満月の美しい夜に…

ノベルバユーザー173744

イタリア語とドイツ語がオペラなどの歌には多いです。難しいです。

琉璃りゅうりは、瑠璃るりと共にドレスに着替え、出番を待つ。

「おかあしゃま。この間歌ったお歌って、歌詞はこれで良いの?」

琉璃は、フリガナをふった楽譜を手に、小声で歌う。

「……!?りょうさんに、習ったの?」
「ううん。辞書で調べたの」

よく見ると、琉璃のちまちまっとした文字が並んでいる。
必死に書き込んだのか消しゴムで消せなかった部分もある。

「ここまで……」
「琉璃、おかあしゃまみたいになるの。おかあしゃまと一緒にオペラハウスでお歌歌うのよ。あのね、月英げつえいおにいしゃまとおやくしょくしたの。ドレスをね、作ってもらうの!!」

えへへ……
笑う琉璃に、瑠璃は目に涙をため、抱き締める。

「そうね。お母様も頑張らないといけないわね」
「おかあしゃまは、一杯頑張ってるから、良いのよ?おかあしゃまは、琉璃のおかあしゃまだもん。琉璃はおかあしゃまみたいになるのよ」
「お母様みたいに!?」

目を見開く瑠璃に、琉璃は、

「うん。琉璃は、一杯頑張るの。だからね?おかあしゃま、琉璃のおかあしゃまでいてね?だいしゅきな、琉璃のおかあしゃまで、いてね?」
「琉璃……」

均がひょいっと顔を覗かせる。

「そろそろお時間ですよ~!!って、何してるの?琉璃」
「おかあしゃまが歌ったお歌」

楽譜を示す。

「訳したの?自分で?歌いかたも!?」
「うん。琉璃、ラララだったら、本当の歌い手しゃんじゃないの。だから、ちゃんと歌うにょ!!」
「……うん、珠樹しゅじゅに伝えておくから、一曲増えること、順番は、歌の翼に、そして、瑠璃さまの後が兄様、その後に入れよう。伝えてくるよ」

均は出ていく。

「大丈夫?一人で歌える?」
「大丈夫なの。琉璃はおかあしゃまと、おとうしゃまとおにいしゃまとおじしゃま一杯いるの!!がんばゆ!!」



「は?今から変更?」

元直げんちょくが目を丸くする。

「うん、琉璃が、もう一曲歌いたいって、楽譜は持って出るみたいだけど、そうとう一人で勉強したみたいだから、だから、叔父上には内緒にしておいて。珠樹と兄様に話してくるよ」
「解った」

均は、兄と珠樹の控え室に移動する。兄弟であり、着替えは一応仕切りを設けてしたのだが、それ以外は、亮が珠樹のハープの音を簡単に指導している。

「もう少し、ゆっくり。焦っては音が汚いよ。ハープの良さはそのしなるときの響き……それを生かせないようでは、ハープが可哀想だよ」
「はい、兄様」

練習嫌いで、裏では知られている珠樹だが、一番尊敬し、大好きな兄の指導には熱心に繰り返す。

「……うん、良くできた。綺麗な音の響き……その音を覚えておきなさい。珠樹は出来るのに、怠るんだから……ちゃんとレッスンを受けること。プロでも、練習を怠っては、ただの張りぼてのものと同じ。もっと高みを目指しなさい」
「はい、お兄様」
「ほーい、兄様、珠樹。変更伝えに来たよ」

現れた均に、

「変更?急に何を……」
「琉璃がどうしても一曲歌いたいって、覚えてはないみたいだけど、楽譜を持っていたよ。自分で辞書を引いて、訳したり、音を確認してた」
「何を歌うの?」

妹の問いかけに、均は曲名を告げ、二人は愕然とする。

「む、無理だ!!あの曲は、難曲だぞ!?歌詞をつけて歌うなんて無茶もいいところだ!!新人には歌わせない!!止めさせないと!!」

亮が出ていこうとするのを、均は止める。

「琉璃がどうしても歌いたいっていってるんだから、失敗しても、それでも琉璃が、納得するまでさせてあげるべきだよ。兄様」
「でも!!琉璃が傷ついたら!!」
「琉璃ちゃんは、そこまで弱くないと思うわ。お兄様が婚約者を心配するのは分かるけれど、琉璃ちゃんは兄様が思うほど、子供じゃないのよ。わがままじゃなく、歌い手として、お母様の瑠璃さまを見ているから自分もって頑張ってるのよ。兄様……甘やかすのが、婚約者の務めじゃないわ。見守ることも必要よ」

珠樹の言葉に、亮は目を丸くする。

「珠樹……」
「じゃぁ、兄様。私はもう一曲の確認をします。兄様は楽譜を探すのでしょう?」
「いや、殆どの曲は記憶だけじゃなく指が覚えているし、大丈夫だよ」

孔明は呟き、ため息をつく。

「琉璃は、可愛いだけの女の子じゃないんだなぁ……甘やかすだけじゃダメだとある程度は、ビシビシ……しすぎたかなぁ……」

亮の呟きは消えていったのだった。

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