ!

ノベルバユーザー194919

5-1 始まる戦争

グドラムとの戦いに勝利してから二週間。
鷲杜との訓練を再開したスカイ。
真夏の暑さは段々と弱まり、涼しい風が吹く秋になった。
「ま、基本はもうほとんど言うことはないか。あとは応用…季節的にもちょうどいいな」
「ああ。そうだな」
真夏の暑さはスカイの体力を削るが、同時に回復した時に体力の上がり値は跳ね上がるというものだ。
だが、基本を終え、暑さは応用に必要な修練に対して邪魔な要素になるだけである。
「お、お父さん…」
そこに娘の那奈がやってくる。いつものように大きな包みを持っているが、顔が青ざめている。
手には軍からの通知が。
「…スカイ、訓練は中止だ。お前も第五遊撃に帰れ…戦争だ」
一瞬で不機嫌になる鷲杜。スカイは久しぶりの戦争の臭いを感じた。
「そうですか…じゃあ旅団に帰ります」
「おう」
スカイが訓練場を出ていく。
少し時間が経ち、鷲杜は苦笑する。
「あれは、戦争が初めての奴の態度じゃないだろ…」

カシャンとそれぞれの武器が金属音を鳴らす。
「よーし。全員そろったな。これから戦場に赴く。最初は陸路、その後船に乗ってまた陸路だ。
いいか?暇つぶしのゲームは持ったな?弄れる人間は見つけたか?
さぁ―――遠足と行こうかぁ!」
「おう!」
と答える声。だが半分苦笑いの空気である。
第五遊撃旅団は戦争に行く空気というよりは、少し遠い遠足…それか旅行のような和やかな雰囲気だ。
「よーし出発!全員馬車に乗れ!盗賊共は踏み潰せ!」
「了解!」
ザッと全員が幌馬車に乗る。
先頭の馬車が走りだし、後続の馬車が動き始める。
帝都を出て、副帝都の港から船に乗り換える。

副帝都の港から出航して二日目。
「オエー…」
「ああ…考えてなかった。エルフだもんな。海の上は苦手か…」
「そ、そんなこ―――」
戻ってきたばかりなのに、ウッとまた青い顔をして後ろの方にかけていくフィナ。
どうやら森育ちのフィナに海の上は厳しかったようだ。
はぁ…と心の中でため息を吐くスカイだった。

船を下りて一週間。
ザッと第五遊撃師団は丘の上から敵陣を見ていた。
「…強そうですね」
「ああ。相手はなんでも、傭兵とかいう金で戦争する馬鹿の集まった国らしいからな」
「で、うちは戦場で何をするんですかね?」
「決まってるだろ?うちは遊撃部隊だ…完全自由ってやつだ」
「…そうですか」
「だが、まぁ…最初の方針くらい言ってやる。
総員、この丘を下って敵を吹き飛ばしてこい!」
ブワリと風が巻き上がる。
「さぁ、戦争の始まりだぁ!」
この戦争、一番楽しみにしていたのはグドラムだった。

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