分解っ!

ノベルバユーザー194919

Ⅰ-2

行きは気を失って見ることができなかったが、王都の様子は以前より活気が増したように感じる。
馴染みの店にも寄ってみるものの、違う店が商売をしているだけだった。
これは通行人の誰かに聞くしかないと、適当に目にとまった―――見周り兵に声をかける。
「すこし尋ねてもいいかな」
「はい。なにかお困りでしょうか?」
素直に応じてくれる兵士に関心するスカイ。
「探索者ギルドって何処にあるかな?」
「ああ、それでしたらあそこにある大きな建物ですよ」
兵士の指差す方向を見ると、確かにそこには「探索者連合組合(探索者ギルド)」と、書かれていた。
「ああ、本当だ。ありがとうございます」
「いえ、では私は見周りに戻りますので」
そう言って去っていく兵士を見送り、探索者ギルドへと歩き始めるスカイだった。
とはいえ数分で辿り着いた探索者ギルドの扉を開けるスカイ。
その瞬間、多くの視線が注がれる。
どんな奴だ、実力は測れるか、自分の利益に支障はないか。
そんな多くの思惑―――だが単純な思惑はまた一瞬にしてなくなる。
ああ、大丈夫そうだ。そんな思考をしているのがスカイは手に取るように分かった。
あえて・・・素人の足さばきをしていることもわからないアホが多いな、と。
なんだか久しぶりに我が家へと舞い戻ってきた感覚を覚えるスカイ。
「すみません、受付はこちらであっていますか?」
「あ、はい。えっと…ご用件は何でしょうか?」
「あー…とりあえずこれか」
狸爺からもらった探索者カードらしき物を職員に渡す。
「…確認しました。こちらへ」
カウンターを開き、中へと案内する職員。
付き従っていくとギルド長と書かれた部屋に到達する。
「お入りください。話はギルド長がいたします」
冒険者ギルドでは部屋に行くまでに噂が瞬く間に広がったものだが…
さすが国営というべきか。秘密を徹底的に順守する教育は感嘆に値する。
「失礼いたしますギルド長。スカイ=フリーダム殿をお連れしました」
「入れ」
扉が開く。
「どうぞ」
職員に促されるまま、スカイは部屋へと入る。
ソファーや机を挟み、椅子に腰かけた男。
それは奇しくもスカイを気絶させた張本人だった。
「―――ギルド長自らとはおどろきですね」
「ふっ。仕事など職員が勝手に片づけるのだ。私はハンコを時々押すだけ。
暇な人間が遠くに行くのは自然だろう?」
問いかけに答えることなくスカイは用件を話す。
「早く説明してください。狸爺はここの場所さえ説明しませんでしたから」
「そうか。話は長いからな。そこのソファーにでも座れ」
音もなくソファーに座るスカイ。
「では説明しよう。この探索者ギルドは突如現れた大小の迷宮―――」
「迷宮の説明からしてください」
これは本当に一切説明しなかったようだ…と上司にあたる国王に心の中でため息をつくギルド長。
「迷宮について詳しいことは分かっていない。今分かっていることを話そう。
迷宮は大陸を統一した二カ月後に突如出現した。最初の出現場所は城の地下だ。
騎士などによって探索された迷宮の一階層あたりの面積は大体城と同じ大きさだったようだ。
全部で八階層。最深部にはそれまでとは異なる強大な魔物がいた。
騎士200名もの犠牲者を出しながら魔物を倒すと、
魔物は灰となり最後にとどめを刺した騎士が固有魔法を会得した。
ちなみに迷宮は人々が全員居なくなると同時に消えてなくなり、元の地面に戻ったらしい。
また、迷宮には財宝なども隠されており、騎士200名以上の犠牲をはるかに超える利益を国家は得た。
が、その後各地に現れた一階層ごとの面積も階層の数も少ない小さな迷宮を元冒険者などが攻略した。
これによって国家の戦力では押さえきれない反乱分子がいずれ出来てしまうと危惧した国王は、
冒険者ギルドという組織を踏み台にし、さらなる効率化と強大さを持つ探索者ギルドを創設したのだ」
「ふーん」
結局迷宮を探って、奥に居るボス的な魔物を倒せば財宝とかいっぱいくれるし嬉しいなみたいな感じか。
と、ギルド長の話をとてつもなく端折るスカイ。
「…まぁそれはいいだろう。
まぁそうして大小様々な迷宮を攻略し、戦闘能力を高めて欲しいというのが国王の狙いだな。
そのためのサポートとして我々探索者ギルドは存在する」
「んじゃぁ次職業について」
「職業は…素質のある職業を調べる装置によってはじき出された適正職業にしたがって、
身体強化装置を使用すればいいだけだ。
ああ、もちろん複数の職業に適するなら装置は候補を出してくれるぞ。
初期段階だと全員浮浪者だな」
神を恐れぬ所業ってやつだな。身体強化とか…危なくないか?
「ああ、そうやって職業が決定した後、
一定の条件を調べる装置が合格とみなしたら上位の職業へと上がることができる」
もっとやばいやつじゃないか。
「ちなみにこの大陸にいる神も手伝ったという噂も流れている。真偽は不明だがな」
何してんだよ神様!と心の中で叫ぶスカイ。
「じゃ…じゃあ特技の欄は何だよ」
「それはまた別の装置によって調査した人間の技能が
どれくらいの腕を持っているのかをⅠからⅩまでの十段階で評価してくれているのだ。
この評価は職業にも関わるからな。たまに調査し直すといい」
あんまりいい気分にはならなさそうだ。と思ってしまうスカイ。
「後はランクだな」
「ランクはもちろん別の調べる装置によって総合的にどれほどの力があるのかを調べているのだ」
全部装置頼りかよ…とあきれるスカイ。
「ちなみに君もすでに全ての装置にかけられているよ。
君の適正職業は…魔法戦士といったところか。凄いな。昔から鍛えているのが良く分かる」
そんなことまでわかるのかよ。確かに装置に頼りたくもなるって奴か。
「君にはより多くの迷宮を攻略してもらい、
固有魔法を増やし、財宝を集め、その一部を国に納めてくれるだけでいい。あとは君の自由という奴だ。
ああ、だが基本的に一ヵ月に一回はカードを更新するために装置に調べて貰うぞ」
「それは…長期の探索の場合はどうするんだ?」
「延長申請を取れば三カ月まで更新を引き延ばせるな。
あ、スカイ君はBランクだから優遇で五ヶ月だ」
「ランクごとに優遇措置があるのか」
「もちろんだ。探索者ギルド認定の店で割引とかな。Bランクだと価格から全て三割減額の優遇だな」
これは探索者ギルドが賑わうはずだ。名誉を求め、金を求め各地から人々が集まる…。
さすが狸爺。えげつない。と感じるスカイ。
「まずは王都の平原にある巨大迷宮でも攻略したらどうだ?」
「…そうだな」

ギルド長は後悔した。
ああ、あの時言わなければ。

スカイ=フリーダム、侵入開始から五日で『王都平原ノ迷宮』を攻略。

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