満月の美しい夜に…

ノベルバユーザー173744

青いバラの花言葉は……ご存じでしょうか?

慈善事業は、寄付だけではいけない。

寄付金をどのように運営されているかも、多額の寄付をした企業はチェックすることが大切である。

そうしないと……。

琉璃りゅうりは、リムジンを降りると門を見つめる。

物心ついてから、ずっといた施設である。

他の企業に手を回され追い出された場所であり、琉璃の姿を見て、職員や子供たちが顔色を変える。

琉璃は名前は日本名だが、完全に容姿は母似であり、その点でも意地悪をされていたし、それを見て見ぬふりをしていた大人たちは青ざめている……。

「大丈夫?」

りょうの問いかけに、光華こうかをだっこした琉璃は、婚約者である亮の手を握る。

「大丈夫なの。頑張るのよ。琉璃」

「そうだね。頑張ろうね?」

手を繋いだ二人は、今日のメイン歌手である琉璃の義母の瑠璃るりこと、『貂蝉ちょうせん』の後ろを歩く。

子供たちの視線は、琉璃に注がれ、ふと一人が声を張り上げる。

「化け物!!ちび!!帰ってくんな!!」

すると、その意見に勢いづいたのか、

「そうだそうだ!!青い目、泣き虫!!」

「ほほぉ……あなた方は、私の姪をこんな風に苛めるところに、押し込めていたと言うわけですか……」

その声に子供たちが振り返ると、琉璃と同じ髪の色と同じ瞳の色の紳士が数人の護衛たちと、眉をひそめる。

「ロウディーン公主殿下!!いえ、それは……」

「何でしょう?今見ている、物語るものが証拠でしょう?琉璃」

手招きをされ、てててと伯父に駆け寄ると、ロウディーンは抱き上げ、額と両頬を口付ける。

「琉璃に幸せが舞い込むように…。私の国は春の国。花々が咲き誇る美しい国。琉璃は、ふるさとに帰るんだよ。私と」

「おじしゃまと?」

「そうだよ。琉璃は、光来こうらい家の子供であると同時に、伯父様の次の当主になりうる後継者の一人だからね。ちゃんと、勉強をしなければ……」

初耳の話に、亮は愕然とする。

「あ、あの!?公主殿下!!そんなこと……」

「昨日、話し合いをしたんだよ。琉璃は国で守る、育てることになった。光来家と国の発展に貢献する人材に、国には手付かずの鉱山がある、その採掘権の半分を琉璃に譲ることになった。そして……」

「音楽院を作ることになりましたよ。院長兼公国の専属の歌い手として、瑠璃どのを招きました。その一期生として、姫様と諸岡珠樹もろおかしゅじゅどの。それと最先端の技術を取り入れ、後の国にとって有益な存在の育成を。それは、諸岡瑾瑜もろおかきんゆどのにお任せしています」

ヴァーセルはニコニコと微笑む。
裏では胃痛に苦しむのだが、表向きと言うか、少々腹黒い主の補佐兼その不足を補う役目をしているらしい。

そして、ヨージュが、

「あぁ、亮……亮どの。紹介する。こい……彼が、このヴァーセルの弟のリフォーンだ。ハッキリ言ってまだ動けないアホだ。だが、兄と同じで生真面目さだけはある。一応、大丈夫だと思うが、姫の護衛として着くことになっている。一緒にいることが多くなる、仲良くしとけよ」
「は、はぁ!?一緒……と言うのは……!?」

長身過ぎる亮より、頭ひとつ低い凡庸な印象の青年が頭を下げる。

「初めまして、諸岡さま。リフォーンと申します」

20才の亮よりも、歳上のさま付けに、亮はハッキリ言って引く。

「すみません。歳上の貴方に……って、ちょっと待ってください?リフォーンどのと言うと、園芸、『緑の手』を持つと言う、現代の最も優秀な庭師と言われている方ではありませんか!!」
「いえ、趣味です」

真顔で青年は答え、兄のヴァーセルはため息をつく。

「申し訳ない。リフォーンは、本人の自覚あるなしに関わらず、何かをすると、新種の花を作ってしまう、訳のわからない体質をしているんだよ」
「はぁ!?そんなこと……あるんですか!?」
「はぁ……そうですねぇ……一回だけ、どうやったか覚えてませんが、一輪だけ青いバラを。いまだにどうやったのか思い出せなくて……残念です」

心底、その趣味が大好きらしい青年の声に、一種の天才がここにもいたのかとため息をつく。

「で、姫様の温室にも沢山のお花を、手入れさせていただきますね?、一応、護衛と、執事も兼務となっております」
「執事!!」
「はい。私の一族は元々、公主家の家令の家系です。長兄のウィンセルがその任に。次兄のヴァーセルは、執事には無理がありまして……」

亮が見ると、視線をそらし、

「申し訳ない。私は内政等、政務は得意だが……執事としてのちょっとした反応に対応できず……」
「と言うより、基本不器用なんですよ。ヴァーセルは。神経質のわりに」

ロウディーンのバッサリな一言に、グサッと傷つく。

「わ、私だって……何とか、お茶を!!姫様に!!」
「無理ですね。ついでにヴァーセル?可愛い琉璃に不味いものを食べさせないように!!その、分量をきっちり計って、作ったはずが、何で壊滅的な悪臭を放つものになるんです?」
「わ、私にも解らない!!から困ってるんだ!!何で!!リフォーンは器用なのに!!私は!!」

ヴァーセルは嘆く。

亮は思う。
このヴァーセルは、弟と逆に不器用、それと完璧主義者のため途中で考え始めて、その形容しがたいものが生み出されるのだと。

「で、琉璃の婚約者として、君には色々よろしくお願いするよ?一応、琉璃が寂しがるといけないから、短期の海外訪問等は、琉璃以外とは行かないように。長期的なものに行っても良いけれど……」

にやぁ……
ロウディーンの黒いオーラバリバリの微笑みに、亮は、

「ご、ご安心ください。私はある程度の論文を纏めるために、幾つかの研究所を回った後は、公国に滞在して、兄の補佐や瑠璃さまの助手として動きますので……よろしくお願いいたします」
「ありがたい。では、琉璃?伯父様はお話がある。琉璃は舞台の裏に亮どのといなさい。いいね?」
「あい、おじしゃま。だいしゅき!!」

琉璃は伯父にキスを返すと下ろしてもらい、とことこと亮の側に行き、手を繋ぐ。

「にーしゃまいこう?琉璃、一杯緊張なの」
「それは大変だ。じゃぁ、リフォーンどの。行きましょうか?」
「リフォーンで結構ですよ?」
「それはダメです。琉璃?このお兄さんは?」

琉璃は、首をかしげるが、すぐに、

「んっと……リフォーンおにいしゃん!!ヴァーセルおにいしゃんの」
「琉璃もそう言っています。ですので、どのも堅苦しいですし、さん付けでよろしくお願いします」
「解りました。では、姫様、亮さん。ご案内いたします」

進んでいく……。

その道が、吉と出るか凶と出るか……それは運命の神ですら解らない定め……。

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